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海百合中戦徒会活動記録  作者: 如月ケイ
第三章 2022船深侵攻編
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22/22

第20話 鎧のカラス(3)

「──っ!」


 咄嗟に目を閉じた。来るだろう痛みに身構えた。しかし、いくら経っても痛みが来ない。


「ん、斬ったつもりだったけど……弾いた。思ったよりも硬いな、あの羽根」

 

 声を聞き、目を開ける。その視界に映ったのは私を守るように立つ如月君の背中だった。


「如月……君」

「大丈夫、あそこまで削ってくれてありがとう。あとは任せて」


 side:利音


 新島さんに返事をし、アーマークロウから気が逸れた一瞬だった。


「危なっ……」


 高速で飛んできた羽根を刀で弾く。

 ただの羽根なら真っ二つにできるが、あのカラスの羽根となると話は別だ。斬ることが出来ずに金属音のような音を立てながら弾かれてしまう。羽根自体はとても軽いため弾いた衝撃なんかが腕に伝わってくる事は無い。だが、その速度や鋭さが厄介なのは変わらない。


 本当に危ない、"遠距離攻撃を反射的に対応する技術"を使ってなかったら今頃串刺しだな。

 ”遠距離攻撃を反射的に対応する技術”裕生先輩との訓練で身に着けた技術の1つだ。身につけたと言っても《技術》の能力ありきだから、体が本当にその技術を覚えたわけではない。使うには能力を発動し続けなきゃならないという条件がある。正直、これが本当にしんどい。この技術はかなりの集中力が必要だ。今の俺だと3分が限界、それも訓練時の安定した状態でだ。戦闘中ともなれば2分……いや、1分程度かもしれない。


「如月君……あの羽根が見えるの?」

「いや、見えない。でも能力で対応してるから大丈夫」


 新島さんがいる手前、あまり格好悪いところは見せたくない。だから余裕がある風に言ったが、本当に余裕があるわけではない。むしろかなりギリギリだ。こうしている内にも発動時間のタイムリミットは迫ってきている。

 だからこそ、すぐにでも行動を起こさないといけない。

 

「深手のカラスを倒すのに1分? はっ、充分!」


 アーマークロウに対して真っすぐ突っ込む。遠距離持ちに対して真っすぐ突っ込むのは正直愚策だ。もっといろんなステップやフェイントなどを混ぜながら近づくのが効果的だ。だが、今はそんなに慎重に近づく場合ではない。羽根の攻撃なら能力で対応できる。それなら、こうしてただ突っ込むのが簡単であり、短時間で距離を詰めれる効率的な方法だ。ただ、もちろんのことだがアーマークロウも深手を負って動けないとは言え、反撃をしてこないわけじゃない。既にいくつかの羽根が俺に向かって飛んできている。

 怪我のおかげか狙いが甘く、ほとんどは俺に当たる軌道で飛んでこない。だが、少しは俺に向かって飛んでくる。今のところ弾く必要もなく避けられている。しかし、問題なのは自意識的に避けられない事だ。能力で反射的に避けるのは、ある意味、能力に体を動かされていると言っても間違いじゃない。これのせいで俺自身もどのように羽根を避けるのかが予想できない。避け方によってはかなりスピードをロスする。50m走で全力疾走と静止をランダムなタイミングでさせられているようなものだ。たった数m進んだだけでもかなり体力を消耗する。

 もうちょっと考えてから行動した方がよかったかもしれない。だが、そんな後悔をするにも、もう遅い。体力をかなり消耗したがアーマークロウとの距離はもう5mも無い。次の踏み込みで刀の間合いに入る。刀を振ることに意識を少しずつ移す。


「はっ!」

 

 刀の間合いギリギリ。最初に狙うのは、新島さんが撃った左翼の付け根。両手で右下に構えた刀をそこに向かって振り上げる。ザシュッと肉が斬れる音を立てながらアーマークロウの胴と左翼が断たれる。そして、振り上げた刀を構え直し、アーマークロウの嘴に突き刺した。突き刺してから一瞬は体が動いていたがすぐにその動きは止まった。

 刀はアーマークロウの頭を貫通し、飛び出た切っ先からは血が付着していた。いつものように刀に付いた血を振り払う。それと同時に刀からアーマークロウの胴も抜けて転がって行った。少しだけ横に目を向けると先程斬った左翼が、まだ神経が残っているのか動いていたが、その動きもすぐにパタリと止まった。

 

『ルームD、利音、琴葉ペア終了。すぐに退出して、怪我してたら救急治療委員会の人に治してもらってね』


 放送機器越しに裕生先輩の声がシミュレーションルーム内に響き渡る。その声を聞いた瞬間、俺は地面に勢いよく尻餅をついた。

 集中力が必要な能力の長時間使用に、今まで味わったことの無いような体力消費、限界だというのは気づいていた。自分の体を見ると、制服は汗や返り血でベチョベチョ、学ランの下に着ている白のワイシャツは、ほとんどがアーマークロウとその前に倒したオークの血で真っ赤に染まっていた。


