第十四話 ポニーテール
俺が呼んだのは綾華に徳永、新田だ。徳永は一番信用できると思って呼んだ。狸でもよかったのだが、朝日先輩から言われたことがあるので、やめておいた。そしてバスケ部マネージャーの新田だ。何かわかるのではないか、仮にわからなくても、マネージャーとして、夜や久保と接触する機会も多いため、呼ばない手はないと思った。綾華はバスケ部ではない第三者としての意見が聞きたいため呼んだ。本木でもいいのだが、あいつはうるさそうだからな。
「ここは少し目立つから場所を移動しようか」
すこし目立ちにくいところに移動し、俺は話を進める。
「新田、お前は夜と朝日先輩が付き合ってることしってるか?」
「さすがに知ってるよ」
久保は無表情で言ってくる。すると、新田は続けて話す。
「私が夜と仲良くしない理由はわかる?めんどくさいからなんだよ」
「知ってることをすべて教えてくれないか」
「興味ないからあんまりわかんないけどおしえてもいいよ。でも何が知りたいの」
「久保についてと、狸について知っていることがあるなら教えてほしい」
「久保さんについては、夜さんと朝日先輩が付き合ってるのをばれないようにバスケ部の動向をうかがってるよ。合宿のとき、藍澤先輩が色々話してたらしいけど、そのことも全部久保さんは夜さんに伝えてたよ。嫌でも耳に入ってくるの。二人が話してるのが。」
まさかの吹雪先輩の考察は的中だ。さすがに俺も驚いた。隣の徳永もだ。
「そもそも夜さんと朝日先輩は悪口を言ってなかったみたいだよ。他の人の悪口を言っていたところ、たまたま藍澤先輩に見られているときに、マネージャーの名前を挙げて、藍澤先輩が勘違いしたっていうことらしいよ。」
「なるほど」
隣の徳永は非常に納得している様子だ。
「もしかしてその悪口を言っていた相手って、、、」
「そう、狸だよ」
俺も狸も唾を飲む。その音が聞こえるくらい回りは静かだ。
狸がなにをしたっていうんだ。
「狸の事だから、無自覚に嫌がらせでもしてるんじゃない?あいつカマチョだし。もう話すことはないから私部屋に戻るね」
俺と徳永はしばらく唖然としていた。
「なあ楓、狸がなにしたってんだ。」
「でも狸はきっと自分がしたことに気づいてないと思う」
「でも何をしたのか全くわからないな」
「綾華はどう思った?」
綾華に聞いてみる。
「新田さんも言っていたように、無自覚に嫌がらせとかをしてるだけだったりしないでしょうか」
綾華の敬語に違和感を覚えるが、普段綾華は敬語をつかっているのだった。
「嫌がらせだとして、誰に何をするんだ」
徳永は言うが考えてもきりがない。
「今日はお開きにしよう。」
そうして俺は部屋に戻った。
今日分かったことを頭の中でまとめる。
・久保が内通者確定
・夜は悪口を言っていなく、藍澤先輩の勘違い。
・事の始まりは狸(予想 無自覚の嫌がらせ)
そしてこれを、吹雪先輩に送り、その後は、部屋で柊と猿田と過ごした。
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「楓~起きろ~」
朝になると、猿田にたたき起こされる。
俺は寝起きが悪い。朝食の時間が来てしまうため、猿田は俺をたたき起こした。
「ほんとにお前は起きないな」
そういわれながら、俺は朝の活動を始める。それが終わると、すぐに朝食に向かった。
「おはようございます。楓くん」
「おはよう楓」
既に昨日と同じ席に霜月と水無月が座っている。
「二人ともおはよう」
そう言う俺の声はまだ寝起きで声が小さい。
「やっぱり楓くんは寝起きが悪いんですね」
少し馬鹿にするように霜月が笑いながらこちらを見てくる。
今日の朝食はご飯にウインナー、スクランブルエッグといった朝食でよくある食事だ。俺はあまり朝ごはんを食べない派なのだが、ここのご飯はやっぱり美味しく、結構食べることが出来た。
朝食の後は先生に自由行動の諸注意を聞いて、皆自由行動の準備を始める。俺も部屋で支度をし終えると、水無月と緑岡と合流し、霜月と如月を待つ。
「水無月の服オシャレだな」
水無月はファションセンスもいいようだ。学校はいつも制服だが、林間学校ではみんなの私服が見れて結構楽しいものだ。昨日はほとんどの人が体操服だったが。
「お待たせしました」
霜月と如月がそう言って合流する。
