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海百合中戦徒会活動記録  作者: 如月ケイ
第三章 2022船深侵攻編
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第19話 鎧のカラス(2)

 刀を抜いて魔物の方へと走り始めた利音。それに対して最初に反応したのはアーマークロウだった。空を飛んでいるアーマークロウが素早く突進してくる。


(ギリギリで躱すべきか)


 迫ってくるアーマークロウを見ながら利音がそう考えていると。


 ──ドンッ‼︎


 火薬の炸裂音が響き渡り1発の銃弾がアーマークロウの体に撃ち込まれた。しかし、アーマークロウの体は直撃したその弾丸を弾き飛ばし全く傷ついていなかった。だが、一撃でも攻撃した影響か、アーマークロウのヘイトは利音から剥がれたようで突進を止めて琴葉の方をギロリと睨みつけた。


「そう、君の敵は私。如月君に攻撃させる暇は与えないよ」


 狙撃銃のコッキングを引き、空薬莢を排莢しながらマガジンの次弾を薬室へと装填する。視界の外に跳んでいった空薬莢が軽快な金属音を立てて地面に転がっていくのを聞きながら琴葉は自分の方へと向かってくるアーマークロウに狙いを定める。


(正面は駄目、皮膚が硬すぎる。普通の鎧とかと同じなら関節部分を狙うしかないかな。でも鳥の関節部分ってどこだろう……脇?)

「いいや、まずは取り敢えず」


 琴葉が冷静に2発目の弾丸を撃ち込む。そして今度は羽の部分に弾丸が命中した。しかし、先程と同じように弾丸は弾かれてしまう。そして今度は止まることなく琴葉の方へと突っ込んでくる。


(羽も駄目、やっぱり脇とか動かす部分を狙うしかなさそうだね。って流石に距離が近くなってきた)


 琴葉は構えていた狙撃銃を腰の高さで持ちながら突進してくるアーマークロウを待ち構える。そしてアーマークロウとの距離がギリギリまで近づいたその瞬間。


「ほいっ」


 まるで闘牛士のように体を翻しながらアーマークロウの突進を躱す。そして体勢を整えながら即座に射撃体勢を整え、通り過ぎていったアーマークロウの脚の付け根に照準を合わせ──発砲。


「次は……脚」


 3発目の弾丸は見事にアーマークロウの脚の付け根に命中し、今度は弾かれることなく弾丸は肉の隙間に食い込んでいった。命中した箇所からは血が流れ出し地面に血痕が残る。だがその状況でもまだ地面に落ちることはなくアーマークロウは地面と一定の高さを保ちながらホバリングしている。


(やっとまともにダメージが入った。でもちょっとふらついてる程度でまだまだ致命傷じゃないみたい。大丈夫、私でも倒せるはず)


 刹那、琴葉の頬に痛みが走る。


「えっ──」


 咄嗟に頬に手を当てる。触れた瞬間痺れるような痛みが走って手を離す。そして恐る恐る手のひらを見るとそこには少しだけ赤い血が付着していた。


(攻撃……された? でもどうやって……動作もほとんどなかったし何も見えなかったけど……おそらく、“羽”か)


 琴葉に与えられた傷は切り傷のようなものだった。そして目の前には刃のように鋭く金属のように硬い翼を持つ鳥が1羽、状況的にはアーマークロウがその羽を飛ばしてきて琴葉を攻撃してきた可能性が一番高い。


「問題はその攻撃が見えないことね」

(羽を飛ばしてくるのに前動作は何もなかったし飛んでくる羽本体を見れたわけでもない。ノーモーションの超高速遠距離攻撃、Bランクなのも納得の初見殺しね)


 世界能力開発機構(WADO)が定めたアーマークロウの危険度ランクはB。これはゴブリンやオークなどのCに比べて高いランクだ。ランクの概要によればある程度戦闘経験を持つ人か中程度の能力者なら対処可能と言うものだった。

 

(だけど、今の私はどちらも満たしていない)


 ある程度の戦闘経験、これは言わずもがな。まだ入学して戦徒会に入ってから2ヶ月も経っていないような素人がそのある程度を満たしているとは思えない。

 中程度の能力者、これもそうだ。最初に受けた診断の判定では琴葉の能力は中程度以上の力を持つらしい。しかし、能力に慣れていない琴葉にはそこまで能力を使いこなせる程の実力は無い。

 少しだけ視界の端に映る利音へ目を向ける。

 

(すごい、2対1でもちゃんと戦えてる。あっちは大丈夫そう。やっぱり問題は……私。血が止まってるってことはさっきの傷はもう塞がったみたい。致命傷は与えられない……なら)


