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序章 人の恋路をスパイするらしい
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第十二話 林間学校

林間学校当日。


Bクラスは誰一人休まず集まれたようだ。


「じゃあバス乗れー」


先生が言い、バスに乗り始める。適当に座り、隣には柊が座る。

林間学校のことで盛り上がる者もいれば、寝ている人もいた。

俺は柊と後ろの猿田と麻雀をしていた。この頃、本当に中毒になっているのだ。

途中、バスで早めにお弁当を食べさせられた。

二時間ほどで到着すると、早速ウォークラリーが始まる。

班ごとで集まると先生が諸注意など話し始める。

そして、班ごとにマップが配布される。

俺の班からは代表して水無月が預かる。


「じゃあ開始するぞー。よーい始め!」


先生の合図で皆一斉に動き出す。

お昼をまたいで、5.6時間かかるくらいの設定らしい。

だからバスで弁当を食べさせられたのか。

かなり疲れることになりそうだ。

水無月を先頭に一つ目のチェックポイントに向かう。最初はコンビニだろうか、森に入るのはまだ先のようだ。


「霜月は運動できるのか?」


俺は聞いてみる。


「まぁそこそこはできますよ。でも今日は流石にキツそうですね。楓くんはバスケ部だから余裕ですか?」


「そんなことはない。俺体力ないし。」


実際俺は体力がない。走るのが嫌いだからバスケでもよくバレないようにサボる。試合中、手を抜くタイミングなどもチーム内で1番上手い自信があるなんてダサいことを言うのはやめておき、心の中にしまっておく。

緑岡、如月は文武両道で、勉強も運動もこなすから安心だ。かなり心強い班だ。

水無月も得意とは言えないが、問題ない程度には動けるはずだ。


一つ目のチェックポイントにはあっさりつく。


「水分、それから補食とか色々買っておこうか」


緑岡がそう言い、スタンプを押した後に、コンビニで買い物を済ませる。俺は、500mLのペットボトルを三本、カロリーメイトを一箱買った。だいたいみんな似たような感じだろう。ペットボトルは持ちすぎると荷物になるが、念の為三本は買っておいた。


「二つ目のチェックポイントは、、、」


水無月がマップを見ていると、他の班の人と接触する。


「あれ、楓くんじゃない?」


この前綾華たちと遊んだ時に一緒にいたCクラスの神月桜の班だ。


「一緒のルートだったりするか?」


マップを照らし合わせてみるが、二つ目以降が違うようだ。

全く同じルートの班は中々いないのかももしれない。


「じゃあ、お互い頑張ろうね」


神月はそう言って、長話をする時間もないので別々の道を進む。


歩いている途中、一年D組の班も見つける。

中にはバスケ部マネージャー新田の姿がある。新田は静かな印象だったが、今見ている新田はかなり明るく、なんなら騒いでいるように見える。夜と朝日先輩、それから久保の件を新田に話してみても面白いかもしれないな。


