第二十二話 緑岡林太郎という男
は?本気か緑岡。今なんて言っただろうか。
俺も霜月は目を合わせる。
緑岡は、完璧じゃないお前は俺には必要ないと言ったように聞こえた。コイツは何を言っているのだろうか。
俺の足は震えて、更に地面から離れない。
俺と霜月はしばらくその場から動けなかった。
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緑岡林太郎。
僕は昔から優秀で、ずっと親にも先生にもみんなから褒められてきた。
それが嬉しくて、僕はまた褒められるために努力した。
努力といっても、元々の才能があったため、そこまでやらなくてもある程度はこなせてしまう。
小学生でも中学生でも、僕に勝てるやつはいなかったし、逆らうやつもいなかった。
逆らうやつがいなかったというのは僕の実力だけではなく、親の権力があった。
僕の親は詳しくは教えられていないけど、大きい会社の社長らしい。
それもあって、小中学生は、みんな僕と喧嘩しないようにしたり、少し避ける人が多かった。
俺と同じ学校だった人の親たちが、
「林太郎くんとは絶対に喧嘩しないでね」
なんて言葉を言ってるのを何回も聞いたことがある。
だから、僕はあまり友達がいなかった。
でも別にそれでも良かった。
僕は小さい頃から何事でも1番になりたかった。
そう、最強という小さい子が憧れる言葉。
小中学生の俺は正しく最強だった。
誰もテストで俺には勝てないし、足の速さ、いや運動で負けた記憶はない。
体育で競技をしても、僕がいるチームが勝つ。
だから、最強の僕には弱い友達なんかいらなくて、ただ僕はひたすら、僕と釣り合うやつを探してた。でも小中学生でそれが叶うことはなかった。
高校生になると、初めての敗北を味わった。
お父さんの会社がここの学校と関わりがあるらしく、実は俺は受験せずに親のコネで入学した。
まあ普通に受けても合格したことに変わりはなかっただろうが。
初めて負けたのは初めての定期試験だ。
僕の初めてのテスト順位は三位だった。一位は猿田紫耀、二位は神谷綾華だ。
初めての敗北は悔しさよりも嬉しさが勝った。
初めての敗北。
そして、コイツら超えるというワクワク感。
だが、意外にも上手くいかず、二回目のテストでも三位だった。
それでも俺が落ち込むことはなかった。
そもそも、運動面では未だに負けたことがないし、やはり最強は僕だと自分で思っていた。
それから何度も定期テストをしたが、結果は常に三位だった。
そして、この前の定期テストでついに五位に落ちた。
突然の霜月有栖の登場、そして神月桜。
五位にまで落ちると、流石に焦りを覚える。
ずっと僕が最強だと思っていたのに、今年未だにテストで一位をとったことがない。
別にやろうと思えばお父さんに答案を貰うことだってきっとできるだろう。
しかし、僕の目指す最強は違う。
更に、僕が五位に落ちたことよりも重要なのは、鈴花、いやもうそう呼ぶことは無い。
如月がトップ10から消えたことだ。
僕の彼女も最強でないと彼氏である僕の評価が下がる。
最初如月はテストで俺の一個下の4位を保っていた。顔も良く、運動もできたため、最初は完璧な彼女になってくれると思っていた。
しかし、彼女の評価は俺の中で下がる一方だ。
だんだん彼女が順位を下げている中、林間学校でのあの有様。
最初は僕も心配で、懸命に探したが、今考えてみると僕の彼女である如月があの森ごときで何を遭難しているんだと。
如月が迷っていなかったら、一位も狙えたはずだ。
そして、その後のテストでもトップ10にすら入らない。
だから俺は別れることを決めた。
彼女の評価は僕の評価に関わる。
そう。
僕の彼女は完璧じゃないとダメなのだ。
「完璧じゃないお前は、俺には必要ない。」
俺は彼女にそう伝えた。
もちろん未練は全くない。
彼女に構っていた時間も勉強に費やすことが出来る。
