第六十六話 西谷恵という男
修学旅行4日目。今日で最終日となる。
昨日緑岡と別れてからは、すぐに眠りについた。
あの状況でよく眠れるな。と自分でも思う。
最終日の今日はクラス行動だ。
午前中に伏見稲荷大社に訪れ、午後に清水寺に行くことになっている。
俺はこの修学旅行、何も起こらないことを期待していたのだが、まさか緑岡と直接対決することになるとは、最終日はほのぼのと過ごしたいものだ。
今日俺が注目したいのはいつも通りの水無月と神楽坂はもちろん、最近あまり注目していなかった、花宮と徳永にも注目したい。
すでに付き合っている柊と紅だが、いつも通りイチャイチャしているだけなので、どうでもいいとしよう。
後は綾華の様子だけ気にしておくか。
ということで、バスで移動し、早速伏見稲荷大社に到着する。
ここではやはり、あの有名な空き門をくぐる。
長い道のりだが、俺は有栖との話に弾みながらその赤い門をくぐる。
水無月は神楽坂、柊は紅、徳永は花宮と、俺の友達は皆恋愛を楽しんでいる。
だから、俺は独りぼっちになっている。
こうなると、綾華か有栖くらいしか友達がいない。
綾華はやはり元気がないので、俺は有栖との二人で会話をしている。
ただ、ひたすら同じ門をくぐり、有栖との世間話。
霜月も人の恋愛を観察するのが好きなようで、他人の恋愛話で盛り上がっていた。
そんな話をしている中、急に俺は思い出す。
西谷恵。
あいつは、本当に緑岡と手を組んだのか。
昨日、緑岡と遭遇してしまった理由で考えられるのは三つ。
まずは、たまたまということ。
そして、西谷のスパイ。
さらにないと思いたいが、神月の逆スパイ。
神月がこれで俺を裏切っていたら、さすがにお見事だ。
もともと神月がスパイしているところに俺が参戦したから、流石にないとは思うが、ないとも言い切れないし、それをやってきそうなのが、緑岡だ。
「楓くん?」
「有栖。西谷のこと、どう思う?」
有栖と呼ぶのは、まだ慣れない。
「西谷くん、、ですか。根は悪い人じゃない気がします、、」
有栖の言いたいことは良くわかる。
西谷は良くも悪くも素直なんだと思う。
「何か、ありました?」
有栖なら相談に乗ってくれるはずだ。
でも、これは俺自身で解決する。
「いや、何でもない。」
そうして、いつの間にかすべての門を通り抜けていた。
下っている中、俺は西谷に話しかけることにした。
「西谷。」
「あ?文月か」
「お前、緑岡と組んだのか?」
俺は直接、ド直球に聞くことにした。
「あ、あーもうばれてんのか。脅されてよ。ほんとにすまん。お前のことは裏切りたくなかったんだけどな。」
「そう、か。まだ続けるのか?」
「んー緑岡次第だな。言うこと聞かねーと、まじで退学になっちまう。でも、、、」
西谷の様子がおかしい。
「俺さ、、お前のことは裏切りたくねえんだよ。お前がいなかったら、今頃俺はこのクラスにいないと思う。」
確かに、西谷のことは何回か助けたが、そんな風に思われていたとは、、
「俺、久しぶりに思ったんだよ。お前には勝てねえわ。緑岡よりも、勝てる気がしねえ。」
「そうか?俺はそんなに、、」
「いや、お前が強いのはわかる。きっと緑岡との戦いもお前が勝つと信じてる。だからさ、、お前の役に立てないか?俺」
「俺と組むということか?」
「緑岡に嘘の情報流すくらいはできるぜ。」
「見つかったらどうするんだ。」
「いや、お前があいつに勝って緑岡に生徒会会長を降りさせるから、問題ねえ。」
信じていいのだろうか。
「分かった。何か困ったら、お前の力を借りるかもしれない。」
「おう。」
実際頼むかはまだ分からないが、何か使える可能性はあるだろう。
はあ、結局今日もこんな感じか、、
最後の清水寺は緑岡のことを忘れよう。
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修学旅行最後。清水寺。
クラスで来たとはいえ、結局は自由行動となった。
水無月や柊、徳永を誘いたいところだが、一旦様子を見る。
それぞれの恋愛をここで俺はじっくり楽しませてもらう。
「楓くん。」
「しも、、有栖。どうした。」
「花宮さんと徳永くんが、、」
有栖の目線の先には確かに二人の姿。
「行くか。」
俺は有栖と共に二人を追った。
花宮と徳永は楽しそうに会話をしながら店を回る。
それを見ながら俺は有栖との会話に弾む。
「よくないですね。人の恋愛をこうやって、」
「でも、楽しいだろ?それに、俺は花宮に相談されてるからな。」
そう、花宮は徳永が好きなことを俺に相談に来た。
ならば、俺もこうやって楽しませてもらう。
それに邪魔はしてないし、もちろんするつもりもない。ならばいいだろう。
「徳永くん。こっち、、」
花宮が恥ずかしそうな声で言っている。
二人が向かったのは少し静かで休憩ができるベンチ。
「あ、これ、まずい奴か?」
有栖に言う。
「ちょっと、いい雰囲気ですね、、」
「さすがに移動するか。」
俺がそう言った時にはもう遅かった。
「徳永くん。好きです。付き合ってください。」
「あ」
有栖と顔を見合わせる。
すまん。花宮、徳永。
俺と見つめ合う有栖の顔が少し赤らめている。
「俺でよければ、よろしく。」
徳永の言葉は、花宮の恋が成功したことを意味する。
良かったな。二人とも、、
俺は仕事を一つ終えたかのような達成感を得る。
あれ。
どこか霜月の様子がおかしい。
あれ。
なんか心がモヤモヤする。
「楓くん、、」
俺の目を見てはすぐどこかに目線をそらしてしまう有栖。
明らかに様子がおかしい。
血が頭に上る感じがする。
「楓くん。」
「どうした。有栖。」
「わ、私、、かえ、、」
カタコトな有栖の言葉はそこで途切れる。
「ごめんなさい。なんでもないです。」
いつもの様子で有栖はそう言うのだった。
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