129 染まる
「大変な二日間でしたね。」
「ああ。でも楽しかったな。」
もう、文化祭はあっという間に終わってしまいそうです。
でも、最後にこうして時間を神楽坂さんが作ってくれました。
「ですね。クレープは、こっちですね。」
「ああ。」
二人で、クレープ屋のクラスまで歩いて行きます。
「ていうか、この時間にクレープまだ残ってるのか?」
「まあ、微妙ですよね。なかったらしょうがないです。」
「他に行きたいところとかはあるのか?」
「他に、ですか。私あんまり何があるか見てなくて。」
「それは俺もだ。」
正直どこでもいいです。
こうして二人でいられるだけで楽しいのですから。
「ここか。」
「ですね。」
二人で中に足を運びます。
「まだ。残ってますか?」
「はい。残ってますよ。」
「じゃあ。これで。」
半額チケットを渡す。
そして半額になった料金分を財布から取り出す。
「あっれれ〜楓先輩ジャーん。」
「げ。お前のクラスだったのか。」
俺を迎えたのは黄瀬川凪。
「もうークレープ余っちゃうから、別にお金払わなくてもいいよ〜」
「本当か?」
「うん!楓先輩だから特別ーーー」
「ありがとう凪。」
普通に嬉しい。
かなりでかい。
「あれ〜お隣の美人さんは〜彼女じゃないよね?楓先輩〜私と遊ぼうよ〜」
凪はそう言って俺の腕にしがみついてくる。
「ああ。いつか遊んでやるから離してくれ。」
「やった〜じゃあ特別に隣のってえ?星良ちゃんのお姉ちゃんじゃない!?」
「あなたが凪さんでしたか。妹から話はよく聞きますよ。」
「霜月有栖先輩?キャ=さすが星良ちゃんの姉なだけあって可愛い〜系統は違うけど、こっちもあり〜」
「すいません。こいついつもこんな感じなんすか?」
凪と有栖が話している間に、俺は他の店員に凪の様子を聞いて見る。
「まあ、こんな感じっちゃこんな感じですね、、」
「そうか、大変だな。」
「でも、いい子ってみんな分かってますし、結構人気ですよ。」
「そうなのか。意外だな。」
「有栖先輩も今度遊びましょ〜クレープは無料でいいからね〜」
「あ、ありがとうございます。」
「有栖。そろそろ行こう。またな、凪。」
「え〜もう行っちゃうの〜バイバイ楓先輩と有栖先輩!」
ーーーーーー
「ふ〜ん。楓先輩は私一択だと思ってたけど、有栖先輩なら推しと推しだし。アリかも〜〜」
ーーーーー
クレープを外のベンチで食べながら、楓くんとお話しします。
「かなり美味しいですね。」
「だな。いいやつを取り寄せたみたいだな。」
とてもいい雰囲気です。
もしかしたら、私にはこれだけで十分なのかもしれません。
「有栖。」
いつも、すぐに期待して。
「もう、文化祭今年が最後だな。」
勝手に変に期待して。
すぐに諦めて。
「そうですね。悲しいです。私は二回しかできていないですし。」
応援していた神楽坂さんはもううまく行っているのに。
自分は置いて行かれて。
なんなら応援される方にになっちゃいました。
「そうだったな。俺は去年色々あったし、、、」
「そうでしたね、、、」
もしかして、私は、
楓くんと釣り合ってないでしょうか。
まあ、そうですよね。
ずっとそんな不安はありましたが。当たり前です。
私が釣り合ってないんだから仕方ないです。
でも、
そう思ってたのは、少し前の私です。
前は似たような弱い言葉ばっかり吐いてました。
でも今はちょっぴり違います。
ほんの少しだけですけどね。
好きって伝えたい。
でも、やっぱりまだ分からないんです。
何と伝えればいいのかが。
何と言っても合っているようで、間違っているようで。
そんなことばかり考える日々。
もう、気持ちはいつの間にか君に染まりきっていて。