137 知ってます
「なんだよ。もう言うことはねーよ。」
俺は有栖と夜に協力を貰った後、伊達との接触を試みることにした。
「気になることがあるんだ。少し答えてくれ。」
この前俺が1発拳を入れたこともあるからか伊達が少しビクビクしてる気もする。
「柊と紅の件、もちろん覚えてるよな?それについてだ。」
伊達は黙ったままこちらを見てくる。
俺はそのまま続ける。
「柊と紅は別れた。そしてその後の展開として3パターン俺の中で考えていた。」
「パターン?」
「まず、紅が本当に浮気をしていたと言う場合。そしてその相手がお前。これがパターン1としよう。」
「あと2個もあんのか?」
「パターン2としては、浮気はしてなかったが、別れた後に紅とお前が付き合ったパターン」
「そしてパターン3が紅とお前が付き合ってたけどもう今は別れたというパターンだ。」
「言いたいことは分かったが、なんで全部俺と付き合うことが確定してんだ?」
「それが前提だからだ。」
「前提?何言ってんだお前。」
「柊との会話でお前は紅の浮気相手であることを認めたと聞いたんだが、それに加えてちゃんと好きということも。」
「その通りだとしたらパターン1しかないだろ。」
「それはどうでもいい。今言った3パターンのどれかに当てはまっているか聞こう。」
「それは……」
「と、思ったんだが、聞くまでもないみたいだ。」
「は?」
「紅はお前と付き合ってないらしい。浮気もしてないと。嘘をついているのはどっちなのか教えてもらおうか。」
「それが分かったとして何があるんだ?」
「嘘をついているのはどっちなのか聞いてるんだが。」
「あーもういいや分かった。別にいいよ。嘘をつく必要なんかねえし。」
伊達はお手上げだと言わんばかりに手をバンザイする。
「俺が勝手に紅を好きなだけだ。浮気はしてないし、前も今も付き合ってない。」
「なんで柊に嘘をついたんだ?」
「それはあれだぜ、俺が紅好きだから……ついついって感じだな。」
「特に何も企んではないと?」
「ああ。だからこれくらいで勘弁してくれ。と言いたいが、本題はこれじゃなさそうだな。」
「ご名答。よく分かったじゃないか。」
「早く言ってくれ。」
「一応前も聞いた事をもう1回聞こうか。お前は誰に指示を受けてる?」
「そ、それは……」
「黄瀬川清一郎。だったりはしないのか?」
「前も言ってたよな?それ。違うぞ。」
やっぱり知らないか。
黄瀬川が嘘をついているのか。
伊達が嘘をついているのか。
二人とも別の思惑があるのか。
「ありがとう。ひとまず、お前が誰かに操られていることは確定した。」
「あ」
そう。実は今まで勝手に考察しているだけで伊達が操られていると判明してた訳ではなかった。
だが、それを前提に話をすすめることで、伊達を試せる。
そもそも操られていなかったら、そのことから否定するはずだ。
「誰に操られてるんだ?そして、お前と一緒に操られている奴は誰だ。」
「三人だ。三人。」
「三人?」
「俺を含めて三人。だからあと二人。」
「が操られていると?」
「ああ。俺が言えるのはそれだけだ。」
「言わないと殴ると言ったら?」
「言わないというか、言えない。」
「あまり違いはないように思うが。」
「あるんだよ。もう言うことはねえ。」
そう言って、伊達は去っていった。
誰が操られているのか聞きたかったが、もうこれ以上は無駄だろう。
ーーーーーーー
霜月星良
私はお姉ちゃんを部屋に呼んだ。
「星良。話って何?」
「凪の話、聞いた?」
「凪さんが?何かあったの?」
「楓くんにクラスマッチで勝負を仕掛けたみたい。」
「勝負……」
「凪が勝ったら、楓先輩と付き合うんだって。」
「………」
「聞いてる?」
「え、うん。いや、私は何もできないよ。」
「あ、うんそうじゃなくて、」
そっかーお姉ちゃん楓先輩好きなのかーそりゃそうなる。
「え?」
「その、付き合うとかは一旦置いといてさ。」
「あ、そっちじゃないんだね。」
顔を真っ赤にするお姉ちゃんはとても可愛い。
「あの、あの噂あるじゃん。お姉ちゃんのクラス。関係あったりするかな?」
「関係、、ですか?」
関係なんてないの私は知ってる。
あれは凪が勝手にやっただけ。
でも、私は聞いた。
「ない、と思うよ?」
お姉ちゃんの返答は容易に想像ができていた。
「なんで?そう思うの?」
理由を聞くのが大事。
「え、いや、なんだろう。」
少し焦るお姉ちゃん。
やっぱりおかしい。
たまに噂のことを話すとき、いつも何か知っているようなお姉ちゃん。
先輩の中で流れている噂。
別に私はがどうしようとかはない。
でも、犯人くらいは気になる。
「え~わかんないの?
「まあでも、凪さんだから、何してくるか分からないもんね。」
うん。やっぱりそうだ。
たぶん。
お姉ちゃんは何か知ってる。