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第3章 恋愛も事件も全部俺がスパイする
130/141

130 勝負

 二日間の文化祭は終わった。

 新島を始め、自画自賛にはなるが、俺たちの頑張りでなんとかなった。

 途中か協力してくれた水無月と神楽坂にも感謝だ。


 文化祭が終わり、六月を迎えた。

 早いような気もするし、長いような気もする。


 結局、三年生になって、噂が流れていることについて、進捗具合は間違いなく良いとは言えない。

 一人協力者は発見したが、それだけだ。

 でも、一つ分かったのは、間違いなく誰がが意図して流れているということ。

 そして大事なのは黄瀬川がどう絡んでくるか。だ。

 凪が言っていたことが本当なら、黄瀬川は理由もなく噂を流していると言っていた。

 そこらへんの詳しい部分を

 調べる必要がありそうだ。


 と感じている所、早速おもしろそうなことが起きるかもしれない。

 緑岡が言うには、黄瀬川に接触するらしい。しかも一対一で。

 本人が言うから本当なんだろう。


 緑岡が自ら調査するのか!と思ったが、どうやら違うらしい。

 あくまで、緑岡は呼ばれた側みたいだ。

 一応場所を聞いて行ってみることに。

 一人で行こうと思っていたのだが、神月もついてきたいと言った。

 断る理由もないので、それを許すことに。


「で、どこなの?」


 その神月が呑気に言う。


「普通に生徒会室だ。黄瀬川が誰も来ないようにしているらしい。」


「じゃあ、去年みたいに隣の教室から、ベランダだね!」


「そうかもな。」


 そうして、二人と生徒会室へ向かう。

 ドアについた小窓から、緑岡と黄瀬川がいるのを確認してから、隣の空き教室、そこからベランダへ。

 ベランダの窓の下に隠れるようにして座り、耳を澄ます。

 結構聞こえるものだ。


 こうして、去年、神月が生徒会をスパイしている所から、俺のスパイも始まったんだったんな。

 懐かしい。


「なんかいいね。思い出す。」


 神月も同じことを思っているよう。

 黄瀬川にバレたらまずいので、二人とも最小限の声で話す。



「話ってなんだ?」


 緑岡が問う。

 ちょうど話始めるところみたいだ。


「大事な話だ。」


「大事かなんてどうでもいい。」


「そうか。お前にお願いというか、提案がある。」


「早く言え。」


「次の試験。そしてクラスマッチ。俺と戦え。まあ、宣戦布告ってやつかもしれない。」


「なんでお前と戦わなければならない。勝手に俺の順位をみて競っておけ。」


「わざわざお前を呼び出したんだ。そんな簡単な話じゃない。」


「なにか賭けるのか?」


「俺が負けたら退学してやる。」


 黄瀬川が退学を宣言する。

 よほど勝つ自信があるのだろうか。


「俺に何のメリットがある。」


 そういえば、緑岡はもう僕とは言わなくなってしまったのだろうか。


「メリットとかそういう話じゃない。ただ俺は戦いたいだけなんだ。楽しみたいんだ。」


「勝利が確定している勝負なんて面白くない。」


「ほう。俺じゃ相手にならないと。」


「前からそうだ。そしてこれからも。」


「しってるよな?林太郎。俺は、お前と戦いたくて、お前に、勝ちたくて、ここに来た。それ以外どうでもいいと思ってる。だから、正直お前に勝った時点で退学してやってもいい。」


