第八話 霜月さん
「霜月有栖です。よろしくおねがいします。」
そういって彼女は俺の席の隣に座る。
「みんな仲良くするように」
先生はそう言い、教室を出ていく。
俺は隣の霜月さんを見る。透き通るような白い肌に思わず視線を奪われると、彼女と目が合う。
彼女は少し微笑みながら
「よろしくお願いします」
という。ここ何というべきかわからない俺は、なんとなく
「こちらこそ。わからないことあったら、何でも聞いてくれ。」
と返す。
整った顔立ち。美しく長い髪は雪のように白い。身長が高いわけではないが、スタイルがいい彼女はさぞかしモテるのだろう。
授業が始まるまで、みんな転入生の話題で尽きない様子だ。
みんな俺と同じようなことを思っているのだろう。
隣の霜月さんをいきなり一人にするのは違うと思った俺は席に座って授業が始まるのを待っていた。
なにか話しかけようかと思ったが、コミュ障の俺には無理だ。
初対面の人とは本当に話せない。
すると、霜月さんが話しかけてくる。
「あ、あの、、、」
「どうした?」
「私、教科書まだなくて、見せてもらえますか」
こんな美少女のお願いを断る人はいるのだろうかと俺は思いながら
「ん。ああ。いいぞ。」
と言いながら机を近づける。
授業は始まるが、まるで集中できない。
机をくっつけることがまず少ないのに、くっつける相手がまさかの美少女だ。
集中できる奴なんかいるのだろうか。
授業中見ている感じだと頭もかなりいいようだ。
4時間目でペア活動の時間が来る。
隣の人と協力して数学の問題を解くのだ。
俺はいつもとなりがいないため、前の柊と紅の三人でやることが多かったが、今日から三人でやることはなさそうだ。
柊と紅のペアは元々いい感じだったため、俺という邪魔者がいなくなったことを心の中で喜んでいるのではないのだろうか。
ペア活動が始まって10分ほどで、霜月さんは解き終えてしまい俺にわかりやすく教えてくれた。30分程余ったため、俺は色々聞いてみることにした。
「どこの高校からきたんだ?」
「○○高校です。親の都合で引っ越してきました。」
敬語でそういうが、高校の名前が俺には分からなかった。かなり遠くから引っ越してきたのだろう。
「部活とかはやってたのか?」
「いえ、やってないです」
質問攻めしすぎると嫌がられる可能性もある。俺が一呼吸おくと、霜月さんから聞いてくる。
「部活やってるんですか?」
「一応、バスケ部なんだけど、最近腰を怪我しちゃって、部活行ってないんだ」
「腰、大丈夫なんですか?」
少し驚いた顔をしてから霜月さんは心配している様子をみせる。
「私で良ければ、お手伝いするので、なにかあったら言ってくださいね」
お世辞でもそう言ってくれるのはうれしいが、気を使わせてしまったのなら申し訳ない。疲労骨折は言わなくてもよかったかもしれないな。
「ありがとう。でも、あんまり気にしないで大丈夫だ。」
と言っておく。
「すみません。この学校にはコンビニがあると聞いたのですが、お昼を買いたいので場所を教えてくれませんか?」
「俺も行く予定だから、案内する」
「本当ですか。ありがとうございます。」
霜月さんは嬉しそうに礼を言う。
霜月がそういった直後授業のチャイムは鳴った。
「じゃあ、行こう。霜月さん」
そういって二人でコンビニへ向かった。
お昼を買い終えて、教室に戻ると、俺はいつもの猿田と柊と食べようと思ったが、近くにいた紅と鴨志田、そして緑岡と如月のカップルを呼び、霜月を入れて食べることにした。
早めに友好関係を広くしておくことは大事だ。
結構話は盛り上がり、霜月も楽しそうでよかった。
お昼が終わってみんな自分の席に戻ると霜月はいう。
「気使わせちゃって、ごめんなさい。でもありがとうございます。」
その後、何もなく5,6時間目を終える。
霜月が職員室で教科書とか色々やることがあるらしく、俺は職員室まで霜月を案内した。
「じゃあまた明日な」
「今日はありがとうございました。また明日。」
霜月は嬉しそうにそう言う。
結構仲良くなれたのではないか。霜月も嬉しそうでよかった。
すると、突然後ろから話しかけられる。
「楓。ちょっと聞きたいことがあるのですが。お時間よろしいでしょうか。」
綾華だ。隣にはこの前焼肉屋で見かけた武藤愛理と本木力の姿があった。
「大丈夫だ。なにかあったか」
「あまり、聞かれたくないので、カラオケにでも行きましょう」
そういって、俺たちはカラオケに向かった。
「自己紹介からさせてくださいな。武藤愛理っていいます。」
ふわふわとした口調で耳に残る。
「俺は本木力だ。よろしくな」
いかつい男だけど悪い奴ではなさそうだ。
「文月楓だ。楓でいい。」
自己紹介を終え、綾華が本題に入る。
「焼肉で前会ったよね。その日あたりから久保さんが元気がなくて、そしたら今日学校も休みで、何か知らない?」
「久保が元気がないなんて初耳だ。そもそも俺は最近部活に行ってない」
そして俺は疲労骨折のことを言った。
「俺もバスケ部の一員として、久保のことは気にかけてみる。何かあったら教えてくれ」
そういってこの話は終わったが、この後世間話で盛り上がり、本木と武藤ともかなり仲良くなった。連絡先も交換した。
「じゃあまた今度な。」
本木がそういって俺たちは解散した。
一人で駅まで歩いていると、俺は興味深いものを見つける。
夜が歩いている。
最初はデートかなと思ったがよく見てみると隣にいるのは久保だ。
なんで久保が夜と一緒にいるのだ。
仲良かったのか?いやまず学校にきてないのになにをしているんだ。
俺は頭が真っ白になる。
声をかけても良かったが、俺にはできなかった。
ただ二人は、真剣な話をしているそうに見えた。
頭がモヤモヤするまま俺は電車に乗った。
電車に乗ると、偶然にも霜月がいた。目が合ったため俺は話しかける。
「今日はお疲れ様。霜月さん電車一緒なのか。」
「そうですね。今は一人ですか?」
霜月はそう言ってくる。
「俺、クラスの仲いい奴みんな電車ちがうんだよな」
「今日お昼一緒に食べた人ですか?」
「そうだな。あいつら大丈夫だったか?」
「とても良い人達で楽しかったですよ」
それならよかった。これからもうまくやっていってほしい。
「私、友達とか作るの苦手なタイプで、今日うれしかったです。朝、私が話しかけたのも実はすごく緊張してたんです。でも話しかけてよかったです。」
恥ずかしそうにしながら霜月は言う。思わず俺も照れそうになる。
「俺も声かけてもらってうれしかった。初対面の人に話しかけるの俺苦手だから、霜月が声かけてくれて、良かった。」
霜月は今日でかなり俺に接する態度も変わったようで、かなり俺のことを信頼してくれているようだ。
最初はおびえているような喋り方だったが、少しずつ元気になってきている。
本当はもっと明るい子だと俺は思う。
もう少し仲良くなったら、きっとわかる。
そうしているうちに俺の最寄り駅につきそうになる。
「あの、最後に一つ、、、」
霜月が言う
「どうした」
「あの、名前、、、聞けてなくって、、」
そういえば、俺の名前をまだいってなかった。普通最初に言うべきだとおもうが、緊張していて忘れていたのだろうか、と自分で思う。そんな俺は初対面かのように言う
「文月楓だ。」
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