 もう一度、狙撃銃のグリップを強く握り……構える。左手で銃身をしっかりと支えて銃口を敵に向ける。コッキングのレバーを引いて弾丸を装填し引き金に指を掛けた。


「最低限、如月君がこっちに来れるまで時間を稼ぐ」


 引き金を引いて弾丸が放たれる。弾丸はまたもアーマークロウの体に命中し弾かれた。

 危険度Bランク、アーマークロウ。この魔物はBランクの中でも上位クラスに位置する魔物だ。その厄介さは言うまでもない。鉄騎鴉と言われるほどの驚異的な皮膚の硬さ、そして超高速で放たれる羽根の狙撃は単純に厄介なのである。さらに。


「突進してこなくなった……」


 目で追えないほど高速の羽根が琴葉を襲う。動き続けることで琴葉はそれを回避できていたが射撃態勢を取れない琴葉は攻撃の機会を失っていた。

 そう、アーマークロウの最も厄介な点は鴉ゆえの知性の高さである。過酷な環境である魔界で生き残るため、戦闘に特化したアーマークロウの知性はたかが魔物と馬鹿にできるものではない。

 

(羽根が切れるま──危なっ、避け続け──またっ、もうっ考える余裕が無い!)


 琴葉は羽根を避けながらアーマークロウを観察する。しかしアーマークロウもただ琴葉を追いかけて羽根を撃つだけではない。絶え間の無い羽根の狙撃に加え、時折偏差的な狙撃まで混ぜてくる。敵の観察を続けようにも琴葉の頭の中は避けることだけで手一杯だった。

 ただ走るだけでは避けられなくなった琴葉は偏差狙撃を警戒してわざと乱れたテンポのステップで回避する。だが、体にまともに当たるのは回避できているが少しづつ制服にはが付き、手や頬など露出した部分にはギリギリで避けた際の擦り傷が目立ち始めていた。


(うぅ、体の所々が痛い。疲れも出始めてきた。いつまで続くんだろう。せめて少しでも隙ができれば狙撃できるのに……いや待って、もしかしたら……いけるかもしれない)


 琴葉はバックステップで偏差で撃ち込まれた羽を回避する。そして、体勢を整える事無く即座に銃口をアーマークロウの方へ向け、発砲。当然、琴葉の体は反動で大きく体勢を崩した上、銃弾もアーマークロウに命中しなかったが、琴葉の目は受け身を取りつつもその弾丸を捕らえ続けていた。


(……そこ)


 その瞬間、命中せずに外れた弾丸の軌道が()()()()

 そして、軌道を変えた弾丸は弧を描くようにアーマークロウの横へと回り込み、死角から翼の付け根へと命中した。

 アーマークロウの言語化できない悲鳴が響く。弾丸が命中した箇所からは血が溢れ出ていた。琴葉の予想通り可動部分である翼の付け根は他の箇所よりも柔らかくアーマークロウにとって弱点と言える部分だったようだ。片翼が動かしにくくなったアーマークロウはバランスを崩しながらもなんとか飛行を続けているという様子、これでは最初に見せてきた突進ももうできないだろう。


「本当に上手くいった。実戦で能力を使うのは初めてだけど上手くいってよかった。《導指(どうさ)》……少し理解できてきたかも」


 琴葉はすぐに体勢を立て直しライフルを構える。火薬の炸裂音と共に放たれた一発の弾丸は本来の軌道ならアーマークロウを大きく逸れている。しかしそれは琴葉にとってさほど問題ではない。もう一度、弾丸の軌道を曲げる……いや、()()。先程のような大きな弧を描く軌道ではないが導かれた弾丸は琴葉の思い描いた道筋を通り、先程と同じ弱点を追撃する。弱点に再度銃弾を受けたアーマークロウはついに体を地に付けた。


(行ける!)


 すぐに狙撃体勢を整えて地に伏せるアーマークロウに狙いを定める。今度は曲げるつもりのない能力無しの通常弾、照準をアーマークロウの弱点にしっかりと合わせて放った弾丸は一直線にアーマークロウへと迫った。しかし、残った力で放たれた羽にその弾丸は弾かれてしまった。


(まだ、動けるの。ならもう一っぱ──)


 気づいた時には遅かった。

 羽が琴葉の目の前まで迫る。琴葉の弾丸を弾いた際にアーマークロウはもう一枚の羽根を前の羽根に隠れるように放っていたのだ。そして、琴葉がそれに気づいた時にはすでに羽は琴葉の眼前へと迫っていた。


「──っ!」

どうも―如月ケイです。

 投稿遅れて申し訳ありませんでしたー! まぁ投稿日を決めているわけではないのですがね。

 とまぁ、そんなことは置いておいて、前回投稿から今回までの間で色々なことがありました。サークルの相方がなろうデビューしたり、私がコスプレ撮影にドハマりしたり、短編小説をいくつも書かなければいけなくなったりと、結構忙しくなりました。時間を無駄にはしたくないんですがスマホから手が離せないのはもはや依存症レベルかもしれません。

 というわけで今回も読んでくれてありがとうございました。では、また次回もよろしくお願いします。

 あっ、夏コミ申し込みました。

 ではでは~。

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