そろそろ、僕が一位になる日も近い。
そして、来年は生徒会長になって、この学校も完璧にしたいと思っている。
そうすれば、また親は褒めてくれるだろうし、僕の憧れの存在で、大好きで、ずっとずっと追いかけて来た存在。
僕の姉に認めて貰えるように。
だから僕はこの学校を完璧にし、その頂点に立ちたいのだ。
自分勝手かもしれないが、それでいい。
人間はみんな自分勝手だし、結局最後はみんな自分を優先するやつがほとんどだ。
僕はやりたいことを好きなようにやるだけだ。
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緑岡が振ってからまだ二日ほどしか経ってないが、未だに信じられない、あの緑岡の言葉が気になる。
今日は来年の生徒会長の選挙である。
立候補者は既に居て、
緑岡林太郎
神谷綾華
神月桜
の三人で誰か会長を務めるか、みたいな選挙になるはずだ。
あとは来年の新一年生が二人ほど入るのだろう。
緑岡のあの言葉を聞いたばかりなので、俺は少しあんな奴に生徒会を任せて大丈夫だろうかと思ってしまうが、結果はどうだろうか、今日それは決まる。
俺は前からかなり評価している神月に票を入れておいた。
幼馴染の綾華でももちろん良かったのだが、私情なしで入れるなら俺は神月に入れる。
「では、来年の生徒会からの自己紹介です。」
この学校は二月にもう来年の生徒会が決まってしまうのか、ほかの学校がどうかは知らないが。
「生徒会長 緑岡林太郎。
生徒会副会長 神谷綾華。
書記 神月桜。 さんです。では会長の緑岡さん、一言お願いします。」
司会の人がそういう。
緑岡が勝ったか。
来年はどうなるのだろうか。
この学校の生徒会がどれだけ学校に影響を及ぼすのか知らないが、色々ありそうだ。
「生徒会長になりました。緑岡林太郎です。
まず皆さん、僕に生徒会長という名を頂きありがとうございます。良い学校にして行けるよう精一杯努力します。早速ですが、今日から生徒会が入れ替わるとの事なので、できることを生徒会一同精一杯やらせて頂きます。」
緑岡が立派な挨拶をする。まさか今日から入れ替わるとは思わなかった。
その日の放課後、俺はお知らせ掲示板に立ち寄った。
退学者 模部 太郎
上久保英介
俺はそれを見て唖然とする。
急に二人が退学とは何事だ。しかも二人とも俺と同じBクラスだ。
それを見ていると、神月が通りかかる。
「神月、生徒会おめでとう。」
「あ、楓くん。ありがと。会長にはなれなかったけどね」
「俺は神月がいいと思って票入れたんだけどな。」
「そうだったの?ありがとう」
「生徒会長になりたい理由とかあったりするのか?」
「ちょっとやりたいことがあってね。いや、やらなきゃいけない事が。」
生徒会でやることとはなんだ。
「それは会長になれなかった今でもできることなのか?」
「できるけど、会長になるのが手っ取り早かったの。何かあったら助けを求めるかもしれないからその時はよろしくね。」
「俺に出来ることならなんでも協力する」
「でも、やっぱりみんなには迷惑かけたくないから、、達成できたら、きっと伝えるから、楽しみにしててね!」
神月はそう言って行ってしまった。
なにか隠しているように感じて、心残りだ。
退学者についても聞きたかったのだが聞けなかった。
神月。
お前は何をしようとしているんだ。
緑岡も読めないし、来年の生徒会は大丈夫だろうか、綾華が心配だ。
俺は綾華を思い出し、綾華に聞こうとを思いつく、後に連絡したのだが、教えてくれなかった。
でも、何か知っているような様子だった。
悔しいが、俺が考えても仕方がないようだ。
諦めて俺は眠りにつく。
そういえば、明日はバレンタインか。
誰かに貰えるだろうか。
少しだけ期待を寄せて、俺は明日を迎えたのだった。
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