第五十四話 勝負は一瞬で
「楓くん。」
入場直前に神月に言われる。
「凪ちゃんのことはもう大丈夫。自分のことだけ集中して。」
「分かった。ありがとう。」
なんで断言出来るのかは分からないが、俺は素直にそれに答える。
実際リレーでなにかされる可能性は少ないだろう。
された所で対策がむずかしい。
俺は何も考えず、勝ちだけに集中する。
現在のポイントがどれくらいか分からないが、ここで勝って置くとかなり、一位は期待できる。
問題は本当に勝てるかどうか。
自信はあるが、何が起こるか分からないのが勝負の世界だ。
「位置について。用意ー」
始まる。
第1走者は綾華。
その次から、紅、徳永、俺だ。
パン!!
銃の音とともに走り出す。
綾華は俺が昔から見ているような、華麗なフォームで走る。
圧倒的な速さの綾華は学年関係なしに一位に躍り出る。
緑岡のクラスは、、
3位のようだ。
そのまま一位で綾華は徳永にバトンを渡す。
「いっけー!徳永!」
クラスの声援が聞こえる。
頑張れ。徳永。
徳永は綾華の作った差をキープしようとするが、、
三位の緑岡のクラスが追い上げてくる。
本木か。
徳永の速さを悠々と超えるかのような圧倒的な速さ。
本木は徳永に追いつく。
そのまま並走しながらバトンが渡る。
だが、次は紅だ。
綾華並の速さを持つ。
紅は並ぶ緑岡のクラスとの差を離す。
一位のまま俺か。
そう思っていた。
「ワアアアアアアアア!!!!」
大歓声が聞こえてくる。
後ろからごぼう抜きするかのように走ってくる神月。
「まじか。」
ここまで早いのか神月。
やっぱ神月はハイスペックすぎる。
神月はあっという間に紅と並ぶ。
いや、それを追い越して差をつける。
そしてバトンが渡る。
アンカーは、、、
猿田か。
なんか久しぶりだな。猿田。
そして俺は二位でバトンを受ける。
すぐ後ろに緑岡。
「行っけー!楓ーー!!!」
大歓声の中はっきりと聞こえる声援。
後ろから迫り来る化け物。
緑岡が迫ってくる。
猿田を見る。
神月がつけた差は縮まらず猿田に追いつくのは難しい。
「邪魔だ。」
俺を追い越す緑岡。
速いな。
思わず感心してしまう速さ。
だが、負けられない。
それでも、緑岡はどんどん俺から離れていく。
「キャーー」
さらに大歓声が上がる。
何だ。
後ろからまた何者かが近づいてくる。
それはいつの間にか俺と緑岡を追い抜く。
「朝日先輩、、、」
忘れてた。
学年一位。いや、学校トップのスピードの朝日先輩。
朝日先輩か、、
「すまん。後は任せた。点を取るのはお前だ。」
朝日先輩に言われたあの言葉を思い出す。
最後の試合で先輩は俺に託した。
その瞬間、あの時のような感覚に身が包まれる。
さっきまで聞こえていた歓声が聞こえない。
地面と靴が擦れる音が聞こえる。
前を走る緑岡がゆっくりに見える。
「これだ。」
思わず呟き、俺はいつしか緑岡の横に並ぶ。
ゴールも近くなってくる。
自分の足音しか聞こえないが、一つだけ俺の耳にはっきりと伝わる。
「がんばれ!楓くん!」
霜月だろう。
それを合図にするかのように俺は緑岡を追い越していた。
まだ、行ける。猿田も朝日先輩も。
朝日先輩は猿田も追い越す。
俺はそのまま駆け抜ける。
だが、前の猿田に追いつくことはなかった。
俺は三位でゴールしたのだった。
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リレー順位
一位 三年C組(朝日先輩)
二位 二年B組(猿田)
三位 二年A組(楓)
四位 二年C組(緑岡)
五位 一年A組
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リレーも終わり、体育祭は終わりを迎えようとしている。
閉会式が始まる。
「では、結果を発表します!」
運命の時。
「三位 三年C組」
喜ぶ三年C組の歓声。
「続いて、二位は、、、」
「二年C組!」
勝った。緑岡には勝った。
今日の結果的に後優勝の可能性があるのは俺のクラスか神月のBクラスだろう。
「一位は、、、、」
「Aクラスです!」
「うおおー!」
「よっしゃー!」
今日一番の歓声。
良かった。
なんとか、一位。
リレーで勝てなかったのは悔しかったが、クラスのメンバーに救われた。
その後は何事もなく、体育祭はあっけなく終了した。
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帰ろうと学校を出ると、神月に呼び止められる。
「お疲れ様。神月。」
「お疲れ様。」
「あんなに足早かったんだな。負けたよ。」
「楓くんも一位おめでとう。」
「ああ。何とか凪の試練も達成だろか。」
「楓くん。ありがとうね。」
「おい、なんでまた泣きそうに、」
「私、泣いてなんかないし、、、」
いや泣いてるぞ、神月。
だが、俺はそれ以上何も言わなかった。
「もう、ダメかと思ってたの。また、楓くんに助けられちゃったな。」
「いや、そんなことはない。」
そうだ。凪にバレたのも俺が霜月妹に情報を流してしまったから。
「じゃあな。神月。今日はゆっくり休めよ。」
「あー違う違う。ちょっと待って。」
去ろうとする俺を神月は止める。
「客だよ。」
俺は足を止める。
しばらくすると、その客は現れる。
そこに現れたのは霜月星良だった。
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