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第3章 恋愛も事件も全部俺がスパイする
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120 忙しい文化祭

文化祭当日。


Aクラスは誰1人休むことなく当日を迎えた。

ある程度完成した教室に驚く人が数人。


「みんな。聞いてくれるかな。」


教卓の前で話すのは新島。


「シフトの事なんだけど…出来ればみんなやって欲しいな。一時間交代とかで。いいかな?」


新島はそうお願いした。

正直、誰が手伝ってくれるかは分からない。

場は沈黙した。


「わ、分かりました!」


その凍ったような場を溶かしたのは花宮雀だった。


「ありがとう。ここに紙置いておくから、シフト入る時間にチェックつけてくれるかな?」


新島はそう言って、紙とペンを置いた。

そこに、花宮は彼氏の徳永と向かった。


「行きましょ。楓くん。」


隣にいる有栖がそう言い、二人で向かった。

他にも何人か集まる。

神月、緑岡はもちろん、猿田や柊など、他にも何人かシフトに入ってくれるようだ。

それでも、シフトをしない者もいるようだが。


「委員長。俺は生徒会の仕事があるから、申し訳ないね。」


黄瀬川だ。


「あ、うん。それは大丈夫だよ。頑張ってね。」


時間はどんどん文化祭開始に近づいていく。

やがて、時計は開始時刻の九時に針を向けた。


それと同時に半分以上のクラスメイトが教室を出ていった。


「私はとりあえず落ち着くまでここにいようと思います。」


有栖が俺に向かって言った。


「俺もそうしよう。」


「楓くんと、霜月さんは麻雀の接客するよね?私会計するわ。」


神月はそう言って会計の所に座った。


「ありがとう。助かる。」


新島はそう言う。


「楓。」


俺の肩を後ろから掴む緑岡。


「なんだ?」


「やるぞ。麻雀。」


「望むところだ。」


振り向かないまま俺は言う。

卓は三台あるし、人もまだ来なそうだし、1試合くらい出来そうだ。


「有栖。」


「もちろんです。」


あと一人は……


「新島。やるか?」


「いいかな?」


新島は笑顔で答えた。


そうして、四人での麻雀が始まる。

自動の雀卓なんて高価なのものはないので、手で牌を詰む。


試合が始まって驚いたのは有栖の所作だった。

前よりも遥かに綺麗になっていた。

プロの対局を見るのにハマっているそうなので、その影響もあるのだろうか。


淡々と牌を切っていく緑岡。

リアル麻雀はあまりしたことがないのかなんだかおぼついた様子の新島。


試合をしていく内に、ここにいる四人はある程度実力があると、感じた。


攻める時は攻めて、守る時は守る。

ある程度麻雀ができるやつって感じのシンプルな打ち方だったのが新島。


有栖は攻撃重視の麻雀。

そして、緑岡は守備重視だった。

本当に硬い守備で、緑岡は最初に取った得点を今まで死守している。


試合が終わり、結果は一位が俺、二位が緑岡、三位が有栖、四位が新島となったが、運要素が強い麻雀では、一試合やったくらいじゃ実力差が出にくいし、

また試合をしたいところだ。


俺は席を離れ、神月に言いたいことがあったのを思い出して、神月の元へ向かった。


「どうだ?」


「カフェはそこそこ来てるよ。麻雀はまあ、少ないね。」


「まあそうだろうな。カフェがメインだしいいだろう。」


「まあそうだね。」


「神月。あのことだが……」


「ああ。会うんだっけ?」


「ああ。」


「一人?私も行くよ?」


「いや、俺だけで行く。」


「ちょ、大丈夫?やめてよね暴力とか。」


「保証はできない。」


「楓くん…」


「俺もただじっとしてる訳にはいかない。」


「そっか…まあ任せるよ。」


「ああ。」


時刻は12時を回り、昼となった。



ーーーー


お昼過ぎ。


なんだか、水無月が元気なさそうに座っているのを見つけて、声をかけた。


「どうしたんだ。そんなに疲れた顔して。まあそりゃ疲れたか、文化祭だもんな。」


ちょっとふざけたことを言ってみたが、水無月は表情変えなかった。


「お前、どうした?元気ないぞ。」


「別れた。心と。」


「は?お前、別れた?ほんとか?」


さすがに急すぎた。


「ああ。ほんとだ。」


「なんでだ?」


「価値観の違いってやつだな?」


でた。価値観の違い。

俺は価値観の違いというのが嫌いだ。


「もう、好きじゃないのか?」


「好きだよ!」


「じゃあ……」


「価値観の違いなんだって!」


声を荒らげる水無月。


「水無月。お前に何があったかは知らない。ただ、友達として、少し言わせてくれ。」


水無月は黙ったままだった。


「価値観の違いって、よく言うよな。でも俺はそんな言葉言い訳にしか聞こえない。」


水無月は下を向いたままだ。


「価値観が違うなんて、当たり前なんじゃないのか?」


「確かに、全員が違うとは言わない。でも、価値観が全く一緒の人なんかいるわけないし、ある程度相手の価値観を尊重していくものだと俺は思う。」


「もちろん、価値観が違いすぎることだってある。その時はその時で別れるなりすればいい。でも、お前と神楽坂にそこまで価値観の違いがあるのか?」


「相手の価値観が違うと思ったなら言ってみればいい。一度は喧嘩になるかもしれない。でも、そんな一度の喧嘩で別れる位の関係なのか?その一つ価値観の違いだけで別れるほどなのか?」


「そのくらい、お互い支え合って行こうと、お前は思わないか?」


俺の言ってることが合っているかは知らない。

俺の自論に過ぎない。


「まあ、俺が言えることではないか。すまん。忘れてくれ。」


そう言うと、水無月は始めて顔を上げた。


「すまん。俺、行ってくるわ。」


水無月はそのまま立ち上がり、どこかへ駆けていった。

きっと、その先にいるのは、神楽坂心なのだろう。

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