第十話 柊雄太という男
柊雄太。
俺は、彼女に飢えている。
女子と関わりがない訳ではないのだが、今まで彼女ができたことはない。
中学校までに作りたかったが、そんな夢は叶わず高校に入った。
最初は心配だったが、高校生活は楽しい。
友達にも恵まれたようだ。紫耀や楓、それから水無月、緑岡。
そして、茜。
茜とは女子との中でも仲が良い方だ。
茜とは話してて楽しいし、これからも仲良くしたいと思う。
ほかの女子より大切にしたいと思っている。この気持ちは恋心なのだろうか。
高校に入って初めての友達。今思い返すと、楓でも紫耀でもなく、茜だったのかもしれない。
冬休みももうすぐ終わる頃、俺は一人で茜との思い出に浸っていた。
高校生活初日。
俺は早めに教室に着いた。
既に何人かいたが、もちろん誰も分からない。
自分の席を確認し、そこに行くと、隣にもう座っている人がいた。
まさかの女子に俺は驚く。
目が合うと、俺は軽くお辞儀をして席に着く。
男子だったら話しかけれたかもしれないが、女子で緊張してしまった。
話しかけてみるか迷っているが、隣の女子は迷いもなく話しかけてくれる。
「紅茜っていいます!よろしくね。」
そういう彼女の目は優しく、俺はきっと良い人なんだろうと、一目見ただけで思った。
「柊雄太っす。よろしく。」
ちょっと無愛想に言ってしまっただろうか。自分には分からないが、彼女は顔色を変えず、話してくる。
「中学校どこだったの?」
「何部だったの?」
とてもコミュニュケーション能力が高いようで彼女は答えやすい質問を沢山してくる。
俺が質問を答えるばっかになる訳でもなく、彼女は自分のことも話しながら、質問を投げかける。
とても話しやすく、楽しいと感じた。
少し沈黙したため、俺が話してみる。
「紅さんは何部に入ろうとか考えてるの?」
俺の質問に彼女はこう言った。
「茜でいいよ」
そのまま俺は茜と少しずつ仲も深まっていった。
俺は茜のことを花火大会に誘う。
そしてクリスマスのイルミネーションにも誘うのだった。
夏の終わり。俺は茜、紫耀、鴨志田と花火大会に来ていた。
本当は二人で来たかったのだが、恥ずかしくなってしまい、猿田を巻き込んだ。
どうせなら楓も誘いたかったが、
「男と花火を見て何が面白いんだ」
などと言ってあいつは来なかった。
「柊。ちょっとあれ買ってくるわ。」
そう言って紫耀と鴨志田は何か買いに行ってしまった。俺も行くよなんて言っても良かったが、二人きりのチャンスを逃すことはしなかった。
「茜、欲しいものあったら言えよ」
「ううん。、大丈夫」
すると、花火は始まるのだった。
「わぁめっちゃ綺麗」
茜は花火に夢中になっていた。
「でかいのくる!」
何個か打ち上がったあと、大きい花火が打ち上がりそうになっていた。
その花火は大きな音を立てながら綺麗に咲く。
隣に茜がいるのを考えると、集中できない。
少しづつ心拍数が上がるのを感じた。
綺麗な花火に見惚れながらも、自分の心臓の音に邪魔され、花火の音は聞こえなかった。
クリスマス。
俺はついに茜と二人で遊ぶことになった。
今回は勇気をだして、二人で行こうと誘った。
そして今、イルミネーションに来ている。
かなり混んでいて、目を離すとはぐれてしまいそうだ。
「俺から離れるなよ」なんてかっこいい言葉を言いながら茜の手を握ってみたいものだ。
でもそんな勇気は俺にはない。
だが、茜は俺の腕を掴んでくる。
「ごめん、ちょっと怖いかも」
茜ははぐれるのを恐れてそう言う。そんな思いをさせてしまい俺は自分を責める。
そして、俺は茜の手を取った。何も言うことは出来なかったが、茜は安心した顔をして、
「ありがとう」
と言った。
初めて女子と手を繋いだことに心が高ぶる俺は、その日手を繋いだ後のことを何も覚えていない。
ーーーーー
「茜、お土産買ってきたぞ」
「ホントに買ってきてくれたの?ありがと。」
冬休みが明け、俺はお土産を渡した。もうこの時には決心出来ていた。
「なあ、今日の放課後、校舎裏来れるか」
「いいよ」
茜は言ってくれる。
俺の言葉は茜からしたら告白される以外思いつかないだろう。
でも俺は心に決めたのだ。
茜と一緒にいたい。
そう思った。
その日は放課後になるまで茜と話すことはなかった。
「好きです。付き合ってください」
俺はシンプルにそう伝え、俺は顔を下に向ける。そして手を差し出す。
そして、茜はこう言った。
「ありがとう。でもごめん。雄太がそんなこと思ってるだなんて私考えてなかった。」
失敗だった。
何がダメだったのか。
茜とは仲良くなりすぎたのだろうか。
やはり花火大会の時に少しでもアピールするべきだった。
その時だったら茜は俺の気持ちに答えくれたのかもしれない。
もしかしたら俺は茜のことを待たせすぎたのかもしれない。
一人で茜との思い出を振り返り、反省する。
自然と涙が溢れてくる。
下を向いている俺の頭は上がらなかった。
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「こんにちは。朝日先輩」
「久しぶり。楓」
吹雪先輩と話してから、俺はずっと考えた。
このままじゃ何も分からないと思った俺は朝日先輩に直接聞いてみるという考えが出る。
吹雪先輩に相談してみると、
「面白いじゃない。朝日はなんて言うだろうね」
と言われた。そうして、俺は朝日先輩を呼んだ。
夜と付き合ってるんですか?なんて質問をしても、分かりきった回答が帰ってくるだけだ。
俺は1番気になっていることを聞く。
「夜と久保はどういう関係ですか?」
「なんで久保が出てくる」
「この前見かけました。少し気になることも耳にしました」
「なるほどな。なんて言ってた」
「合宿の件でもう隠しようがないね。と」
「楓はどう考えているんだ」
意外な返しに戸惑うが、勇気を出して俺は言う。
「朝日先輩と夜が付き合ってることを久保がバスケ部にバレないようにしているんじゃないですか」
「面白い。だが残念ながら教えられないなぁ。俺は言ってもいいが、夜と久保がなんて言うか、分からねえ。俺と夜が付き合ってるだけは認めてもいい」
「じゃあ、狸は?」
「狸?お前、
「楓。なんで俺が夜と付き合うことになったか分かるか」
「狸?お前、どこまで知ってるんだ?」
唐突な意味深発言に困惑する俺。
「まあ落ち着け。一つだけ教えてやる。俺と夜が付き合ったこと。そして久保について。どちらも始まりは一人の人物から始まった」
まさかそれが?
「始まりは狸だ。」
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