131 クラスマッチ会議
次の定期試験は、早くも7月の初めに行われる。
夏休みの前に行われる期末試験と呼ぶものだ。
そして、今日明かされた情報によると、クラスマッチはその二週間後。
夏休みに入る二日前、三日前だ。なんと二日間開催らしい。
一日前は、普通に終業式。実質夏休み前日にクラスマッチがあると思っていいだろう。
夏休みもどんどん近づいてくるのか。
今年の夏休みは楽しみだ。
受験勉強は緑岡のおかげでないからな。
そう、去年緑岡父によってクラスマッチで勝利した二年Aクラスには大学の指定校推薦のようなものが確約されている。
部活も夏休みに入る前に終わるみたいだ。
県大会の上へとさらに進んでいけば、夏休みまで続く可能性もあるが、残念ながら勝つ可能性は少ない。
もちろん、諦めたわけではないが、一回戦目で戦う相手はくじ引きが悪かったのか全国レベルの相手だ。
俺たちのチームも決して弱くはないが、流石に相手が強すぎるといったところだろう。
そんなかんじで、今日の一限はクラス活動なのだが、クラスマッチについてだ。
ちょっと早い気もするが、練習とかもあるからなのだろうか。
委員長の新島が前に出て、話を始める。
クラスの今の雰囲気で大丈夫だろうか。
スクリーンに書かれている内容はこうだ。
全学年クラスマッチ
競技
男子
サッカー(11名)
バスケットボール(5名×二チーム)
どちらもトーナメント形式
女子
バレーボール(6名)
バスケットボール(5名1チーム)
どちらもトーナメント形式
男女混合選抜
ドッジボール(十二名以上)
トーナメント形式
リレー(男女二名ずつ)
3クラス×4に分かれそれぞれ一位が決勝へ進む
一人が複数の競技に出ることは可。(三つ以上は禁止とする)
リレーに出場する選手はドッジボールに出場できない。逆も然り。
人数は必ず規定された人数で行うこと。以上も以下どちらも禁止とする。
交代枠は何人でも可。
ポイント配分
サッカー、バスケ、バレー
一位 50ポイント
二位 20ポイント
三位 10ポイント
四位 5ポイント
ドッジボール
一位 70ポイント
二位 50ポイント
三位 40ポイント
四位 30ポイント
五位 20ポイント
リレー
一位 70ポイント
二位 50ポイント
三位 40ポイント
四位 30ポイント
五競技すべての合計点に期末テストのポイントを含めたポイントで順位を決める。
期末テストのポイントについては以下の通り。
※順位はクラスごとに国語、数学、英語の三教科の平均点を出し、それで用いて順位を決める。
学年別
一位 100ポイント
二位 80ポイント
三位 40ポイント
四位 20ポイント
総合(学年別のポイントに加えてさらにポイントが与えられる)
一位 30ポイント
二位 20ポイント
三位 10ポイント
と書かれている。
「は?全学年?」
そんな声などで教室中はどよめく。
その通りで、今回一番驚きなのが、全学年ということ。
それはそのままの意味で一年生から三年生まで全クラスで競い合うということなんだろう。
二日間開催な理由はこれだろう。
一歳二歳年齢が離れているのがどう響いてくるのか。
高校生なると案外変わんなかったりするのだろうか。
黄瀬川が緑岡を倒すために企画したクラスマッチだが、全学年にするとは思わなかった。
「一位ゲーじゃね?」
そんな声の通り、サッカー、バスケ、バレーは一位の配分が特に多い。
例えば、バスケは一クラスにつき二チーム作るが、戦力を分けて二位と三位を取るよりも、確実に優勝に近づける選択をしたほうがいい。
全学年ということは12チーム。バスケに関しては24チームなため、0点で終わってしまうチームも全然あるだろう。
去年は緑岡と戦う、そして推薦が貰えるということで、やる気が出たが、今回はどうしよう。
特に何もなさそうだ。
「てか、人数全然足りなくね?」
そんな声も上がり、新島が補足する。
「あ、二日間開催だから、男子バスケとサッカー、女子バスケとバレーが被ることはないよ。だから、二競技出る人は多くなりそうだね。特にこのクラスは男子が少ないからね。」
他のクラスは男子の方が基本的に多いことみたいだ。
「あと、一位のチームには○○大学以上の推薦枠が配られるみたいです。」
おっと、今年もあるのか。黄瀬川がお願いでもしたのだろうか。
俺はその推薦枠を持っているのだが、その○○大学以上というのは非常に魅力的で、去年貰った推薦枠よりも一段落上の大学だ。
でも、一人が頑張ってどうにかなるかは怪しい。
だが、恵まれたことにこのクラスは運動神経が良い奴が非常に多い。
「あ、停学とかしてないものに限るみたいです。」
はい。俺は無理と。
去年貰った推薦は恐らく使えるためそれでいいだろう。
「じゃあ、競技を決めよっか。ちょっとみんなで話し合ってみてください。」
新島がそう言い、クラスは何をやるかで話始める。
俺は隣の徳永に聞いてみる。
