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第3章 恋愛も事件も全部俺がスパイする
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141 緑岡家

5-0


楓は緑岡に完敗した。

緑岡は言葉が出なかった。

あまりの弱さに。


「残念だ。」


「あ?」


「弱い。俺の知っていた楓と違う。」


言葉が出なかった。

楓もそれを分かっていたからだ。


「自分を見失うなよ楓。」


緑岡の優しさではその言葉以上は出なかった。


「そうかも、しれないな。」


不調なんかよりも、自分の見失っていたのかもしれない。

緑岡のいう通りなのかもしれない。

そう楓は思った。


「林ちゃん。夕飯の時間ですよ。」


「ああ。もうこんな時間か。すぐ行く。」


緑岡の執事は微笑んでから、戻っていった。


「行くぞ。」


緑岡はそう言って、ここを去っていく。


「緑岡。」


「あ?」


緑岡は振り返る。


「次は潰す。」


「ハっ。少しは調子を取り戻したみたいだな。」


少しだけだが、それを感じた緑岡。

ほんの少しだったが、楓は調子を取り戻したのかもしれない。

でも、それは本当に少しだった。


「いつでも来い。許してやる。」


なぜか楓は緑岡家侵入の許可をもらったのだった。


ーーーーー


「じゃあ、もう帰るぞ。」


「あら、ご飯食べていかないの?」


緑岡に言ったつもりだったのだが、執事さんが、答えた。

ちなみに、執事さんは普通に結構若いし、普通に可愛くて綺麗なお姉さんみたいな人だ。


「いえ、迷惑ですし……」


「そんなことないですよ。林ちゃんの友達ですもんね。ほら、座って。」


ふわふわとした喋り方の執事さん。

断ったつもりだったのだが、俺は言われるがままイスに座った。

隣には緑岡が座る。

どんな状況だ。笑わせるな。


「なんでお前と……」


緑岡は小さな声で呟いた。


「悪かったな。」


まさに豪邸っぽい大きな縦長の食卓に食事は並べられた。


「豪華だな……」


「今日は友達いるから頑張っちゃいましたー」


俺の小さなつぶやきは流石に執事さんには届かないような距離だが、それを聞いたかのように執事さんは言った。

いいな。可愛い執事さん。俺のところ来ないかな。そんなことを考えながら、俺は食事始まるのを待った。


「帰りました~」


なんだか聞き覚えのある声が聞こえたが気のせいだろうか。


「あら、やっと帰って来ました。ご飯の時間ですわよ~」


「げっ」


思わず口にしてしまう。


「あれ~?楓先輩じゃ~ん。なんでなんで?まさか、私と結婚の報告?ちょっと~早いって~」


「あら、そうでしたか。それはおめでたいですわね。」


なんで信じるの執事さん?


「緑岡、なんで凪が?」


「まあな。」


まあなってなんだよ。

確かに元々血はつながってたみたいなこといってたけどさ?

いとこだよな?

緑岡凪じゃなくて黄瀬川凪なんだし。


「それは凪に聞いてくれ。」


「は~い説明しまーす。」


凪は荷物を投げ捨てて、俺の隣のイスを俺に近づけてから座る。


「家出しました~」


「はあ。」


凪らしいというかなんというか。


「今さー林ちゃんと清ちゃん対立してるじゃん?」


清ちゃんというのは黄瀬川清一郎のことだ。


「俺はしてない。楓だ。」


緑岡が俺の横から訂正する。


「まあどっちでもいいよ~で、私清ちゃんに信用されてるから少しは情報あるわけじゃん?でも、私は裏切って楓先輩につくわけ!そのまま家も出ちゃった!」


ちょっとよく分からないが、いいか。


「凪、俺この前噂を流してるやつを見つけたんだ。でも、そいつは黄瀬川に操られていることを否定したんだ。なんでだと思う?」


「え~?そうなの?それはわっかんないな~清ちゃんがメールとかで匿名で伝えてるとか?」


なるほど。そういう可能性もあるのか。

でも、なぜ、それだと、伊達などが知らない人からの指示を承諾していることになる。

そんなことするのだろうか。


「全員そろったことだし、そろそろ食べましょうか。」


執事さんは緑岡の姉と兄らしき人を連れてきた。


「兄弟?」


小声で緑岡に聞いた。


「姉の明奈で~す。私が一番上。その下の幸太郎、さらに下が林太郎ね~」


まさか、俺の声が聞こえたのか?


「あ、どうも。文月楓と申します。」


俺も自己紹介すると、緑岡姉の明奈さんは一瞬表情を変えたのち、また笑顔になった。


「ふーん。君が楓くんね。」


「明奈姉ちゃん楓先輩のこと知ってるの~?」


凪が話に入って来る。


「いや?林太郎から少し聞いてたからね。」


「お前が?」


俺は緑岡の方を向いた。

あ、緑岡はこの場に複数いた。

緑岡林太郎のことだ。


「本当に少しだ。」


「「面白い奴がいる」って言ってたなwwww」


兄の幸太郎さんが、弟の素晴らしい真似をしながらそう言った。


「ちょっと似てるのやめて。」


失笑気味に姉の明奈さんは言った。


「林ちゃんに友達がいて嬉しいです。ほら、食べましょう。」


執事さんがそう言って、俺はなぜか緑岡家で食事をすることに。

まあ、会話も盛り上がって意外と楽しかったし、なにより食事が美味しすぎたので結果的には良かっただろう。


ーーーーーー


文月楓が八雲影太と会うまであと4日。

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