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招く家  作者: 雲井咲穂
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大量の機材の設置




 機材は各部屋にカメラを三台から四台。最も広いリビングを重点的に、六台を設置した。カメラと言っても、テレビカメラのようなデカブツではなく、手のひらにすっぽり入るサイズの一般録画用の電子機器だった。



 カメラは背面にできるだけ空間を開けないように配慮しながら高い位置からの撮影、足首くらい低い位置でバランスを整えながら設置した。それぞれのカメラの死角を別のカメラが補うというような形だ。



 さらに、部屋の上部にも小型のカメラを設置した。丸いボールのような形をしたそのカメラは、カーテンレールや扉の上付近に固定され、広い範囲を見渡せるようになっている。設置している最中、それを見た俺は思わず口を開いた。



「これは何ですか?」



 すると、日野さんが目を細め、口元に笑みを浮かべながらフフフと不敵に笑った。



「これはね、秘密兵器」



 和やかな雰囲気の中で、俺はそのカメラをまじまじと見つめた。

 驚いたのはこれだけにとどまらず、各部屋にもう一台ずつ部屋全体を俯瞰できる位置からサーモグラフィー付きのカメラと、暗視撮影用のカメラを一台もしくは二台。ついでに24時間録音ができるボイスレコーダーだけを二台ずつ設置する。



 設置前には必ずバッテリーを新しいものに交換し、起動チェックをする。次いで、部屋の中心に電子温度計を設置し、設定時から五度以上の急激な温度変化があった時のみ警告音が鳴るように設定した。電池式の置き型の温度計兼デジタル時計だ。表示は常時点灯モードに設定し、暗闇でも緑色の表示が映るようにした。その間近にもう一台カメラを設置し、同じような手順でこの家の全ての部屋を回る。




 洋子さんが奇妙な匂いを感じたという脱衣場前のホール、脱衣所、そしてユニットバスの扉を開けて風呂場の床の上に2台のカメラを設置した。一台は入口の角から全体が映るように。もう一台は洗い場の奥から脱衣所に向けてカメラを向け、ホールも映るように設定した。




 水道の蛇口も念のためすべて閉まっているかを確認し、もう一度全ての機材の場所、状態をチェックしながら各部屋を回る。回りながら、家の見取り図の中にカメラの設置場所と番号を記し、どの方向にカメラのレンズが向いているかを書き込んでいく。もちろん、部屋の温度、湿度の状態もだ。



 この時期は夜間になるとぐっと空気が冷え込むのだが、二階を除き一階部分は二重サッシになっており、厚手のカーテンを引いているためあまり寒いと感じることはないと洋子さんは言っていた。夜間になればそれなりに冷え込むだろうが、警告音がなるほどの温度変化はないだろうと仮説を立て、全ての窓、勝手口が閉じられ、鍵がかかっていることを確認する。



 開いている場所のドア、閉まっている場所のドアは記憶違いがないように、最終チェックの段階で手元のカメラで動画を撮影する。



 これで人為的な書き込みミスを、後から振り返る動画という記録で撮影化するというのが、心霊調査団「あやかし」のルールだった。



 その為機材は山のようになるし、設置が大変だということは撤収も大変だ。

 ここまで過剰な撮影状態にする必要があるのか、とそれとなく雄介先輩に尋ねてみると、先輩は「俺は本物の幽霊が視たいし、心霊現象を撮影したい。その為だったら何でもする」ということだった。



 一番の問題は先輩が食器棚の下敷きになった部屋の荷物をどのようにのけ、機材を設置するのか、だったが、日野さんの提案により壁やカーテンレール、作り付けの棚にカメラを設置することで解決した。この部屋の温度計は、雄介先輩を押しつぶした食器棚の上に置くことと決まった。



 全ての機材を設置し終わるころにはすっかり日も暮れ、家の鍵をかけて玄関のアプローチを降りる頃には、空は真っ暗だった。




 俺たち三人は日野さんが運転する黒いバンに載って、ようやく家を後にし、車で五分圏内のビジネスホテルに移動した。





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