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海百合中戦徒会活動記録  作者: 如月ケイ
第二章 海百合町襲撃事件編
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第10話 虚空騎士

利音「えっ?」


 呆気に取られた声。突然のことに思考が停止する。耳に装着した通信機からは裕生先輩の声が聞こえる。それは聞くだけでわかるほど焦りに満ちた激しい声だった。

 俺の目の前、1mは離れていると思うけどすぐ近く、いきなり紫の電流のようなものが現れた。焦っている俺にはすぐに理解できないが、側から見たら何かエネルギーがそこに集まっているようにも見える。


 えっ? えっ? どういうこと? 何が起きた? 視界がゆっくりと進んでる? 走馬灯? えっ? 俺死ぬの? こんなところで? こんなあっさりと? 嫌だ。まだ死にたくn。


知弥「っ!!」


 ゴロン!


 耳に雷鳴のような轟音が鳴り響く……。それと同時に知弥先輩に姿が視界の中で動く。それは走馬灯のように思考が加速された今の状況の中でもいつも通り……いや、いつも以上の速さで動いていた。


利音「わっ!?」


 そして、知弥先輩は俺を担いでその場を一瞬で離れた。離れたと言っても十数mだが、そこで知弥先輩は動きを止め俺を地面に下ろした。

 思考の加速が終わった。周りの速度が速くなり体がしっかりと動く。自分がまだしっかり生きていることを確認すると、先程まで利音がいた位置で爆発が起きた。

 ドカンと大きな爆発音を轟かせながら衝撃がここまで届いてくる。幸い、そこまで大きい爆発ではなかったのでここまで被害が届くことはなかった。だが……。

 見ただけでわかる。あれは普通の爆発じゃない。先輩から話は聞かされていた。俺自身、実際に見るのは初めてだが状況からして間違いないだろう。紫の電流のようなものを帯びながら起こる爆発。これは界門(ゲート)が発生する時に起こる現象だ。


利音「っじか!?」


 俺の目線、十数m先には界門(ゲート)が出現していた。見た目はまるで何もない空間にすっぽりと穴が空いたようで、その中には黒い深淵が広がっている。

 何回か見たことはあるけどやっぱり不気味だ。見ていて気分がいいものではない。


知弥「裕生先輩、もうゲートの発生はないはずでは?」

 

裕生『そのはずなんだけどねぇ。どうやら3カ所発生したようだ。西と南、そして君達の目の前だ。しかも全部反応がまあまあでかいんだよね』


知弥「っじか、それで対処は?」


裕生『もう向かわせた。君たちの方も2人いれば大丈夫だと思うけど一応3年1人向かわせとくね』


知弥「さすが先輩。対処早いですね。じゃああとは任せてください」


 そう言って知弥先輩は裕生先輩との通信を切る。

 会話を聞く限り先輩達にも予測できなかった事態のようだ。でも不思議と会話は落ち着いていた。焦りがほとんどない会話のせいなのか、俺の頭に不安が増えることはなかった。

 とはいえ、緊急事態なのは変わらない。ここからはより一層気を引き締めなければ。

 ふと、先程開いた界門(ゲート)を見てみると周りを漂っていた電流のようなエネルギーが激しさを増していることに気づいた。


利音「知弥先輩、あれ大丈夫そうですか?」


知弥「ん? げっ、もう出るのかよ」


 その発言から推測するに、そろそろ魔物が出現するようだ。俺は鞘から刀を抜いて構える。

 そして、それは()()を通り抜け現れた。


利音「1体?」


 これも座学の訓練時に言われたことがある。界門(ゲート)にはいくつか種類があり、ほとんどの場合は大量の魔物が出現する通常界門(ゲート)。そして稀だが次に多いのが強敵界門(ボスゲート)。出てくる魔物の数は1、2体と少ないがその代わりかなり強力な魔物が出現する界門(ゲート)だ。

 どうやらこのゲートはその強敵界門(ボスゲート)のようだ。出てきた魔物は1体と数こそ少ないが威圧感はゴブリンのそれとは段違いだ。こいつはかなり強い。

 見た目はローブを羽織った黒いもやもやのような感じ。煙のような見た目だが衣服を纏い、地面に黒いブーツを履いた足でしっかりと立っている。どうやら武器のようなものは持っていないようだ。両手はがら空きな上、体に武器を仕舞っているようにも見えない。だが油断はできない。こういう武器を持っていない魔物に多いのは能力や魔法を主体で戦う中遠距離タイプ。俺は今刀しか持ってないから近づこうとすればすぐにやられるだろう。

 こちらにある中距離武器は知弥先輩の持つライフルのみ、流石に先輩に全部頼むのは後輩としてどうかと思うし、なにか役に立ちたいところだが。


知弥「来るぞ!」


 えっ?


