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砂漠の女王③ 鮮血の女王

はるか昔、テラの大地に神が降り立ち、人類を支配した。

神は己に似せて作った使いを監視役に置き、テラの大地を天蓋の中に閉じ込めた。

己の利のため、繁栄のために。


それから幾許もの時が過ぎ、人類がその支配の痛みさえも感じなくなってしまった頃、1人の男が反旗を翻す。


これは、真の自由と解放を求める、神殺しの物語。・・・に、不幸にも巻き込まれた魔族たちの物語。

大人のドワーフはリンを拘束した。


どこからともなく取り出した手かせを彼女の腕にはめ、

手かせから繋がる鎖を握った。

ドワーフはリンを転生者と疑っているようだったが、

腕の魔晶石と何か関係があるのだろうか。




「ハルスケ、門を開けろ」


子供のドワーフが洞窟の壁面に触れると魔法陣が浮かび上がり、

巨大な岩の壁が動き出した。

馬車一台が余裕で通れるくらいの大きさの岩の扉が

ズルズルと音を立てて開き、

奥に岩を削ってできた広い通路が続いていた。


等間隔で精巧な飾り細工がされた照明が並び、

通路はなめらかな曲線を描きながら伸びている。




「では、急ごうか」


2人のドワーフが一行を先導する。


「おい、お前は先にゴブリンを医者の元へ連れていけ。それが終わったら女王様に話を通しておいてくれないか。謁見に伺うってな」


子供のドワーフは、コクっと頷くと

馬車で横になっているリストをひょいっと担いで、

通路をかけていった。


途中で立ち止まり壁に手をかざし呪文を唱えると、

また魔法陣が浮かび上がり抜け道が現れた。

子供のドワーフは現れた抜け道を通って医者の元へと向かったようだ。




ドワーフの技術力には眼を見張るものがある。

巧妙に隠されていた岩の扉、

魔法陣で駆動する隠し通路、

照明の飾り細工。


この短時間で、彼らの技術の高さが十分に理解できる。

彼らは、建築や金属加工技術に優れた亜人族で、

このティピカ砂漠の地下で暮らしている。


このタイミングで、彼らとの出会いを引き当てたのはまさに幸運であった。




通路をさらに進むと、1本の吊り橋と巨大な石門が現れた。

門には屈強な衛兵が左右に一人ずつついており、片手に大斧を備えている。


吊り橋の下は非常に深く、

奈落の底、という表現がピッタリなくらい恐怖を感じる出来栄えだ。


屈強な門番と強固な門、そして一本の吊り橋と奈落の底。

シンプルではあるが、外敵からの侵入を防ぐための最適解ともいえる作りだ。




先導する大人のドワーフが合図をすると、門番が扉を開く。

扉は大きさの割に開閉音が全く出ず、非常にスムーズだ。

表面には細かい装飾が施されており、金属の飾り細工まで見事である。

扉の中には、ドワーフの街が広がっていた。




「ようこそ、ドワーフの都、シャンデラへ」




まさか、あの砂砂漠の下にこんな地下空間があったとは、

誰が予想しただろう。

帝国の地下研究所も驚いたが、これはその比ではない。


開いた門をくぐった先には、

岩盤をすり鉢状にくり抜いたような巨大な空間が広がっており、

眼下には街が、地上にあるはずの街そのものがそこにすっぽり収まっている。


街の中央には噴水と公園のようなものがあり、

それを中心に市場が広がっている。

さらに市場を取り囲むように居住区や工業区が配置されていた。

すり鉢の岩壁にはいくつも横穴が空いており、

さらに奥にも空間が続いているようだ。




街へ降りると、ここが地下であることを忘れてしまいそうだ。

市場の賑わいや子供たちの笑い声、行きかう人々。

何一つ地上と変わらない。

天井には、巨大な太陽石が煌々と輝いている。

一行は中央通りを抜けて、女王の住まう宮殿へと向かった。




巨大な柱で支えられた横穴を進むと、これまた大げさな門が出てきた。

