表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
  作者:
第二章 どうやら俺のスパイ行動は人の恋路をスパイするだけではなかったらしい。
100/141

No.100 エピソード00


いつ頃だろうか。


小学生の時の記憶だ。


別にいつだっていいだろうか。


その時の文月楓は恋をしていた。


名前までは、思い出すことはなかった。


そんなものは重要ではないし、これからの文月楓の人生に関わることは一切ないだろう。


なぜなら、彼女はーーーーーーーーーーのだから。



楓は、とある女の子に恋をした。


幼い楓に付き合うなどの言葉は考えてもなかったが、やはり、両想いになりたい。みたいな気持ちがあったのだろう。


その女の子には、仲の良いの男の子がいた。


名は確か、八雲影太(やくもえいた)


文月楓は、小学生なりに考えて、その二人は両思いなのだと考えたのだ。


実際、そのような雰囲気であり、噂もあった。


でも、知能がない小学生は、好きな人に対して何をするかわからない。


例えば、好きな子をからかう男子がいるように。


楓は、二人を追いかけたのだ。


こっそり近づいて。


まるでそれは、スパイかのように。


それに、女の子は気づいていたのだ。


やがて、女の子は楓に話しかけた。


「楓くん。悩みごと、聞いてくれる?」


「うん!いいよ。」


今では考えられないほど元気な文月楓だった。

もしかしたら、恋の感情以外にも、文月楓は封印してしまったのかもしれない。

それが、今の文月楓のテンションがどこか低い感じがする理由なのかもしれない。


「私ね、影太くんのことが好きなの!」


それは、その仲の良い男の子の名前だった。


分かっていたが、幼い楓、そして初恋をした楓にはすごく辛かっただろう。


「そうなんだ!」


だらだらと会話をした。


結局、女の子は、影太くんの好きな人を聞いて欲しいということだった。


楓は、女の子のために、影太と仲良くなろうとした。


そこそこ仲良くなった。


だが、やはり、自分の好きな人の好きな人というのは辛かった。


楓は、影太に好きな人を聞こうとしたが、聞けなかった。


好きな女の子の名前がでるのが怖かったから。


でも、頑張った。


好きなタイプを聞いたり、少しでも貢献しようとした。


そうして、好きな女の子にそれを教える。


その瞬間だけのために、楓は影太と仲良くした。


まるでそれはスパイだった。


やがて、楓はもう両想いになることを諦めていたのだ。


好きな女の子と話すだけで十分だった。


だから、しばらくスパイを続けた。


それでも、楓が影太に好きな人を聞くことはなかった。


でも、女の子が怒ることはなかった。


楓もだんだん女の子に興味はなくなっていき、影太に好きな人を聞こうとした。


でも、そんな時に、女の子は思ってもいなかったことを言った。


「ずっと騙しててごめんね。私本当は楓くんが好きなの。」


楓の心に半分怒りのような感情が湧いてきた。

でも、それを抑えた。


楓が女の子と近づくためにスパイをしたように、女の子も楓と近づくために、影太が好きという嘘で、楓に近づいたのだった。


でも、まだ幼い楓は怒りよりも段々と嬉しさが勝っていった。


やがて、楓とその女の子はもう恋人のようになっていた。


影太だが、もちろんその女の子が好きだった。


影太は怒った。


好きな人を盗った楓に。


楓は最初はなんとも思っていなかったが、この頃影太のことを本当に親友だと思っていた。


そんな親友からの怒り。


親友はやがて絶交を宣言した。


「もう、お前とは話したくない。」


楓は考えた。


女の子を振ることを。


そうすれば、丸く収まるのではないか。と。


そして、その女の子が影太を好きになれば、悪いことはないのではないかと。


そうして、楓は女の子に言った。


「ーーちゃんのこと好きじゃない」


それだけ言った。


嘘の言葉を吐くのは辛かった


何を言えばいいか分からなかった。


女の子は泣いた。


ずっと泣いていた。


やがて影太がやってきた。


そうして、楓に拳を向けた。


楓は動けなかった。


何も出来なかった。


ただただ、殴られ続けた。


女の子はそれを見てさらに泣いた。


この場に幸せな者は一人もいなかった。


やがて、女の子の友達や、影太の友達が集まってきて、大喧嘩が始まってしまった。


ついに、キレたのは、楓だった。


なんで俺が悪いんだと。


喧嘩はやまない。


何も考えない小学生たちはただ殴る。


そして、暴言を吐く。


「いじめ者が!」


「女子を泣かせたやつが!」


そんな言葉。


「バカ!」


「カス!」


「死ね!」


そんな言葉まで飛び交う。


その言葉は一つ一つ楓に深く刻まれた。


やがて、楓も泣いた。


しかし、楓よりも深い傷を負ったのは女の子だった。


「やめてーーー!!!!!!」


やがて泣きながら女の子は叫んだ。


「やめて!やめてやめて!楓くんをいじめないで!!」


「お願いだから!」


でも、その声は誰にも届かなかった。


女の子は全部自分が悪いと、そう思ったのだろう。


女の子は駆け出した。


そうして、ベランダから飛び下りた。


その瞬間、さっきまで大喧嘩を繰り広げていた戦場は一瞬にして凍った。




そこで、文月楓の記憶は途絶えている。


そう、文月楓が好きで、文月楓を好きだったーー。


この女の子ーーーーーは、もうこの世にはいない。


小学生の楓、いや、小学生じゃないとしても、トラウマとなる事件だった。


楓は自分が悪いと自覚していた。


だが、この話は一概に楓が悪いとは言えない。


女の子にだって悪い部分はあった。


影太だって、悪い部分はある。


でも、楓は自分が悪いとしか考えなかった。


その後、楓がその学校に姿を見せることはなかった。


楓は長く苦しんだ。


苦しんで、泣いて、吐いて。


そんな日が続いた。


やがて、もう感情がなくなりかけた。


そうして、文月楓は、あの時の記憶と、恋の感情を、心の奥深くに封印し、それが解けないよう、思い当たる節を全て封印した。


その時使っていた筆箱だったり、ゲームだったり、全てを封印した。


影太まで。


そして、転校した。


これが、文月楓の初恋の記憶であり、絶対に思い出してはならない記憶だった。



エピソード00 文月楓という男(後編)









2年生編。そしてエピソード0ご愛読ありがとうこざいました。

もちろん、3年生編をやらせて頂きます。

ぜひ、見ていただけると幸いです。

3年生編の構成のためにしばらく投稿はしません。

1ヶ月もしない内に帰ってくると思いますが。

3年生編が始まるまで完結とさせていただきます。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