俺と水無月はつい目を合わせる。
霜月の私服のセンスがとても良かっただ。霜月の体型、顔、髪型、全てにマッチしていた。
霜月は普段ロングの髪をストレートに下ろしているが、なんだか、今日はアイロンでもかけている様だった。
「じゃあ、出発するか」
水無月の言葉共に俺たちは出発する。
午前中は神社や遺産を少し回る予定だ。
「ここで合ってるか?」
1つ目の神社に到着する。かなり有名な神社で他のグループの姿も見られる。みんなで賽銭をした後、年も明けたばかりなので、お守りを買った。お揃いのお守りを買うというのは初めての経験だが、悪くない。そろそろこの神社を出ようかと思っている時、Cクラス神月がいるのを見かけて、俺は話しかける。
「こんにちは。神月さん」
「あ、楓くんだ。」
「昨日はお見事だった。ぶっちぎりの1位だったな。」
もちろん、ウォークラリーの事だ。4時間台をたたき出したのは彼女のグループ以外ない。神月はかなり天才肌なのだろう。そのうちテストの順位もトップスリーにくい込んできて、猿田や綾華とライバルになるんじゃないだろうか、俺は思う。
「いやいや、私は指示しただけだよ」
「まあ、お疲れ様。また今度みんなで遊ぼう」
長くなると迷惑なので、俺はここら辺で話を切っておく。
神月は指示しただけと言っていいたが、その指示は的確でみごと最短距離を進んであのタイムを出したのだろう。恐ろしい。
ここからお昼までは、色々か名所を回って見る。
「うわ、あの髪型めっちゃいいな」
移動中水無月は突然言う。通りかかった女性がかなり好みだったらしい。
「水無月はボブってやつが好きなのか?」
俺はあまり髪に詳しくはないが、あれがボブという髪型なのは俺でも分かる。
「いや、まあ好きだけど、一番好きってわけじゃないぜ。何が合うかなんて人それぞれだからな。」
水無月が熱く語る。
「楓はないのか?好きな髪型とか」
髪型か。あまり考えたことがなかった。正直似合ってればいいと思ってしまう。強いていうなら長い方が好きかもしれない。
「ポニーテールとかは王道すぎるか?」
俺の頭の中に突然でてくる。うん。ポニーテールはいいかもしれない。
そんな会話をもちろん霜月と如月、緑岡も聞かれる。
「水無月テンション高いな」
緑岡がツッコミを入れる。
「ふふ、ですね」
霜月が少し上品に笑って緑岡を肯定する。
水無月は面白いやつだと俺は思う。最近仲が深まって嬉しい。
猿田、柊以外にも最近は水無月、霜月、緑岡など友達が増えて嬉しいものだ。
そうやって色々話しているといつの間にか午前中が過ぎようとしていた。
「そろそろ、お昼食べよっか。」
「てか、お昼決まってなくね?」
俺たちはお昼を決めるのを忘れていた。適当に近くにあった名物がある料理店に入った。とても美味かったとだけ言っておく。
午後はショッピングモールで個々好きな物を買ったり、お土産を買う予定になっている。早速俺たちは向かう。
「じゃ、俺見たいのあっちにあるから!」
ショッピングモールにつくと、水無月はすぐに自分の好きなところへ行ってしまった。先生にあまり1人になるなと言われていたのに大丈夫だろうか。もちろん、緑岡は彼女の如月と二人で行動だ。俺は自然と霜月と二人になる。
「霜月の好きな所行っていいぞ。俺も寄りたいところあったら言うから」
俺がそう言って霜月とショッピングモールを回った。俺たちの住んでいる近くのショッピングモールほど広くはないがそこそこ広くはある。だが、俺も霜月もこの日はあまり物欲が湧かず、数分でベンチに座り始める。
「なあ、座ってるのもアレだし、映画でも見ないか」
俺は提案してみる。映画館が目の前にあるのだ。果たして、林間学校で映画を見る人がいるのだろうか。でもそんなことはどうでもいいのだ。
「いいですね。何を見ましょう。」
2人で悩んだ挙句、なんか最近話題のホラー映画を見ることにした。
俺も霜月もビビりなのかめちゃめちゃビビった。
そんな俺は女子と初めて手を繋ぐことが今日になるとは思っていなかった。怖さのあまり映画を見ながら、霜月と無意識に手を繋いでいたことは誰も知らない。
手を繋いでいたことは、俺も霜月も映画が見終わると、いつの間に記憶からも消えていた。
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