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1,150km  作者: 虎司
5/15

疾走 四 遠州森町


男は俺に言った。

「俺のものになれよ。」

俺は頷いて、横になる。

眼は閉じていた。

「眼をあけろよ、」

「俺の事が嫌いじゃないなら。」


あれから始まったんだ。


男は「別れようか、」

「わかった。」と俺


これだけで終わるのか。


「カラダ、だけだったのかな。」

「本当に終わったのかな?」

「もう、」

「だめかな、」

「俺たちはもう終わりかな。」

俺は男((とも))に吐露していた。

その時外には、



俺はあいつが男と居る所を見てしまった。


『俺が捨てたんだ』

男は言い聞かせている。


男は新東名高速道路を走っていた。

CBR1100XXが走っていた。



あまり好きではなかった、

新しくない東名の方を選んで走っていて、

男がここを走る事は滅多になかった。

男が音楽を聴きながら走る事は、

今は無い、滅多にまず無くなっていた。


男は引っ張り出して物理メディアを見ていた。

あいつが(誕生日に)()れたCD。

男は奥にしまいこんでいたメモリプレーヤーを掻き回回す。

プラスチックでできたおもちゃの様なプレイヤーを引っ張り出す。

もう一つ見つけ出す。これも小さい。

この小さいプレイヤーの中身を入れ替える。

おそらくはその頃聞いていた音楽、

今、聞きたい、音楽に入れ替えた。

(うたうたいはかわらない)


男は男の背中を真似てベストを作った。

男が背中に背負った入れ墨を真似て。

(あお)いデニムのベストに刺し入れた。

男を真似てベストに背負い走っていた。



ハンドルに貼り付けたスマートフォンは

表示は消している。

男の耳にはイヤホンが、

有線で小さなプレイヤーに伸びている。

音は出ていない。

男は(息を切らせる様に)パーキングへと逃げ込んで行く。


バラバラと大型車が停まっていた。

エンジンがあちこちで大きく唸っていた。

バイクを停めて歩いて行く。


駐車場から離れていく、

昼には人も居るのか、

奥へ奥へと歩いて行く。

今、ここに人は居ない。

ここに(ひかり)は少なく遠くばかりが明るい。


イヤホンジャックに改めて繋いでいる。

小さなプレイヤーに改めて電源を入れる。

ボリューム『△』を押し続けている。

イヤホンは、音を漏らしながら、

男を音に包んでいく

『中島みゆき』が叫んでいる

『人生の素人』を叫んでいる。

大き過ぎる音が遮断して

(空に向けた顔は、星を捕まえず、)

男がひとり、そこにいる。

それは終わる。


男は駐車場へ、

『はじめまして』と叫んでいた。

バイクに跨がった。

『▽』を押している。



バイクは動き出し、

バイクが俺を運んで行く。

「まだまだ走る、」

「こいつはまだまだ走れる。」

俺は体を低くして夜を切り裂く。

再び、

『はじめまして』が流れてきた。

俺は音を薄くして走っている。

俺は男を探している。

あいつを振り切りながら走っている。


『あいつを』


俺は問(())いている。

『まだいけるか?』

『もっといくか?』


小さなプレイヤーの中には、

残した歌が2曲、新たに4曲の歌。

4曲はCDラストツアー「結果オーライ」から


静かに流れている。


 『どこへいくんだ』

 『まだまだいってやるよ』

黒い革のタグを揺らしながら言っている。


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