「もう疲れたよ〜」


如月が言う。


「ちょっと早くないか鈴花」


緑岡が答える。

カップルで同じ班は楽しそうだ。


「あんまりイチャつくなよ!」


水無月が言う。


そうして、30分ほどかけて二つ目のチェックポイントにつく。そこには綾華、本木、武藤の班がいた。他の二人は残念ながら知らない。


「楓!」


綾華も本木も俺の名前を呼び走って近づいてくる。武藤もゆっくりだがこちらに近づいてくる。


「ルート一緒か?楓」


本木が嬉しそうに言う。


「水無月。マップ貸してくれ」


俺は水無月から受け取ったマップと綾華が持っていたマップを照らし合わせる。やはり、さっきと同様全て一致している訳ではなさそうだ。


「なんだよ〜一緒に行けると思ったのに〜」


本木は本当に俺と行きたかったみたいだ。


「じゃあ楓また後でね!」


綾華が言う。


「俺たちが勝つからな!」


本木がそう言って俺たちは別々のチェックポイントに向かった。


「楓くん。さっきの人は誰でしょう」


「本木たち。面白いやつだろう」


「もう一人の女子とはどういう関係ですか?」


「あいつとは幼馴染でな。昔から仲が良いんだ。」


「ふうん。そうですか。」


「どうかしたか?」


「なんでもないです」


急にどうしたのだろうか。


その後、俺たちは順調に三つ目のチェックポイントに到達し、四つ目のチェックポイント向かった。

水を三本買っていたのは正解だったようで早くも一本目は飲み終わってしまった。


「そろそろ森に入るぞ。」


ついに森に入る時が来たらしい。恐らくここが1番危険だろう。夏に蒸し暑い中、探検するよりはマシだろうか。


「ここからだな」


水無月がそう言う。

ウォークラリーの半分ほどの時間森で過ごすらしく、かなり辛いことが予想される。


森に入ると周りにも他の班がいるようだ。


「まずい。迷った」


水無月がそう言う。

迷うのも無理ない。どこを見ても同じ景色だ。


「マップを見ても辿り着かなそうだな」


そうして、自分たちだけで森を進む。

疲れてきた所で、水無月が急に話し始める。


「なあ、緑岡と如月ってどっちが先に告白したんだ?」


突然の質問にみんな驚く。


「どっちでもいいだろ」


「いーやだめだ。なんなら、俺と楓に教えて欲しいよ。彼女の作り方をね。」


「きっとすぐできるさ」


緑岡はそう言ってくれるがそうだろうか。


「そんなこと言って、水無月は好きな人でもいるのか?」


緑岡が問いかける。


「いや、いねーよ」


「じゃあそこからじゃねーか」


「そういうもんなのか?」


水無月は何故か俺を見てくる。分かるわけないだろう。


「じゃあ楓は好きな人いるのか?」


緑岡が俺に話を振ってくる。


「好きな人か。分からないな」


「分からないってなんだよ。誤魔化すつもりか?」


水無月はそう言うが、本当に分からない。


「いないのかもな」


俺はそう言っておいた。


「じゃあ、霜月さんは?」


水無月が言う。


「え、えぇ私ですか」


突然呼ばれて霜月は驚く。


「えーと、、」


その時、俺は異変に気づく。


「待って。如月いなくねえか」


「そんなはず……」


緑岡が焦ったようにそう言うが、如月の姿はない。恋愛の話になってから、緑岡もつい夢中になって目を離してしまったのだろうか。


すると、緑岡は如月を探しに走り出す。


「ちょっと勝手に行くな馬鹿!」


水無月も追いかける。

確か緑岡はクラスで1番足が早いが水無月は追いつけるのだろうか。


「楓くん?」


まずい。俺は何を考えているのだろう。俺が置いていかれてしまう。


「俺たちも行くか」


そう言って、追いかけるが、非常に走るのは危険だ。


「これ、危ないな。霜月気をつけろ。」


「いえ、私は大丈夫で、わぁ!」


霜月が段差に引っかかり転倒しそうになるが、何とか手で受け止める。


「やっぱりゆっくり行こう。大丈夫か?霜月」


「ご、ごめんなさい。大丈夫です。」


霜月の顔は真っ赤だ。


「私のせいで水無月くんたちを見失ってしまいました」


「大丈夫だ。どうせ追いつけなかった。」


ここからどうしよう。合流するのもかなり難しそうだ。スマホは使えるがかなりちょうどここは電波が悪く連絡も取

れそうにない。後で「電波が繋がり次第森を抜けた先で合流しよう」と連絡するのが無難だろうか。


「霜月?足挫いたか?」


「少し痛めてしまいました。でもすぐ治りそうです。気にしないでください」


「座れ。」


シートを敷いて霜月を座らせる。

休憩用にシートを持ってきてちょうど良かった。班に一つ救急バッグが配布されたのだが、ちょうど俺が持ってたため、軽く包帯を巻けそうだ。


「包帯だけでも巻いて足首を固定しておこう。」


いや待て。俺は霜月の足を触ってしまうことに気がつく。少し戸惑っていると、霜月は言う。


「足を触られるくらい平気ですよ。」


俺が考えていることを見透かすかのように霜月は言う。


「嫌だったら言ってくれ。」


そう言って軽く包帯を巻く。


「ありがとうございます」


「少し休憩しよう。行き先も分からないし。」


少し霜月と座って休憩した。


「水はまだあるか?」


「まだありますよ」


「なくなったら、まだ1本あるからな。」


「ありがとうございます。でも気にせず飲んでくださって大丈夫です。」


すると、柊たちの班が通りかかる。


「何してんのお前ら」


「緑岡たちとハグれた」


「まじかよ。大丈夫か」


「大丈夫だ。気にせず進んでくれ」


俺は言うと、柊の後ろから猿田が歩いてくる。


「楓、水、、ないか」


「見通しが悪いなぁ、はいよ」


「マジでありがとう。助かったよ楓。死ぬかと思った。」


そう言って柊の班は先に進んだ。


「楓くんがいなかったら猿田くんはホント死んでたかも知れませんね」


霜月の冗談に思わず笑う。



「そろそろ俺たちも行くか」


「そうですね。私ももう歩けそうです」


そして、俺たちは歩き始めた。

柊たちについて行った方が良かったかもしれないと思ったが、こうして霜月と二人でいるのも結構楽しい。猿田に譲った分水を節約しないといけないな。


「辛くなったらすぐにいってくれ。」


「はい、ありがとうございます。」


そうして、二人で薄暗い森の中を歩いた。





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