岩の門に刻まれた彫刻と金属装飾は絢爛で、素晴らしい見栄えである。


通路の装飾と良い、ドワーフ族は派手好きなんだろうか。


石柱で囲まれた通路を抜けて門の前まで着くと、

屈強な衛兵が左右に2人ずつ立って、外ににらみを利かせていた。




大人のドワーフが口を開く。


「フロレンシアの石匠、テナンゴ。女王との謁見に馳せ参じた」


衛兵が手に持った巨大な斧を二回地面に打ち付けると同時に、

ど派手な石門が重々しい音を響かせて開く。




石門の中には麦畑1枚分の広さの空間が広がっており、

頭上には煌びやかなシャンデリア、

天井を支える石柱は花々で彩られており、

中央には赤い絨毯が敷かれていた。


まさしく”王の間”に相応しい格式がそこにあった。

赤い絨毯の先には王の玉座が鎮座しており、

ドワーフの女王が我々の到着を待っていた。


ここからでははっきりとよく見えないが、

玉座に対して女王の背丈が妙に小さい気がする。

ジンは眼を擦り自分を疑ってみるが、

ドワーフは元より小柄な亜人だから、無理もない。

気を取り直して前に進む。


近づくにつれて、フレンチの小さなしっぽが妙に揺れているように見える。


そして、王の御前へ。

やはり小さい。

小さいぞ。

小さい女王だ。


人で言う12歳程度の背丈でフリフリの深紅ドレスを身にまとい、

髪は金髪で左右にドリルのようなロールを下げている。

頭には可愛らしいティアラを載せているが、怖い顔をしながら頬杖をついている。

足は地面に着いていないので、玉座から足がぶらぶらしていた。




ジン、フレンチ、リン、そしてドワーフのテナンゴの4人は

女王の前で片膝をつき、頭を下げる。

フレンチがしっぽをブンブン振っている。




「表をあげい。我こそがドワーフの女王にして鮮血の闘神、ヴィーネ・ヴァン・アストレアである」


はっきりと通って透明感のあるまっすぐな声だった。


「主らが八咫から来た魔族か。無礼ですまぬが、先に問題を片付けたい。おい、鬼の女、腕を見せてみよ」


リンは手かせをはめられたまま、腕を差し出し、寄生する魔晶石を見せる。


「もっとちこう寄れ」


女王はリンの手を取ってマジマジと魔晶石を観察する。


「鬼の女よ、事の経緯を説明しろ」


リンは、帝国に誘拐されたことや、地下研究施設で人体実験をされたこと、

その後にマナ中毒に似た体調の異変が起きていることを話した。

研究所の話は、ジンが代わりに詳細を伝えた。

そして、リンの治療のため、

帝国の悪事を伝えて救援を求めるため、

オルデンへ向かっていることも、ありのまま、事実を話した。




「ふむ、嘘偽りは無いようじゃな。おい、女の手かせを外してやれ」


乾いた金属音を立てて手かせが外れた。

ヴィーネ女王はリンの腕に痛々しく存在感を放つ魔晶石をそっと撫でた。


「リンと申したか。大変じゃったのう。このシャンデラは安全じゃ。しばし旅の疲れを癒すとよい。体調はどうじゃ?」

「薬のおかげで、不調はほとんどございません。お気遣い、ありがとうございます」

「それは良かった。とはいえ、事態は思っている以上に深刻じゃな。ジンよ、研究室内の検体は、何人いた?」

「円柱水槽に入っていた魔族は、ざっと4,50人はいたと思います。その他にも、廃棄エリアにも複数遺体があったはずです」

「うむ・・・時は一刻を争うな。おい兵長、すぐにエルフへ使いをやれ。私はオルデンへ向かう。カルバ、我が不在の間の指揮は頼んだぞ」

「一体、何の話をされているのですか?話が見えませんが・・・」


ジンは女王の話しぶりに違和感を感じて、つい口を挟む。


「魔晶石の人体移植は、単なる人体実験なんかじゃない。これは転生者を量産するための実験じゃ。シドのやつ、アルヴァニアのエルフに戦争を吹っ掛けるつもりじゃ」

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