「これは後でクリーニング申請しないとな」

「お疲れ、如月君」


 地面に横たわる俺に新島さんが近づいて声を掛けてきた。新島さんの体にはアーマークロウに付けられたであろう切り傷が所々あり、その個所から肌が露出している為、少し目のやり場に困った。

 

「新島さんこそお疲れ、ところどころ切り傷があるけど大丈夫?」

「うん、もうほとんど慣れてきたし、すぐに保健室行くから大丈夫。それより如月君の方が大丈夫なの?」

「正直、ギリギリこの部屋から出れるかってくらいしか体力残ってない」

「確かにあんな凄い動きしてたら体力も消耗するよね。肩貸そうか?」

「ありがたいけど遠慮しておく。新島さんの体にこれ以上負担掛けたくないしね」

「……別に、そんなことないのに(小声)」


 最後の力を振り絞って立ち上がる。そして、少しよろけながらだが何とかシミュレーションルームからは退出できた。

 部屋から出ると、何となく予想はしていたがすぐに翔と千里が俺達の元に駆け寄ってきた。


「おいおい、最後凄かったな! 肩貸すぜ!」

「琴葉ちゃんお疲れー! ほら、すぐに保健室行こうね! 私も着いて行ってあげるから」


 そのまま、新島さんは千里に連れられて保健室に、俺は保健室に行くほど怪我してなかった為、翔に肩を借りながら近くの休める場所まで向かった。

 途中、他のシミュレーションルームの状況を確認したが、どうやら俺達は最速で終わらせたらしく、自分たちが出てきた部屋以外はまだ使用中となっていた。


「あ~、やっと一息つける。マジで疲れた」


 近くにあったベンチに腰を掛けて呟く。座った瞬間にドッと緊張感が抜けた。

 思考が上手く回らないほどに脳は休憩モードに入っている。ぼんやりとした意識の中で体を動かそうとしても動かない。筋肉の疲労で動かないというよりは、本能が動きたくないと言っているのがよくわかる。

 そんな普段ではあり得ないくらい脳が蕩けた俺の隣に翔も腰を掛ける。そして、ニヤついた顔で俺の顔を覗き込んでいた。


「なんだよ、あんま見るなよ。気持ち悪いぞ」

「いや~、利音がこんなに疲れを表情に出してるの珍しいなと思って」

「確かにいつもより疲れてるけど、別に珍しくないだろ」

「いや? お前ってあんま感情を顔に出さないからな。マラソンとかシャトルランでも、疲れたとは言っても顔はそんなに疲れてなさそうだったし」


 俺としては全然疲れていたし、十分顔に出ているつもりだったが、そんなことはなかったらしい。今思えば、笑っているつもりで撮った写真とかも、なんだか無表情だったかもしれない。まぁ、顔には出てなくとも心の中は感情豊かと言うのは、アニメやゲームでは結構あるあるなキャラ設定だ。まさかリアルで、その上自分がそうなるとは思っていなかったが、そう言うのも中々面白いかもしれない。少しギャグキャラっぽいが、無表情なキャラは冷静でクールな印象も強いし、少し憧れていたこともある。なら今のままでもいいかもしれない。

 それにしても、翔とは結構付き合い長いが初めて自分の印象なんて聞いた。まぁ自分の印象なんて自分から聞くものでもないし当然といえば当然かもしれない。


「じゃあ、感情を表に出さないクールキャラってことで行こう」

「なにそれかっこいい」

「自分で言ったくせに、今になって恥ずかしくなってきたわ」

「とか言って、顔は全然恥ずかしそうにしてねぇぞ。まぁでも少し頬が赤くなったかな」

「うっせ」

 

 そんな会話をしている間に琴葉を保健室に連れて行った千里が戻ってきた。案の定、この状況を軽く問い詰められたが、いつも通り翔が千里にデレデレし始めると俺の事などすぐに眼中に無いようだった。流石は海百合小学校一のバカップル。俺はよくこの2人とつるんでいるおかげで耐えれているが、あまり関わりの無い人だとこのイチャイチャを見るだけで不快に感じてしまうかもしれない。

 翔と千里の絡みを呆然と眺めているとすぐに2人が放送で呼ばれ、シミュレーションルームに入っていった。俺は2人が入っていったシミュレーションルームが映されたモニターに目を向ける。そこには2人が入ったシミュレーションルームの内部映像が流れていた。

 そういえば、2人が魔物と戦うのは初めて見る。この前の事件の時も町の反対側で戦っていたらしく、話でしか聞いていない。特に、翔は活躍したと先輩から聞いたのでかなり気になる所。


「さて、どんな風に戦うのかな」

どうも~如月ケイです。

連載の方、更新が止まってしまい申し訳ありませんでした!

理由としては大学生活が忙しかったのとコスプレ撮影に熱が入っていたからですね。

先に言っておきますが連載を途中で辞めるつもりはありません。少なくともあと8章分のストーリーが頭の中にあるので、それは書き切ります。

超スローペースですが更新は続けるのでよろしくお願いします。

あと、夏コミ受かりました! 二日目日曜日の西1ホール”に”03bですのでよろしくお願いします。

因みに新刊の原稿はまだ1ミリも進んでいません。

ではでは~。次回更新でお会いしましょう。

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