第一話 見つけてはいけない恋
この学校は学力も高く、校舎も綺麗で、進学実績も高い。
非常に魅力的な学校だった。
それができていたのは、数多くの大企業がスポンサーのようなものとして学校についているから。
有名どころで言えば、神月財閥や、緑岡財閥だろう。
他にも、たくさんあるが、そのようなスポンサーには学校側も逆らえない。
だから、この学校には数多くの裏口入学などが発生するし、スポンサーが無理な依頼をすると、この学校は受け入れることしかできない。
そんな中、最近発生していたのが、そんなスポンサーに所属する者たちの息子や娘が裏口入学の後、そして生徒会長になる。
そうして生徒会長になったものは、学校で好き放題する。
スポンサーの子供には、学校は逆らえないみたいだ。
前年度なんて、退学者も多く出た。
でも、この学校はそんな悪いところを隠す。
だから、毎年多くの入学希望者が絶えない。
今年は幸運にも、生徒会長がスポンサーの息子ではあるものの、特に好き放題してはいない。
退学者も未だゼロだし、特に大きな問題も出ていない。
今年は大人しくしている生徒会も、いつ暴れるかわからない。
これ以上スポンサーに侵食されるのはまずい。
そう思い、生徒会をスパイする者がいた。
***
最近いつも一緒に帰る先輩が早く帰ってしまう。
この頃二週間くらいだろうか、俺の尊敬する朝日先輩は今日もひっそりと1人で部室から出ていく。
正直なところ、俺はあまり気にしてなかったが、先程気になる話を聞いた
「バスケ部の朝日先輩とマネージャーが付き合ってるって本当?」
他のクラスで幼馴染である綾華が聞いてきた。
綾華とは中学以降クラスも離れあまり話していなかったが、久しぶりに話をした。
突然告げられた内容に俺は動揺する。
何も知らない俺は綾華に色々聞いた所、最近目撃情報が出ているようだ。
同じ部活の俺なら知ってると思い聞いたのだろう。
残念ながら俺は何も知らなかった。
そして今、それについて部活の友達の青井 狸と駒井先輩3人で話し合っているところだ。
そもそも、人の恋愛に首を突っ込むのは違うだろう。
しかし、朝日先輩が付き合ってるという噂の神無月夜は俺達バスケ部のマネージャーの1人だ。
つまりバスケ部内でのカップルが誕生したことになる。
部活内での恋愛は何となく良くない印象がある人もいるだろう。
この部活でもあまり恋愛は良くないという風潮があった。
去年引退した先輩も色々問題になったと聞いたこともある。
そんな中、噂になっているこの話題を夢中になって話す。
「正直、部活内の恋愛ってなくね?」
狸は言う。
「そう思われるから朝日も隠れて付き合ってるんだろうな」
続いて駒井先輩は言う。
「朝日先輩と夜が最近早く帰ってるのはどこかで合流してるってことだよね?」
駒井先輩の質問に俺と狸は頷く。
とりあえず、今の情報だけでは何も分からずこの日は終わった。
しばらく何日の間、特にこのことについて進展はなかったが、噂はかなり広まって来ているようだ。
綾華に話を聞いてから何日か経った。
俺は駒井先輩と狸とカフェで勉強していた。
期末テストが来てしまうのだ。
この日は寒く俺はホットミルクティーを頼む。だいぶ大人の味がする。
狸の口には合わなかったようだ。
俺たち三人は時々雑談をしながら、勉強をする。
「付き合ってるとしても朝日先輩と夜って喋るとこ全然見なくね?いつから付き合ってんだろ」
狸は言う。
最近はやはりこの話だ。
この噂はバスケ部全員知ってるわけではないが、俺たち三人以外にも知ってる人は少しいるみたいだ。
夜以外の三人のマネージャーも知ってるらしい。
いつも思うが、マネージャー四人は多い気がする。
「待って!あれ朝日じゃね?」
駒井先輩は突然声を上げる。
顔を上げると、確かに窓越しに朝日先輩が通りかかるのが見える。そして横には夜の姿もある。
「今、夜もいたよね?」
俺の発言に二人は頷く。
「これってやっぱあの噂本当ってことだよね」
狸は言う。
噂がある中これを見てしまうとそうだとしか思えない。
なんで朝日先輩と夜なんだと意外な組み合わせなので、狸と駒井先輩もそう思ってるはずだ。
なんなら夜は狸といい感じなのではないかと思っていた。
狸はマネージャーみんなとかなり仲が良く、狸はマネージャー全員を狙ってるのではないかと時々思ってしまう。
特に狸と夜の組み合わせは俺の中で勝手に良いと思っていた。
そんなことを考えていると狸は
「てか、夜と付き合うってなくない?まずマネージャーをそういう目で見れないわー顔が可愛いだけじゃね?」
と言う。
狸が本気でそう思ってるのか嫉妬なのかは分からないが、俺もそう思う。
確かに夜は可愛いが頭が悪いというか、常識がない。
俺は付き合うならまず常識がある人がいい。
ひとまず、この噂がほぼ確定したというこの事実に俺たち三人は達成感を得る。
この何日か三人でこの噂を調べていたが、何も情報は得られなかった。
そして今日、遂に噂の二人を目撃することが出来た。
年頃の俺たちにはスパイ行動をしているみたいで噂を調べるのはとても楽しかった。