「徳永。バスケやるのか?」
「いや、俺は最後の試合に向けて、怪我でもしたらあれだから、やんないわ。」
「そうか。それも大事だな。」
徳永の部活に対する思いは強い。
俺はせっかくだからバスケをというかサッカーがあまり得意ではないため、交代枠かバスケになる。
「交代枠ということか?」
「ああ。俺は交代枠で試合見てるわ。人数が足りなかったら、サッカーでもやるかな。」
徳永と話していると、緑岡が俺に近づいてくる。
「楓。俺と違う方のバスケチームに入れ。」
「俺がバスケをしないと言ったら?」
「俺ともう一度戦ってくれ。」
「クラスマッチだ。クラス内で戦う必要はない。それに、クラスのことを考えれば、俺とお前が別れて二位とか三位をとるよりも二人で一位を取った方がいい。」
「いや、クラスを考えても俺とお前が別れるべきだ。一位に俺と楓が二人は贅沢だ。俺とお前が別れたとしても、一位と二位だろう。クラスにとって貢献もできるはずだ。」
「去年……いやなんでもない。」
去年、緑岡チームには本木がいた。だが、今年はいないとでも言おうと思ったが、本木は同じクラスナタメ、バスケをするといったらまた同じチームだ。
「俺は別にもうお前との勝負を望んでいないんだが。」
「そんなに調子乗ってるなら、なおさらバスケをやれ。俺がひねりつぶしてやる。」
「そうか。そんなにやる気があるならやってやっても構わない。」
やってもやらなくてもどちらでもなかったが、決めた。
今回は緑岡に勝つ。
ではなくて、緑岡を完膚なきまで潰す。
僅差の勝利はいらないということだ。
「それでいい。」
そう言って緑岡は去っていくが、俺はたまたま視界に入った黄瀬川を見てやっと重要なことに気が付く。
あれ、緑岡と黄瀬川が戦うんだよな。
クラスでバスケは二チーム。
緑岡と黄瀬川が別れるとして、そのどちらかに俺が入るわけにもいかない。
そう思い、俺は緑岡を呼び、そのことを伝える。
「え、今気づいたのか。お前。」
「え、知ってたのか。」
「当たり前だろ。お前ってそんなバカだったのか。」
「で、どうするんだ。」
「黄瀬川はAクラスとしてバスケは出場しないらしい。リレーとかドッジボールはしらないが。」
「は?どういうことだ。」
「あのバカは、生徒会チームとかいう良くわからないことをするらしい。一年生が三クラスしかないから、その埋め合わせらしい。」
「あの、それを言ったら、俺たちは生徒会チームじゃないか。」
「それがな。生徒会メンバーだけだと足りないと言って、結局黄瀬川選抜チームとなった。生徒会というのは名目上だ。」
「なるほどな。」
「恐らく後にこの黄瀬川チームのことはわかる。まだ、非公開情報だからな。そもそもまだメンバー探し中みたいだ。」
「お前、それ黄瀬川が最強チームでも作ってきたらどうするんだ。」
まあ、それをされるのが怖いなら、俺と組んでおくのがいいだろう。
「それはない。ちゃんと聞いた。ある程度運動ができるものは集めるみたいだが、さほど結果には影響しないだろう。」
「なら良かった。」
「ああ。だから大丈夫だ。」
そう言って緑岡はまた自分の席に戻る。
「じゃ、そろそろいいですかー」
新島が喋り、教室は静まる。
「やりたいところに挙手してください。」
そういって、挙手によって競技は決まった。
その後、バスケメンバーも二チームに分けて、Aクラスのメンバーは以下のようになった。
サッカー
暁瑠偉
黒庭骸
猿田紫耀
本木力
綿引真
山川ローレンス
柊雄太
西谷恵
徳永翔斗
北村蓮華
八木寿人
バスケA
緑岡林太郎
北村蓮華
伊達幸正
山川ローレンス
黒庭骸
バスケB
文月楓
柊雄太
西谷恵
水無月蒼空
八木寿人
バレー
岩下紅恋愛
神月桜
霜月有栖
花宮雀
武藤愛里
渡良瀬紫苑
女子バスケ
神月桜
如月鈴花
紅茜
矢田部琥珀
新島なのか
だ。神月がやる気があるようで、二競技でるみたいだな。
神月は推薦枠を持っていないから、本気で取ろうとしているんだろう。
選抜の方はこんな感じだ。
ドッジボール
神月桜
黒庭骸
猿田紫耀
西谷恵
柊雄太
文月楓
水無月蒼空
本木力
山川ローレンス
矢田部琥珀
綿引真
リレー
緑岡林太郎
暁瑠偉
紅茜
新島なのか
となった。
男女混合とはいえ、勝つならドッジボールが男子でいっぱいになることはしょうがないだろう。
特に女子が何人以上と書いてないため、おそらくほかのクラスも男子でいっぱいだろう。
とはいえ、やる気あって強いと噂の矢田部琥珀、あと普通に強い神月桜だけドッジボールの女子でのメンバー入りだ。
最後にクラスマッチ二日間の時間配分だけ見て一限は終わった。
1日目
9時~開会式
10時~バスケ
12時~昼休憩
1時~サッカー、バレー
3時~リレー
4時~閉会式
二日目
8時~ドッジボール
12時~昼休憩
1時~サッカー決勝
1時半~バレー決勝
2時~女子バスケ決勝
2時半~男子バスケ決勝
3時リレー決勝