第六話 人の恋路をスパイする
藍沢先輩は長々と俺たちに話し始めた。
結局、俺たちは一時間ほど話して解散するが、朝日先輩と夜はまだ部屋に戻ってくる様子はない。
藍沢先輩が話したことを俺は布団の中で考える。
まず、夜が自販機に行ってくると言って部屋を抜け出したらしいのだが、中々帰ってこないため、藍沢先輩と久保が二人で見に行ったらしい。
そこで、ベンチに座って話している二人を見つけてしまったと言っていた。
少し盗み聞きをしたらしいが、夜が藍沢先輩や久保、新田の悪口をいっていたらしい。
藍沢先輩は結構ショックを受けていた。
前から少し思っていたがマネージャーは仲が悪いのかもしれない。
特に藍沢先輩は気を使ってみんなと仲良くしている様子がよく見れるが、一年の仲は良いとはいえないだろう。俺は
何か月か前に夜が言っていたことを思い出す。
「私、久保さんも、新田さんも苦手で話づらいんだよね。だから、ちょっと避けてるんだ」
夜はこう言っていた。しかし、朝日先輩に悪口を言っていたのはなぜだろうか。
夜自身が避けているため、久保と新田と仲良くしたいわけではないはずだ。
「夜の相談、まあ悪口かもしれねえけど、それを朝日先輩が聞いてあげる日々を送ってたら、自然と一緒にいる時間は長くなるだろ?それで付き合ってるって噂が流れたんじゃねえのか?」
考えていると、突然狸はこう言った。
狸が言いたいこともよくわかるが、この件はそんな単純な話なのだろうか。もっと複雑な気がする。
俺は今までの朝日先輩と夜の行動を頭の中で浮かべる。
「付き合ってて何か悪いか」
朝日先輩は言っていたけど、二人は本当に愛し合って、付き合っているのだろうか。
夜はなんであの日、泣いていたのか。
考えてもすべてが違う気がする。
ここまでくると、朝日先輩と夜は本当に何もなく付き合っているだけであって欲しい。
考えているうちに、俺は、いつの間にか眠りについていた。
次の日、頭のなかのモヤモヤは残ったままで試合に臨んだが、全然いい動きができなかった。
それは、部屋が同じだったメンバーも同じで、みんな調子が悪く、俺たちは全敗した。
朝日先輩も疲れている様子だった。
試合が終わった直後、俺は尻もちをつくように倒れた。
前から痛かった腰の痛みに耐えられなくなった。
休んでおけばよかったところを試合に出続け、無理をしてしまった。
「だめだ、立ち上がれない」
俺は仲間に運んでもらい、その後先生に病院に連れてもらったのだった。
「疲労骨折をしていますね」
院長にそう告げられる。俺の頭は真っ白になる。
色々説明を受けたがなにも頭に入っていなかった。
合宿終わりのバスの中、俺は疲労骨折について調べた。
疲労骨折の治癒機関は2~3か月で復帰可能ですが、半年かかる場合もあります遷延治癒や偽関節が生じてしまうと治癒までかなりの時間を有してしまうため、学生はそのまま引退になる可能性もあります。
遷延治癒とか偽関節とかよくわからないが、このままバスケをやめてしまう可能性もあるのだろうか。
とにかく安静にして、またバスケ部に帰ってこなければならない。
先生にも部活にはしばらく来なくていいから、治療に専念しろと言われた。
狸や徳永にも色々言われたが、あまりおぼえていない。
一つだけ言われたことを思い出す。
「朝日先輩と夜のことは任せろ」
カッコつけてるようにしか聞こえないが、俺は狸たちに任せるしかないようだ。
俺の負けなのだ。
夜の件もバスケができないことにも俺は悔しくなり、思わず唇を噛む。
この日をきっかけに、俺はバスケ部に行かなくなった。
27日。
Bクラスのみんなで一年間お疲れ様パーティというよくわからないパーティに誘わている。Bクラスは結構みんな仲がいいのだ。
クリスマスにやる予定だったらしいが、俺が合宿だから日にちをずらしてくれたようだ。
焼肉屋で行うらしく、途中で俺は柊と猿田と合流することにした。
疲労骨折というのを理由に、荷物を持ってもらった。非常に快適だ。
「疲労骨折って大変だな。部活はどうするんだ」
猿田が心配そうに俺に聞いてくる。
「とりあえず、しばらくは休んで治療に専念することになった。」
俺が答えると、柊が言う。
「マネージャーと先輩が付き合ってるっていうやつはどうなったんだ?」
「なにもわからないまま、こうなっちまった。」
他にも合宿のことを話しているとすぐ焼肉屋にたどり着く。
「お、柊たちが来たぞ」
