第2話 海百合の工作員
入学式から数日が経ち、生徒達が新たな学校生活に少しずつ慣れてくる頃、利音は教室で六時間目の授業を受けていた。
利音(放課後に行われる訓練にも慣れてきたな。最初は訓練と聞いて辛いものを考えていたけど、訓練は2時間程度だしまだ余裕だな)
キーンコーンカーンコーン
先生「では、今日の授業はここまでです。このあとは部活や委員会などがある人もいますが頑張ってくださいね」
そう言って先生は教室から立ち去っていく。
教室から先生がいなくなるとクラスメイト達は各々の友達と話したり、自習に励む者も居た。
利音も前の席に座っている哉太と話しながら帰りのホームルームを待っていると、1人の生徒が利音に近づいてきた。
???「なあ、利音、哉太」
利音「ん、どうした、優磨」
話しかけてきた男は利音のクラスメイトの河原木優磨だった。
優磨「2人は戦徒会に入ったけど部活は何に入るんだ?」
この海百合中学校では生徒は必ず部活か委員会などの生徒組織に所属しなければならない。特別な理由で所属できない人もいるがそれはあくまで特例である。
利音「ん〜部活か〜考えてなかったな」
哉太「俺は小学校から続けてるサッカー部に入ろうと思ってる」
優磨「サッカー部か…それもいいな」
哉太「確か優磨も戦徒会志望だったよな」
優磨「まあ…不合格だったけどね」
優磨が少し落ち込んだ顔で話すと隣で考え込んでいた哉太が思い出したように言う。
哉太「それなら…なんだったかな、戦徒会と似たような活動の部活があるって聞いたような」
利音「似たような部活?」
哉太「前に先輩と話した時に聞いた気がするんだけど、ごめん思い出せねえわ」
優磨「そんなのがあるならぜひ入りたいね」
利音(そんな部活があるのか)
優磨「それで利音はなんの部活に入るんだ?」
利音「う〜ん、なるべく楽な部活に入りたいかな」
優磨「なら一緒に科学技術部入らないか?」
利音「科学技術部?」
哉太「あ〜、なんか自分の好きなことを実験できるって先輩が言ってたような」
優磨「今日体験入部あるらしいけど行くか?」
利音「じゃあ行ってみようかな」
放課後……第一理科室前
優磨「ここか」
理科室前まで来た利音と優磨は閉まった扉の前で呆然としていた。
利音「扉、開いてないな」
扉は鍵が閉まっており扉についた窓を見ても中の電気は消えていて暗く中に誰もいないことが2人にはすぐ理解できた。
優磨「う〜ん、確か今日が体験入部の日だったはずなんだけどな」
利音「ホームルーム終わってすぐ来たからじゃないか?」
2人が廊下に立っていると、廊下の奥からコツコツと足音をたてて1人の生徒が歩いて来た。
???「ん?君たちそこで何をしてるんだ?」
利音「えっ、会長?」
啓「やあ、如月君に君は確か」
優磨「河原木優磨です」
啓「そうだ思い出した河原木君だ」
利音「それでなんで八城会長がここに?」
啓「そりゃあ俺が科学技術部副部長だからに決まってるだろ」
利音「そうだったんですか」
啓「んで、2人はもしかして体験入部で来てくれたのかな?」
優磨「そうです、なんか楽に活動できるって聞いたので!」
利音「俺は優磨に誘われて」
啓「なるほどね、まあとりあえず中に入るか」
啓は理科室の鍵を開けて2人を中に歓迎してくれた。そして十数分後には他の先輩や体験入部者が来て理科室は少しずつ賑わってきた。
啓「さて、そろそろ時間だから各々実験を始めてね〜、それと今日は体験入部の1年が来てるから質問とかされたらちゃんと答えてやれよー」
号令が終わり2,3年生の生徒達は各々の実験を始めた。そして啓は端の席に座っていた利音や優磨を含む体験入部者達に近づき部活の説明を始めた。
啓「それじゃあ体験入部の人には今日はこの部活について紹介する。まずは俺たち、理科室で薬品などを使いながら自由に研究をする化学班だ」
利音(思ったよりも人数が多いな)
理科室では20人ほどの生徒が各々の机で実験を行なっており液体が沸騰する音や薬品の匂いがした。
啓「化学班は個人でもグループでもいいので一つのテーマについて学校に承認される限り自由に研究を行う班だ。これから15分ほど邪魔にならないように見学してくれ。その後に次の班の説明に行くからな」
啓が説明を終え顧問の先生と話そうとすると
利音「八城会長」
利音は啓に話しかけた。
