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第二章 どうやら俺のスパイ行動は人の恋路をスパイするだけではなかったらしい。
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第六十九話 緑岡林太郎という男②



緑岡林太郎


僕が生まれつき才能があるのは自覚している。


でも、それは一般人から見た世界の話。


緑岡家にとっては普通のことであった。


優秀な成績を収める俺を両親は褒めてくれる。


でも、どこか寂しいのだ。


緑岡 明奈


僕の姉である。

僕は三兄弟で、上からその明奈、そして幸太郎、そして俺。

三人とも才能に恵まれていたが、その三人で比べた時、俺は姉と兄に全然届かなかった。

特に明奈。


姉には絶対に勝てないな。と思ってしまった。

親もやっぱり才能が抜き出た明奈ばっかり。

僕が今まで生きてきた中で本当に勝てないと思ったのは、姉だけだ。


いつしか、姉は憧れの存在になっていた。

親に認められることよりも、姉に認められたい。

姉のようになりたい。


そう思っていた。


小学生のころからずっと追いかけて、追いかけて、追いかけ続けた。


気持ちが変わったのは中学生の頃。

姉のことを一旦忘れることにした。

憧れるのはもうやめる。と聞いたことがある人も多いだろうが、それと似たような感じだ。


考えが変わった後の中学校は本当につまらないものだった。

目標があるっていうのはとても大事なことだと知った。


誰にも負けない。


誰も僕に挑むことはない。


僕は才能がある奴を求めた。


僕以上の才能をもった奴と戦いたい。


なんなら姉のような才能を持った奴と戦いたい。


そうして親をきっかけにこの高校に入った。


僕の見ていた世界は狭かったのか才能がある奴はこの学校に何人もいた。

猿田や神谷、霜月など何人かに数回テストで負けた。

最初は嬉しかった。あまり味わったことのない負けを味わえた。


でも、結局僕の方が強かった。

如月という邪魔者と別れてから、少し本気を出した程度で一位はすぐ僕のものになった。あれから僕はまた負けることがなくなった。


文月楓。


お前は俺を楽しませてくれるのか。

あいつの今までの成績は別に普通。

運動はそこそこか。


でも、感じる奴は感じているだろう。

文月楓の隠しきれない才能。


以前、神月なども言っていたが、僕も感じる。

好奇心から僕は楓を戦いに誘った。

あまり期待はしすぎないが、お前ならと、僕は信じている。


「どうなろうと、俺が優勝する。」


楓はそう言っていた。


なぜ、そう思う。


なぜ、自信がある。


なぜ、僕に勝てると思った。


「やっと楓くんの本気がみれるかな。」


神月が言っていた。


楓。お前の本気はどんなものなんだ。


なぜ、持っている実力を隠す。


なぜ、持っている才能を何かに使おうとしない。


基本何もしないお前は、なぜ僕のスパイをし始めたんだ。


教えてくれ。楓。


「林太郎~?」


「はっ。」


考えすぎた。


「何?明奈。」


「早くご飯たべな?なんかあったの?」


姉と晩御飯を食べていたのだった。


基本両親は忙しいので、姉が夕飯を作ってくれる。


「なんだよ~恋でもしたのか?」


兄の幸太郎が冷やかしの目でこちらを見てくる。


「いや、そんなくだらないことは、、」


「なに~恋はいいことでしょ。」


「そうだぞ。」


兄と姉はそう言う。


恋なんて気持ち、とうの昔に忘れてしまった。


「明奈、幸太郎。俺とバスケしてほしい。」


「は?」


「急にどうしたの~?」


「いや、今度戦うことになって。」


「お前なら勝てるだろ。」


「もちろん。でも、俺はいままで明奈と幸太郎には一回も勝ったことがない。」


「そりゃ、私に勝つなんて100年早いわよ。私たちに勝てなくても学校の奴らくらい勝てるでしょ。」


「学校で勝つためじゃなく、僕は明奈と幸太郎に勝ってみたい。」


僕は今、真剣なまなざしで二人を見ている。


そうだ。勝てないあまり、遠くの存在だと思っていた明奈と幸太郎。


この二人に勝てないと、心の中で思っていたあまり、どこかで俺は制限されていた気がする。


やはり、一番は僕でないとだめだ。


「そんなに言うなら、やろうか。明日でいいか?」


「お願いします。」


ーーーーーーーーーーー


「まずは俺とだ。林太郎。五本先取でいいか?」


対決の時が来る。俺が頷くと、兄はドリブルを始める。


華麗なボールさばき。


僕はそれを追う。


最小限の動きで兄を止めようとする。


(来る、、、、!)


そう思った瞬間俺は兄の動きについていけず、地面に尻から落ちる。


僕は、僕は、幸太郎にすら、、勝てないのか?


ノーマークのシュートをしっかりと兄が決めきる。


僕はその後、何点か取ることはできたが、兄の攻撃を一度求めれず、四対二にで、兄のマッチポイントとなる。


「ハア、ハア、」


こんなに息切れしたのは久しぶりだ。


どうやったら、僕は勝てるんだ。


「幸太郎。」


「あ?」


「今、どんな気持ちだ?」


「楽しいぜ。」


兄のその言葉にどこか感銘を受ける。


楽しい。


俺が最後に楽しんだのっていつだっけ。


そうか。


一段と早くなる兄のドリブル。


バスケって楽しいものだよな。


それに食らいつく僕。


でもな、幸太郎。


「勝たないと面白くないんだ。」


その瞬間僕の中で何かが変わる。


兄の持っていたボールはいつの間にか僕の手に。


「は、、、、」


乗った僕はそのまま四対四の同点まで追い詰める。


ここでもう一度、、止める。


「強くなったな。林太郎。」


そういった兄は今までにないスピードでゴールに向かう。


なんとか追いつくが、すでにシュートモーションに入る兄。


だが、僕には兄の動きが読めた。


兄が頭の上ボールを上げようとする過程で僕はボールを刈り取った。


「マジか。」


少しうれしそうな表情で言う兄。


僕の攻撃。決めれば、勝ち。


僕が無意識につくドリブルは兄と同等以上のものだった。

僕の揺さぶりに、倒れこむ幸太郎。


そのままレイアップシュートに行った方が確実だが、僕はその場で流れるようにジャンプショットを放った。


そのボールは、そう決められていたかのようにネットに吸い込まれていく。


勝った。


幸太郎に初めて勝った。


楽しい。


久しぶりの感覚だった。


でも僕のそんな感情は一瞬で変わった。


絶好調の俺だったが、明奈に手も足も出ず、5対0で完敗した。





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