127 神楽坂心の計画
「すまん。遅れた。」
文化祭の手伝いのため、教室に戻る。
一日目よりも、人がなんだか来ている気がする。
谷田部などが、手伝ってくれてる訳でもなく、昨日と同じように有栖、緑岡、神月、新島だけだ。
てか、やっぱ緑岡がやってるのはよく分からんし、面白いな。
「よく働いてるな。緑岡」
「黙れ楓。俺だってやりたくてやってる訳じゃない。なんなら今日は遊んでやってもいいんだが、神月がうるさいんだ。」
「神月?」
「うん。私が働かせてる。」
「この通りだ。神月がうるさい。めんどくさい。だからやってる。」
「そうか…」
緑岡も去年とかなり変わったな…
そんな雑談を軽くして、仕事に励む。
今日は忙しそうだ。
麻雀も昨日ほどはできなそうだ。
「楓くん。」
「どうした?」
仕事中神月に話しかけられる。
「あれ、どう思う?」
「あれ?」
神月の目線の先には緑岡と新島。
「あの二人かどうしたんだ?」
「なんかいい感じじゃない?」
「あー」
いや、分かる。
とてもよく分かる。
なんかよく言えないけど、分かる。
「でもな…緑岡が、恋愛はもう…なんかな。」
「まあそうね。別に応援してる訳では無い。」
緑岡の恋愛となると如月との件を思い出してダメだ。
たぶん、緑岡に恋愛は向いてない。
あれ?でも、新島なら緑岡に釣り合ってるというか、新島って優秀だよな?
もし緑岡が新島に気があって、それで手伝ってるとかだったらかなり面白いが、あまり考えたくはない。
そう、緑岡は恋愛なんかしない方がいい。
「ねえ、楓くん。ちょっと抜け出して遊び行こうよ。」
「遊びたい気持ちはあるが、今はきついだろ。」
「もーちょっとだよ。バレない程度にさ。」
「バレるだろ。どう考えても。」
「じゃあ私はトイレって言うからさ。隣のお化け屋敷にでもササッと寄ろうよ。」
「大丈夫か?」
「よし、、決まり。緑岡!ちょっと来て!」
いい感じとか言ってた癖にそれをぶち壊す神月。
そして俺の意見は聞かない神月。
「なんだ?」
「トイレ行ってくるから会計してて!」
「はあ。」
神月が出ていってから、俺もこっそりその場を離れる。
「楓。お前はどこに。」
「自販機」
「飲み物ならここにいくらでもある。」
「ちょっと後輩と遊んでくる。バスケ部の。」
「早く帰ってこいよ。」
「ああ。分かってる。クレープでも食ってあげるだけだ。」
適当に嘘を吐いた。
ーーーーーー
「って、めちゃ並んでるじゃないか。」
お化け屋敷は大行列だった。
「へへへ。」
奇妙な笑い声を上げながら神月はチケットを見せてくる。
「優待券?」
「そうよ。コネで手に入れたの。」
「そうか。なるほどな。その、コネとやらの言い方はやめてくれ。友達がいるだけだろ」
「それがコネっていうんでしょ。」
「いいから〜行くよ!」
神月とお化け屋敷に挑むのだった。
ーーーーーーー
「なんだよ。申し訳ないが全然怖くなかったな。」
特に見所はなかったためお化け屋敷中のシーンはカットだ。
「ホントね〜私も楓くんも一言も発さず終わっちゃったんだじゃない?」
まあ文化祭のお化け屋敷となればこの程度だろう。
「お前はうるかったぞ。」
「えー」
「演技ってのは分かってるからな。」
「私が場をよくしてあげたんでしょ!」
「そんなの分かってる。楽しかった。ありがとう神月。」
「え、うん。」
「そろそろ教室に戻ろう。」
ーーーーーー
教室に戻ると教室には新しく二人、手伝ってくれる者が。
水無月と神楽坂だった。
「あ、楓。すまん。昨日は手伝えなくて。」
「あ、いや、全然構わない。」
昨日水無月と神楽坂が別れてたと聞いて、色々あって水無月は神楽坂の所へ向かったのだが、その後のことは知らなかった。
この感じだとちゃんと仲直りしたとみていいのだろう。
「楓。ありがとな。」
「あ、ああ。俺は特に何もしてない。」
水無月は例の神楽坂の件について、俺が後押しした事を恐らく言っていると解釈した。
まあそれ以外ないだろう。
当たり前だが、隣で聞いている神月は話が分かっていない様子だ。
俺は水無月に近づき、水無月の耳元で話す。
「一応聞くが、仲直りしたと見ていいよな?」
「ああ。心配かけたな。」
「それは良かった。」
と、会話を交わすと直ぐに俺は水無月から離れる。
「じゃあ、お互い文化祭がんばろーな!」
「ああ。」
水無月の言葉に答えて、俺は仕事に戻った。
ーーーーーー
「なあ。蒼空〜」
俺は心と共にカフェで注文されたドリンクなどを作り、提供する仕事をしている。
「どうした。」
「さっきの楓くんとの会話。どういうことなんや?」
「ああ、あれか。んーまあ楓が相談に乗ってくれたんだ。」
「あーそういうことか。楓くんにはいつもお世話なっとるなあ。」
「ああ。ホントにな。」
「そういえば、ウチらが話すようになったのも、楓くんきっかけやったなあ。」
「そうだな。何か俺も力になりたいけどなー」
そう。俺が心に一目惚れして、楓に色々してもらったな。霜月さんも協力してくれた。
「だからな、蒼空~午後楓くん遊ばしてあげよーや。ウチら二人が入れば、抜けた穴はちゃんと埋めれるやろ?」
「まあそれはそうだが……」
「あ、蒼空。勘違いしないといてな?楓くんだけじゃないからな?」
「ん?どういうこと?」
「バカだな〜蒼空。一言で言うとあれや。」
「ほう。」
心は更に小さな声で周りに聞こえないように言う。
「楓くんと有栖ちゃん文化祭でくっつけちゃおう作戦や。」