第九十四話 楓色に
霜月有栖は、あの日の文月楓を見てから、少し距離を置くようにしていた。
初めての恋を、諦めるために。
それでも、つい目で追ってしまう毎日が続いていた。
一日、一日と時は過ぎて行く。
バレンタインもすぐに訪れるのだった。
もうバレンタインは明日という中、私はバレンタインを作っていませんでした。
きっと本当は作りたいのでしょう。
明日、私はプレゼントしたいのでしょう。
ため息が続く毎日。
どうせ、今回も、神楽坂さんと水無月くんのスパイをして終わりなんでしょう。
ーーーーー
2月14日。
バレンタインデーは訪れます。
一部の女子は思いを寄せた男子にチョコをあげるために、ドキドキしながら学校に来るのでしょう。
または、好感度上げのためにクラスみんなに配る女子。
私はそのどちらでもなく、ただ勉強道具だけを持って学校に向かいます。
ドキドキなんて感情はなく、どこかモヤモヤする気持ち。
でもそんな気持ちは最近毎日続いていることです。
「おはよう。神楽坂さん。」
「おはようさん、有栖ちゃん。」
登校してきた神楽坂さんの手にはバレンタインらしきものが。
「神楽坂さん、頑張ってくださいね。」
何が、とは言いませんが、神楽坂さんには伝わっているでしょう。
「ありがとうな。有栖ちゃんも頑張るんやで。」
何もしらない神楽坂さんはそう言ってくれます。
私は笑顔でうなづくことに。
朝、机には何個かのチョコが置いてありました。
クラスみんなに配る系女子がきっとくれたのでしょう。
心の中でお礼をしておきます。
「有栖ちゃん。これもらってくれるか?」
神楽坂さんは手に持っていた水無月くんへのバレンタインだと思われる袋の中から一つ私へ差し出します。
「いいんですか?」
「もちろんやで、一生懸命作ったんやで。うち、有栖ちゃん好きやから、告白みたいなもんや。」
本当にいい友達を持ったと、いつも思います。
そんな神楽坂さんは私も大好きで、憧れで、羨ましくて、、、、
でも、私は神楽坂さんのようにはなれないのです。
「あ、ありがとう。お返しは、、、今度作ってくる、、、、ね。」
敬語をやめてみたかったのですが、少しカタコトになってしまいました。
そんな私を、神楽坂さんはいつものような甘い笑顔で見つめました。
ーーーー
放課後になると、神楽坂さんは水無月くんにチョコを渡していました。
それを少しみていたのですが、告白の雰囲気になった途端に、そこから離れました。
教室に戻ろうとする途中で、楓くんが神月さんにチョコを渡されているのを目撃します。
そんなこと、見逃せばいいのに、私はそれをみ続けてしまいます。
感情なんて、生まれなくて、ただ一点を見つめる。
神月さんなんて、視界に入っていなくて。
しばらくして神月さんは去っていきました。
立ち尽くす私。
いつから気づいていたのか、楓くんは近づいてきます。
「そんなところで何してるんだ。」
「え、いや、私、、、」
「なんか話したの久々な気がするな。」
そりゃそうです。
私が離れようとしていたんですから。
「俺、教室行くけど、有栖は?」
「私も行く。」
私が思っていることとは違う言葉が口から出てしまいます。
そうして、二人で歩き出す。
不思議です。
最近ずっと心の中にあったモヤモヤがこの一瞬だけ感じないのです。
「楓くん。」
言葉が漏れる。
やめて。
自分が辛い思いをするだけだから。
でも、なぜか私は動いていた。
なんだか初めて行動できた気がして、少しだけ嬉しい反面、自分の行動に驚き、そして恥ずかしさが嬉しさに勝ります。
そのまま私は楓くんに触れる。
「有栖、、、?」
そのまま、私は後ろから楓くんに抱きついていました。
もう、諦めます。
楓くんのことを諦めるのは。
まだはもうなり。
そんな言葉は逆も言えます。
もうはまだ。
まだ、私にもチャンスはあるのだと、信じます。
楓くんの背中に顔を伏せて、目をつぶります。
そして、私は自分の意思で、呟くのです。
「好き。」
その言葉は今まで何回も言いたかった言葉。
楓くんに始めて使うタメ口はもしかしたらこの言葉になってしまったでしょうか。
ずっとずっと楓くんを追いかけて。
今まで何度も言いたくても言えなかった言葉。
もう何度も諦めたつもりだったのに、やっぱり心は諦めてなくて。
一年前は、恋なんて、一ミリも知らなかった。
高校で恋するつもりなんか、微塵もなかった。
なのに、、
私は染まってしまったのです。
私に抱きつかれている楓くんは何も言わなくて。
楓くんがどんな表情をしているかはわからなくて。
目をつぶっている私は、その目を開けたくなかった。
楓くんが何か言おうとしたのを感じましたが、私は恥ずかしさのあまり手を離してその場を去っていました。
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