そう言って俺たちを迎えるのは緑岡林太郎だ。
勉強からスポーツまで全部こなしてしまう優等生である。しかも顔もいい。
なんと不平等な世の中なのだろう。
そして、隣にいるのが緑岡の彼女の如月鈴花だ。
彼女もまたハイスペックであり、めちゃくちゃ美人である。
このカップルは両者共に完璧すぎて、かなり話題になった。
「これで全員か?」
と今回のパーティを取り締まる水無月蒼空がいう。
彼もかなりハイスペックである。運動はそこまでなのだが、頭がとてもいい。
なによりもクラス1番のイケメンを争う。個人的に緑岡、水無月の二強である。
「天音と碧は来るっていってたぞ」
緑岡がいう。
「おい、その二人は彼女と過ごすんじゃねえのかよ」
柊が嫉妬するように言う。
「あと、タン ヤオね」
「お、あいつも来んのか」
タン ヤオは中国で生まれたと聞いている。
でも、ほとんどの時間を日本で過ごしているため、中国のことは全然しらないらしい。
結構面白い奴で結構人気がある。
今回集まった人たちを俺は見渡して見てみる。
左から、猿田、柊、緑岡、如月、水無月、鴨志田、紅、そして委員長がいる。
「鴨志田と紅って名前なんていうんだっけ」
忘れてしまった俺は小声で隣の猿田に聞く。
「鴨志田葉月と、紅茜な」
猿田が耳元で答えてくれる。俺は続けて聞く。
「じゃ、委員長は?」
「お前まじか、上久保英介」
しばらくすると、遅れて三人も到着する。
「遅れてすまん」
「これで全員だな。じゃあ」
「乾杯!」
委員長を合図に乾杯した。
今年の振り返りで盛り上がっていたのだが、委員長が突然話を変える。
「みんな。急だけど、忘れないうちに言っとくわ。新学期から転入生が来るらしい。」
「え?まじ」
みんな驚きと喜びの反応を見せる。
「男?女?」
柊が聞く
「そこまでは分からない」
転校生か、いじめとか問題があって前の学校をやめたのか、普通に引越しで転入してくるのか。
興味があったが、新学期まで分からないようだ。
特に問題児だったら大変だ。
転入生の話で盛り上がっていると、向かい側の席に見たことある人たちを見かける。
「あれ、楓だ。Bクラスもパーティしてんの?」
バスケ部マネージャー久保が話しかけてくる。
隣には綾華もいる。おそらくAクラスでもパーティをするのだろう。
わからない人ばかりだが、テストで順位表に乗っていた本木力や武藤愛里の姿も見える。
綾華が俺に手を振っているため、俺も振り返す。
すると、本木力がこちらの方に近づいてくる。
緑岡とはなしたいようだ。
「おい〜緑岡。また負けちまったよ。次は勝つからな」
その一言だけ残して本木は去っていく。
「なあ、なんのことだ?」
猿田が耳元で俺に聞いてくる。
「たぶん、テストの順位じゃねえか」
たしか、緑岡が三位、本木は四位だった。
その後も話は尽きず、かなり盛り上がった。
「そろそろ、閉めようか」
水無月は言う。
お金を払い、焼肉屋をでて、皆帰宅する。
帰ろうと思ったが、俺は水無月に呼ばれる。
「なあ、猿田と柊って彼女いんのか」
「なんで俺に聞くんだ。まあ、多分だけどまだ付き合ってはいない。猿田は鴨志田、柊は紅のことだろ?」
俺が答えると水無月は続ける。
「そう、その組み合わせだが、やっぱいい感じだよな」
「ああ、かなりいい感じだ。ところで水無月、お前はまだ彼女できないのか」
俺は聞いてみる。
「ああ、出来ないよ。味方はお前だけなのかもしれないよ、楓」
そうか、こんなイケメンでも彼女はそう簡単に作れないのか。
俺と水無月が恋バナに夢中になって話していると、猿田たちに呼ばれる。
「ちょっと話しすぎた。帰るか」
そう言われ、水無月と猿田たちと家に帰ることに。
そうか水無月。気になるよな。
人の恋愛というものは見てるだけで楽しいものだ。
俺が時々人の恋愛をスパイのように見ているのも、キモイと思われるだろう。
でも実際世の中にはそんな奴らであふれてる。
そんな奴らが、人の恋愛をするのが好きな理由。
それは自分は何も傷つかないから。
もう一つは、自分が恋愛できないから。
もちろん、全員がそうとは言えないし、勝手な俺の自論だ。
俺は後者にあたるだろう。
そう、俺は恋愛に向いていない。
俺に恋愛はできない。
してはいけない気がする。
何かに、縛られている。
だから、俺は、人の恋路をスパイする。
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