106 嘘
「黄瀬川。」
「りん…緑岡。どうした。」
生徒会室。緑岡は黄瀬川に話しかける。
折れや神月はそれを何事もないように気にせず仕事を進める。フリをして、もちろん盗み聞きをする。
まず、俺が緑岡に指示をだしたことだ。
「校則なんで変えたんだ。」
これが知りたかった。
「なんでもいいだろう。」
「お前にメリットがないだろう。」
「別に、俺は何となくやっただけだ。やりすぎたことも自覚している。」
「学校が終わるぞ。みんな不満を抱いてる。教師はお前に従わなければならない。お前は何がしたいんだ。」
「俺は、別にこの学校を終わらしたいんじゃない。」
俺には伝わった。
黄瀬川が何を言いたいのか。
でも、きっとそれを口にすることはない。
黄瀬川は緑岡を超えたくて、去年よりも完璧な学校を作りたくて、でも、黄瀬川がしたことは正しいかと言われて絶対にイエスと言えるかどうかわからない。
「ちょっとまって。」
ここで急に話に乱入してくるものが現れる。
生徒会の一員。凪だ。
「凪…」
「あの、しょうもないんだけど、理由ないならさっさと校則もどしてくんない?生徒会役員が校則破るなんてできないからさ。早くしてよね。」
凪が放つ言葉は生徒会長に向けられる言葉とは思えないような上からの言葉だった。
そうか。凪からしたらいとこだもんな。
いや、そんなことないか。俺と話すときも凪は上から話してくる。
「ちっ。やっぱお前には勝てねえな…」
小さい声でつぶやく黄瀬川。
黄瀬川、緑岡、凪の関係を知るものでないとその意味は分からないだろう。
「わーたよ。校則は戻す。ただな…一つやりたいことがあるんだ。」
「やりたいこと?変なことしないでよね。」
凪がすぐさま黄瀬川に返答する。
「ああ。お前には迷惑をかけることはないから安心しろ。俺は崩壊という言葉に憧れを抱いている。」
黄瀬川の言うことの意味は分からない。
でも、学校を崩壊させたいわけではないと言っていた。
じゃあ何を崩壊させるのか。
でも、なんだか近いうちにその意味が分かる気がした。
それは何だか、嫌な予感であることは間違いなかった。
「凪。ちょっと聞いてくれるか。」
「聞かせて聞かせて~。」
そういって凪だけに教える黄瀬川。
おそらく、凪にしか教えられないのだろう。
緑岡じゃきっとダメなのだ。
「面白!それはいつやるの?」
計画を聞いた黄瀬川の質問。
「まあ、ぼちぼちだ。」
それが実行されるのは近い。
なんだか、また俺の出番な気がする。
いや、俺じゃないとできない気がする。
いや、それも違う。
俺と神月と緑岡。あとはワンちゃん有栖。
あとはあいつ……
いや、もうあいつのことは忘れないとな。
ーーーーーー
霜月有栖は、岩下紅恋愛に話しかける。
「そうだ。岩下さん。ちょっとお話があります。」
「有栖ちゃん。どうした?」
「あの、暁くん…脈ありかもです。」
岩下さんの喜ぶ顔が見れる。そう思っていました。
でも、表情は変わりませんでした。
「そっか。有栖ちゃん。謝りたいことがあるの。」
「え。」
なんでしょう。
岩下さんの雰囲気が変わるのが分かります。
「私、暁くん好きじゃないの…」