「じゃあ、なんで負けたら退学するんだ。リベンジすればいいだろう」


「だから、俺はお前に勝てる自信がやっともてた。勝てない勝負はしない。負けるようなら学校くらいやめてやる。」


 黄瀬川には相当な信念があるみたいだ。


「そうか。そんなに自信があるなら、戦ってやってもいい。別にどうせ試験をすることには変わりないんだし、結果も見えてる。」


「引き受けてくれるのか。素直に嬉しい。」


「せっかくだから、そうだな。俺も負けたら退学しようじゃないか。」


 緑岡もさらさら負ける気はなさそうだ。

 まあ、今までを見るならば間違いなく緑岡が勝つだろう。


「退学するかどうかは、お前に任せる。だが一つさらに提案だ。」


「一応聞こう。」


「退学については一旦置いておこう。」


黄瀬川は一歩前に出て、緑岡のとほぼ肩が並ぶ位置に横を見れば、緑岡の耳というあたりだろう。


「ーーーーーーーーーー」


「ちょ、え、なんて言った?」


「バレてはないよな?」


俺も神月にも聞こえず、さらにバレた可能性を考える。


すると、黄瀬川はまた距離をとり、話がまた聞こえてくる。


「どうやら凪によると俺のことを調査してるやつがいるらしいからな。」


 俺たちのことだろう。


「急になんでこんな話になるのよ。」


神月が隣で喚く。


「わからん」



「凪か。とはか教えてくれなかったのか?」


「分からないと言っていた。」


 いや、凪は知ってる。

 本当に凪は俺の味方についているのかもしれない。


「てか、その調査をされる原因。お前は分かっているのか。」


「分からないわけないだろう。お前も知ってるだろう?」


「やっぱり噂を流しているのはお前なのか?」


「んー少し違うな。だが、俺が関わってるのは本当だ。」


 少し含みのある言い方だが、これで黄瀬川が関わっているのは判明した。

 でもやはりひっかあるのは前の伊達発言。

 黄瀬川に指示されているんだろうと問いかけた時、伊達は明らかに違う反応を見せた。

 それは当てられて焦っていた反応というよりも思ってもいなかった人物に驚いている様子だった。


 となると、黄瀬川も操られている側、という可能性もあるのか。

 または伊達と黄瀬川で全く、違う噂を流している。

 言ってしまえば、別陣営ということも考えられる。

 それは厄介だからないと考えたいが。



「ああ。それで構わない。」


「試験はいつでもあるとして、クラスマッチは去年通りなら年明けだぞ。まあ、去年のあれは俺が作ったものだが。」


「だから、俺がお前と同じように開催する。試験の二週間後にでもな。」


 なんと、試験。そして、クラスマッチが控えていることが判明する。


「そうか。クラスマッチは基本的に楽しいものだからな。いいんじゃないか。それに……いや、お前に言うことではないか。」


「ふーん。そういえば、林太郎はなんで去年クラスマッチを開催したんだ?」


「戦いたいやつがいた。」


「へえ。林太郎が。それは誰だか気になるな。」


「お前に言うことはない。お前の提案を飲むから、一つ条件を頼む。」


「いいだろう。」


「クラスマッチの方だ。どうせ、昔から俺と戦っていたバスケだろ?お前としては決勝戦で俺と戦いんだろうが、それはダメだ。条件は一回戦目で戦う。」


「一番白熱する試合を一回戦なんてもったいないな。まあいいだろう。認める。」


「ありがとう。」


 恐らく、緑岡は俺との再選を望んでいるのだろう。


「じゃあ、もうこれで話は終わりだ。」


「ああ。ありがとな。林太郎。」



 クラスマッチか。

 まさか、こう早くも緑岡と戦うことになるとは。

 それに、緑岡と決勝で戦うなら、それは同じクラス同士になる。

 それは不可能ではない。去年で言えば、バスケはクラスの中で二チーム作った。

 今年もそれと同じならば、戦うことはできるだろう。

 去年通りのポイント配分なら、優勝と二位の差が明らかに大きく、二位と三位がそこまで差がなかったことから、優勝を狙えるチームを二つ作るよりも、確実に優勝できるチームを作った方がべたーではありそうだが。



 でも……



 残念ながら、緑岡も黄瀬川に思っているように、俺もあまり緑岡との戦いに興味がない。

 理由も同じだ。

 前回、勝ったのは俺だ。

 そして、次負けることは確実にない。

 緑岡が言っていたように、勝利が確定している勝負なんて面白くない。


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