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1,150km  作者: 虎司
7/15

疾走 六 神郷


男は俺の思い出の中、隅に置いてある

離れて(試)みると、見えてくるものがある。


ももクロの歌だと思っていた、

それは確かに、間違ってはいなかった。


強くなれ  泣かないで … 負けないで

大人になれ 泣かないで … 負けないで


あいつは泣かなかったのか?

それとも泣けなかったのか?


全然泣けなくて 苦しいのは誰ですか

全然今なら   泣いてもいいんだよ


あいつはこの曲を知っていた。

時々歌っていたのを思い出す。


あいつはさらりと俺に告げた。

「別れよう」「終わりにしよう」と


俺は一人でいる。

あいつの代わりを探そうとは思わない。

あいつは今もあいつだ。



男は今、泣くべきなのかと、

男は一人、夜のベンチから空を見上げている。

ここなら、とも。


近くに街の灯は見えていない。

山塊が壁となってすべてを遮っている

闇の中に唐突に現れたようなパーキングエリアにいる

俺の頭は睡魔を呼び込んではくれ(てい)ない。


グリーンのサインだけがこのPAを教えていた。

俺はこの神郷PAのサインに引っ張られるように入って来た。


車も人も少ない。

今はこんな感じなのか、


芝生の中にベンチを見つけ、俺はそこに寝転んだ。

空の星は意外に少ない。

おそらく曇りか、雲が邪魔してるのだろう。



バイクをまじまじと見て便所建屋に消えて行く男。

男が建屋から出てくるとさっき以上にまじまじと見ていた。

バイクを一周するように回るとナンバープレートも確認しているのか。

 「川崎か」と呟く、

声が聞こえて来た気がする。


人の話し声は紛らわせてくれる、


「HONDAですけどね、」

俺は起き上がり戻って行った。

「KAWASAKIだったら良かったですか?」

 「川崎ナンバーか珍しいってほどでもないけど、」

 「まさかこんなところで見るとはね。」

 「寝てたのか?」

「いや、なんか眠れ無くて」

 「まさか一気か?」(「一気に走ってきたのか?」)

「まさか、」

「まぁ、12時間以上ずっと高速だけど、」

俺は自傷気味笑いながら答える

「しかし、ガラガラですね(、中国道)。」

「今は、いつもこんな(感じなん)ですか?」

 「カーブもきついし、

  パーキングも使いづらいしな、」

 「やっぱりみんなあっちを使いたいだろう。」

 「今日は時間もタイトじゃないし、

  俺、結構こっちの方が気に入ってるんだ。

  (車)少ないから。」

さっきは見なかった。と思う。

和歌山ナンバーのトラックが近くに停まっていた。

その男は、川崎も横浜も行くと言う。

 「今日と言うか明日か、福岡だ。」

 「夕方までに降ろして、

  明日また積み込む、関東行きを。」 ←翌日

 「明日は福岡で1泊なんだよ。」

 「配車が下手くそで、」

 「小さい会社だから仕方がないけどな。」

憂鬱を混ぜ込みながら笑ってみけている。

こんな話しでも落ち着きを戻してくれた。

並ぶようにトレーラーのヘッドだけも停まっていた。

中からは、こちらを伺うような視線を感じる。

男は慌てたように、

「無理するなよ。」と、

言ってそちらへ駆け出した。

トレーラーヘッドのドアに手を掛け開いた。

男は助手席側から上っていく。

中の男の視線がチラリと、俺に飛んで来た。

これは歩道を歩いて覗いていた。

『なにわ 130 え ・・-・・』か。

地名(エリア)が違う、

会社は違いそうだな。

キャブの色が違う。

『ヘッドだけだと、可愛いな。』

と、俺は考えていた。


小さなパーキングはわずかに増えた二台の車で賑やかに見える。

ぼんやりと見ていた。


男が姿を変えて降りてきた。

真っ白なTシャツを着ている。

 「なぁ、お前はどこへ行くんだ?」

俺は口籠もりながらも答える。

「福岡、博多辺り。」

 「さっき、言ってくれればいいのに、よ。」

 「向こうで、」

 「良かったよ飲みにでも、行かないか?」

俺を見る視線を感じながら、

俺と男は名前と連絡先を交換した。

 「俺はもうしばらくここでゆっくりしていくが、」

そう言うと、

ふたたびトレーラーヘッドへ消えていった。


人と話すと(やす)らげてくれる、

そんな想いとは関係無く、


そういえば今のパンツはスエットだよな。

そういえばさっき揺れてたよな、あれ。

ザーメンの匂いがして、なかった、よな。

俺はいやらしい妄想をしている。

俺の手は俺の股間を直している。

「ああ、」と、

・・・。


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