啓「ここじゃ会長は辞めてほしいな、先輩ならいいよ。それでどうした?」
利音「なら八城先輩、戦徒会と似たような活動をする部活があるって聞いたんですが」
啓「う〜んそれをどこで聞いたのかは聞かないけどそれを知ってどうするつもりだい?君が入るわけじゃないんだろ?」
利音「それはもちろんですよ。ただ優磨が」
優磨「八城先輩!」
突然優磨が利音の隣で少し大きな声で啓の名前を呼んだ。
啓「どうした?」
優磨「なんで俺は不合格だったんですか…」
啓「う〜ん、少し場所が悪いな。少しついて来てくれ」
そうして啓と優磨は廊下に出て啓は話し始めた。
啓「ここならいいだろう。さっそく本題に移らせてもらうが、単刀直入に君は潜在能力テストでの総合順位は13位だった。そして今回の募集人数は20人だったんだが」
優磨「なら募集の人数に入ってるじゃないですか!なんで!」
啓「話は最後まで聞け、君の才能、能力は単独で強さを発揮しなければならない戦徒会には向いていない。君のその能力はチームで戦うことによって開花するんだ」
優磨「つまり結局俺には才能が無かったってことですか…」
啓「いや、そういうわけじゃない」
優磨「えっ?」
啓「君の能力はチーム戦で開花すると言っただろ、だから君にはSLATに入ってもらいたいと思っている」
優磨「SLAT?」
啓「See Lily Agent Team、戦徒会とは違い三、四人のチームを組み市民と街を守るのため戦う戦徒会とは違い多目的な活動で戦徒会や学校を支援する部活だ」
優磨「なるほど。でもそんな部活、部活動欄にはありませんでしたよ」
啓「公にしたらちょっとまずい部活だからな、一応国に許可はとってるけど」
優磨「でもそこで自分の才能が活かせるなら俺は入りたいです!」
啓「OK、なら俺から部長に伝えておく。それで君はSLATに入部するわけで表向きに入部する部活も決めなきゃいけないんだが」
優磨「なら科学技術部に入りたいです」
啓「それなら入部届には科学技術部と書いておいてくれ」
優磨「はい!」
話がまとまり2人は理科室へと戻った。
啓「それでは次の場所に案内するからついて来てくれ」
そうして案内されたのは地下の技術室だった。技術室の中に入った利音と優磨は独特な木の匂いを感じながら中の様子を見る。技術室の中はそこら中に機械が置いてあり少し狭いと感じる部屋だった。
啓「ここは科学技術部の技術班だ。技術班は主に物を作る班で学校から依頼されたり個人で作りたいものなどを学校が許可する限り自由に作れる班だ。それじゃあまあ、また少しだけここを見学したら後は自由にしてくれ、帰ってもいいし化学班の見学に戻ってもいいからな」
そう言い残し啓は技術室から出て行った。
それからは一時間ほど科学技術部を見学して利音達はそれぞれの家に帰宅していった。
翌日…
優磨は放送で多目的室に呼び出されていた。
優磨「失礼します!」
優磨は多目的室のドアを開けて中に入る。部屋の中には2人の生徒が立っていた。
???「やあ。君が河原木優磨君だね。入部届は昨日啓からいただいているよ」
???「へ〜、こいつが入部希望者か。部活名簿にもないのによくこの部活を知ることができたな」
優磨「入部届?ああ!まさか」
???「あぁ…自己紹介を忘れていたね。僕は時枝優斗。SLATの部長をしている」
???「俺は松井慶伍でこいつと同じ部隊だ」
優磨「SLAT…じゃあもしかして」
優斗「うん。君の入部届はしっかりと僕が受理したよ。啓の推薦だから実力もあるだろうしね」
優磨が嬉しそうにしていると
優斗「とりあえず君は今日からSLAT1年α小隊に任命する。小隊といってもまだ君しかいないんだけどね」
慶伍「というか君の入部が早すぎるんだよな。本当ならもっとこっちで事前に調査してから入部希望者を探す予定だったのに、どっからこの部活の情報が漏れたんだ?」
慶伍が怒りをあらわにしながら地団駄を踏むと優磨も苦笑いする。
優斗「まあそれは気にしないでおいて、とりあえず君はSLATに入ったばかりでまだチームメイトも居ないわけだしまずは俺たち先輩の部隊に加わってこの部活のことを知ってもらう」
優磨「わかりました。これから頑張ります!」
慶伍「おう!頑張れよ!応援してるからな」
こうして優磨はSLATに入部した。彼がSLATの指揮官となるのはまだ先の話である。




