第十八話 時間がない
どうも、昨日からずっと数学の赤点を引きずっている文月楓です。
今日順位が張り出されると言っていたが、もう見に行く元気もない。放課後元気が出たら行くか。
やる気のない俺は授業もだらしなかった。
「楓くん。起きて」
時々寝てしまい、怒られる直前で霜月が小声で起こしてくれる。
そんなだらしない授業も終わり、放課後になり、1人順位表を見に行く。
なぜか、いつも順位表は一人で見たくなるのだ。
この前は部活に行く途中に見ていたな。
そろそろバスケもしたくなってきた。
そして、俺は順位表を覗く。
一位 霜月有栖
二位 神谷綾華
三位 猿田紫耀
四位 神月桜
五位 緑岡林太郎
六位 水無月蒼空
七位 本木力
八位 西谷恵
九位 文月楓
十位 神楽坂心
九位か。頑張ったな。
でも数学が高かったらトップ5にでも入ったのでないか。
ほかの教科の出来が本当に良かったみたいだな。
そして、一位は霜月か。やるな。
順位表に乗っている人はほとんど俺の友達で本当ににすごいな。
でも、今回は見たことない名前がいるな。
西谷恵
神楽坂心
見たことも聞いたこともない名前だが、強そうだ。
しばらく眺めた後、俺は教室に戻った。
「楓くん!九位おめでとうございます!」
教室に戻ると霜月が自分のことかのように喜んでいる。
霜月も俺の知らない間に順位を見ていたのだろうか。
「俺より霜月。お前一位だったじゃないか。おめでとう。」
「いえ、たまたまですって。」
こうして俺と霜月が盛り上がっているのをさっき教室の窓から少し覗いている者がいるのに、俺は気づいている。
「綾華。あれが例の転校生か。楓とも仲良さそうだな」
「そうですね本木君。勉強でも抜かされて、楓くんまで取られては困ります。」
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林間学校が終わったことで今年の行事もほとんど終わってしまったな。
次の行事となると来年の文化祭や体育祭だろう。
今年、このクラスで過ごせるのももう1ヶ月と少ししかない。
きっとみんなとまた同じクラスになるなんてことはない。
残りの限られた日々を大切にしようと俺は思う。
そして、一年生の間にもう一つやるべき事がある。
もちろんバスケ部のことだ。夜、朝日先輩、久保、狸。
このことは俺が絶対に一年生の間に解決してみせる。
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「楓くん。ちゃんと家庭科の用意持ってきました?」
「家庭科?なんの事だ。」
「もう、やっぱり。今日は調理実習ですよ。」
そんなこと聞いた覚えがない。もちろん俺は準備していない。
まずいな。先生に忘れたと言って家庭科室のダサいエプロンを借りるのはごめんだ。
「これ、使ってください。」
そう言う霜月の手には黒いエプロンと三角巾がある。
「いい、のか?」
「家にあったの適当に持ってきただけですから」
「マジで助かった。ありがとう霜月。」
勢いのあまり抱きしめそうになる。危ない。
「じゃあ調理実習の班決めますよ〜」
二時間かけての調理実習が始まる。
まずはグループ決めだ。
このグループは非常に大事である。
まず、なんといっても完成度の高いものを作るために、料理ができる人と組めたら最高だ。
他にも、的確な指示を出せる者やなど色々役割がある。
いかに素晴らしい料理を作れるか、まずはメンバー決めからが勝負だ。
他にも単純に仲の良い人。人によっては好きな人となることを願ったりもするのだろう。
そう願う俺のくじ引きの順番が来たのでクジを引く。
くそ。運ゲーか。
全員が引き終わり、先生が集計して発表する。
俺は言われた班のテーブルに移動し、メンバーを確認する。
俺は3班らしい。3という数字などはどうでもいいがな。
3班のメンバーは、
紅茜、如月鈴花、タン ヤオ、委員長
その4人に俺を含めて合計5人だ。まあ悪くはないメンバーだろう。
早速料理が始まるが、お題は麻婆豆腐だ。まて、まさかタンヤオ覚醒か。と思ったが、彼は出身の中国についてほとんど知らないのだった。残念だ。
だが、紅が非常に料理が上手なようだ。
紅を起点にどんどん俺たちの班は作業を進める。
とはいえ、俺はやることがなかった。
そして、ついに俺の出番が来る。
味付けだ。
いや、味見と言った方がいいだろうか。
「はい、文月〜」
「いただきます。」
味見をしてみたが、非常に美味しかった。
「文句ない。完璧だ。」
そう言う俺は何もしておらず、非常にかっこ悪い。
そうして俺たちの班はスムーズに完成した。
そしてみんなで食べ始める。
すると隣に如月が座ってくる。
「楓くん。ちょっといいかな」
「どうした」
「最近ね。林太郎が元気ないの。時々冷たかったり、、」
緑岡が元気がないか。
残念ながら俺には何も分からない。
「すまんが、心当たりはないな」
「だよね。ごめんね急に」
「いや、俺も少し気にかけてみるよ」
「ありがとう。紅さんは最近どうなの?」
如月は場の雰囲気が悪くならないように紅に話を振る。
「どうって、なにが?」
「柊くんとどうなのって話」
お、それは俺も非常に気になる。
「それがさ、アイツ最近いい男になったっていうか、なんだろ。私が意識しちゃってるのもあるのかも知んないけど」
そういう紅少し照れている。可愛い所もあるじゃないか。
まあ元々顔は可愛いのだがな。
紅は意識しちゃってるのかもと言っているが、告白をされるとそうなるものなのだろうか。
俺は告白をしたことも、されたこともないため分からない。
「文月は?」
「え?俺?」
「文月好きな人いんの?いなそー」
「それは失礼じゃないか。まあいないが。」
そんな感じの恋バナで調理実習は盛り上がった。
俺も好きな人を友達に言ってみたいものだ。
そろそろ俺も好きな人くらい作るべきだろうか。
彼女を作るべきだろうか。
欲しいかと言われたら、そりゃ欲しい。
だが、周りの恋路を見ているだけで楽しいのだ。
そう、スパイのように。
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高校生活には退学というものが存在する。
この学校での退学パターンは二つ。
シンプルに問題行動での退学。
もう一つは、知るものは少ないが、この学校の生徒会長の権力によっての退学だ。
これについては、後に触れることになるだろう。
退学になったものはやはりクラスで話題になり、少しづつその話題は広まり、学年に広まる。
そうなると、先生は生徒から質問攻めをされて面倒くさい。
この学校では最近、それを防ぐために名前だけは学校のお知らせ掲示板に書かれる。
流石に理由まで書くとプライバシーに関わるのでそこまでは書いていないらしい。まあ名前だけでもプライバシーに関わるのではと思う人もいるだろうが、学校が決めたことなのだ。。
どうせ退学したら隠そうとしてもすぐに学年中で噂になる。
そんなことは先生でも分かるからお知らせ掲示板に書くようにしたのだろう。
残念なことに俺の今見ているそのお知らせ掲示板には一人名前が刻まれている。
退学者 青井 狸
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