特に俺も狸もかなり厨二病心がある。
そんな狸半分ふざけて言う。
「これからも捜索しがいがあるな」
人の恋愛を邪魔するのはよくないと思うが、朝日先輩と夜についてはこれからのバスケ部について考えた時に問題になることだってあるかもしれない。
特に駒井先輩はキャプテンなので心配だろう。
だからある程度は朝日先輩と夜について知っておきたいと駒井先輩も思うはずだ。
でも二人はきっと付き合っていることを隠している。
ストーカーしない程度に情報を集めないとなと心の中で思う。
朝日先輩と夜を目撃してからはまったく勉強が全く手につかず、この日を終えた。
恋愛というものはもちろんクラスでも起こるものだ。
ここ最近、朝日先輩と夜の話題で盛り上がっていたが、最近クラスでも何組かカップルができているらしい。
なんて話を休み時間に俺は仲の良い三人で話す。
「彼女欲しー」
なんていつも言っているのが俺と仲の良い柊雄太だ。
そして、もう一人の友達が、猿田紫耀である。
俺はクラスで結構友達が多いと自分ながら思っているが、特にこの二人で話すことが多い。
なんといっても俺たち三人は、非リア三人衆なのである。
俺のクラスでは今までに付き合ったことがあるという人はかなり多く、付き合ったことの無い俺らは少数派となる。
そんな中俺たち三人は絶対に彼女ができない非リア三人衆として仲良くしていた。
「バスケ部のプレーヤーとマネージャーが付き合ってるのってマジ?」
突然、猿田は俺に聞く。
「らしいね。でも俺もよくわかんないんだよな。」
あまりこの噂を自分から流したりはしないが、聞かれたりしたらわざわざ嘘をつくこともないだろう。
「夜ちゃんって子、可愛かったのなー」
柊は言う。
「お前には無理だな」
「狙ってねーわ!」
夜は可愛いからほかのクラスで知る人も多い。
俺たちはB組、夜は隣のC組だ。
なんて話をしていると授業が始まる。
テストはあと三日なので集中したい。
グループ活動で柊が女子と仲良く話してるのを俺は見かける。
これは猿田にも言えることではあるが柊は女子と話せない訳では無いのだ。
なんならかなり女子と話す方だ。
だから、柊と女子が話してるのを見ても俺は特になんとも思わない。
最近は隣の席の女子と仲が良いようだ。
あまり女子の名前は分からないが、柊が茜と読んでいた。
ひそかに俺はこの二人が付き合わないかなーなんて友達の幸せを思ったりもしている。
まあ非リア三人衆ではなくなってしまうけどな。
全ての授業が終わり、放課後はテスト前で部活もないため今日は非リア三人衆で、教室に残って勉強をする。
他にも色んな人が残って勉強している。
隣の猿田を見るとすごい集中している。
猿田は頭がいいのだ。
猿田ってなんでモテないんだろ。
そう思っていると1人の女子が近づいてくる。
「猿田くん、ここわかる?」
一人の女子が尋ねてくる。
苗字しか覚えていないが、確か鴨志田だった気がする。
クラスでは目立ちすぎず目立たな過ぎずといった普通の女子だが近くで見ると結構可愛い。
「ここはこうやって、、、」
猿田は教え始める。
猿田もこうして幸せになってくれるとうれしいとしみじみと思う。
なんてことを思いながらこの日は勉強をした。
非リア三人衆は家がそれぞれ遠いため、一人で、帰り道を歩いていた。
ふと横を見るとそこには、朝日先輩と夜の姿があった。一瞬心臓が止まる。
あちらは気付いてない様子だが俺は急いで逃げる。
朝日先輩と夜はバスケ部に隠して付き合ってる中俺と鉢合わせしたらお互い気まずすぎるし、これからのことも考えると逃げるのが今は正解だろう。
遠くから見てみると、朝日先輩と夜に一人の男が近づいていた。
見たことの無いこの男は朝日先輩の友達だろうか。
俺は思わず少しだけ近づいて耳を傾ける。
「朝日お前、こんな可愛い子連れて何してんだよ〜彼女か?」
朝日先輩の友達らしき男は軽い口調で聞く。
「違う」
朝日先輩は険しい顔で即答する。
「二人でそんな楽しそうに帰って付き合ってないっていうのか?それにその子一年だろ?」
朝日先輩の友達らしき人はだいぶ煽り口調で話す。
「あまり口出しするな」
「じゃあ付き合ってるってことでいいのか?」
だいぶウザイなこの男と俺は聞きながら思う。
朝日先輩と夜は顔を見合わせる。
そして朝日先輩は言う。
「付き合ってて何か悪いか?」
そういう朝日先輩の顔は俺がいつも部活でみている、集中していて、どこか棘があり、でも優しい薔薇のような瞳をした、俺の尊敬する朝日先輩の姿が、そこにあった
俺はこの瞬間この話を耳にできたことに感情が昂ってしまう。
誰かに話したい。
でもバラすのは良くない。
せめて狸とかならいいよな、、、
でも、、、
うーん。
あ、綾華にしよう。
そう思って俺は帰り道、綾華に連絡を入れた。
ご愛読ありがとうございました。
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一話じゃまだまだなのでぜひ次の話でお会いしましょう。