 知弥先輩の声。そして気づいたときには魔物が俺の目の前まで迫っていた。

 武器も持たずに突っ込んできた? 近接戦闘? いや、今はそんなこと考えてる暇はない。


利音「くっ!」


 すぐに攻撃を刀で防御する。かなりギリギリだったが防御が間に合った。まさかとは思ったがその攻撃はただのパンチ。魔物の拳が握りしめられ俺の刀とぶつかる。

 拳と刀がぶつかった瞬間、まるで金属同士がぶつかったような甲高い音が響いたのにも驚いたがそれよりも拳の一撃の重さに驚いた。ゴブリンなんかとは比べ物にならないほどの重い攻撃……。

 5発のパンチが飛んでくる。何とかその5発は防御できた。でもあと数発攻撃が続いたら耐えられていなかっただろう。

 攻撃が5発でよかったと安堵していると、攻撃後に距離を取った魔物の手元が不気味に光る。そして、バチバチっと電気のような音が鳴ると魔物の手元に剣が出現していた。


利音「剣……マジか」


知弥「利音! 大丈夫か?」


利音「はい、なんとか。それよりもあいつは?」


知弥「あいつは虚空騎士(ボイドナイト)。危険度ランクAの魔物だ。ゴブリンよりはるかに強い魔物だから気を付けて」


 危険度ランク。それはWADO(世界能力開発機関)が定めた各魔物、と言うより異世界の生物の危険度を表した指標だ。ちなみにゴブリンはCランク(ある程度鍛えていれば対処可能)に位置する。つまり目の前の相手、虚空騎士(ボイドナイト)のはAランク、ゴブリンなんかじゃ比べ物にならないということだ。

 俺の中で恐怖が少し芽生える。先輩がいるという安心感が無ければこの場を逃げ出していたかもしれない。その恐怖を押し殺し、まだじんじんと痛みが残っている手で刀を構える。

 相手が中遠距離タイプではないのならばまだ役に立てるかもしれない。でも、またあの威力の攻撃を受けなければならない。しかも今度は武器まで持っている。さっきの拳よりも重い攻撃が来そうだ。なら……もっと気を引き締めなければ。

 というか騎士? 暗殺者の間違いじゃなくて? 申し訳程度の肩当てしか騎士要素無いんだけど。

 そう考えている内にまた虚空騎士(ボイドナイト)は俺の方に突っ込んできた。そして俺が間合いに入った瞬間、剣を振り下ろして来た。勢いと重量、さらに純粋な筋力まで乗った振り下ろしが俺に向かってくる。あきらかにさっきの拳よりも重い一撃だ。避ける暇なんて無い。ならばこちらも全力で受け止めなければ。もしかして受ければそのまま切り伏せられるかも。そんな不安が一瞬頭によぎる。だが……。


 ガキンッ!


利音「ここで受け止めなきゃ勝負になんねぇだろ!」


 今まで出したこともないような全力。体がそこら中で悲鳴を上げてるのを感じる。だがその全力を持って一撃を受け止め鍔迫り合いに持ち込めた。油断したらすぐに押しつぶされる。そんな緊張感の中、剣と刀が擦れあい金属の不協和音を奏でる。


知弥「よく耐えた!」


 虚空騎士(ボイドナイト)の動きが止まったその瞬間、知弥先輩は虚空騎士(ボイドナイト)の背後に回り刀を振り下ろす。防御できずまともに攻撃を受けた虚空騎士(ボイドナイト)は若干力が弱まった。普段なら感じ取れないほどの微細な差だが、追い込まれた状態で感覚が鋭くなっていた俺にとってそれは大きな差だった。


 ――――今っ!


 俺は全力で刀を押し上げる。さっきまでは受けるだけで精一杯だったが今ならいける。そんな根拠のない自信が俺の中から込み上げてくる。

 金属が擦れる不協和音を奏でながら、虚空騎士(ボイドナイト)の剣が弾かれ宙を舞う。

 態勢を崩す程度だと思っていたが、まさか剣が弾け飛ぶとは予想してなかった。思った以上に握力が弱いのかな。そんなことを考えられるほどに今の俺は余裕を感じていた。

 今なら斬れる。そう思って体勢が崩れた虚空騎士(ボイドナイト)の腹部に刀を振る。人で言う鳩尾(みぞおち)、急所の位置を斬った、のだが。


利音「ちっ、やっぱりか」


 知弥先輩が背中を斬った時にも感じたが、こいつ……()()()()()()。俺が斬った鳩尾(みぞおち)、知弥先輩がが斬った背中からも血が流れていない。その代わりに煙のようなものが衣服の隙間から漏れ出ている。本当にダメージが入っているのかわからないのが不安だが今はこいつを斬り続けるしかやれることがない。

 さて、どう攻略するか。

こんにちは如月ケイです。

前々から言っている改稿作業が全く進んでおりません。多分長くなるので気長にお待ち下さい。

それと本日、文学フリマというイベントに参加してまいりました。もちろん一般です。いつか自分も出店者として参加したいと思いながら見ていたのですがコミケとかとは違う点も多々ありましたね。でも自分のやりたいことには合ってそうで良かったです。とても良いイベントでした。

では、また次回お会いしましょう。今月中に投稿してぇなぁ。

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