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十従獣魔のエスクワイア  作者: 岩山 駆
荷車の騎士編
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分かたれた運命路


 大気がおののき、衝撃波が避難していたルチルたちのところにまで届いた。


「うぉわっ」


「ぬぐっ」


 末恐ろしい威力を物語るそれに二人は縮こまる。


 大小の落石が辺りに飛び散り、濃霧のように砂塵が舞う。


「……だから言ったっスよ。巻き込まれたくないって」


 頭上を通過した刃の余波に人虎が吹き飛ばされる様を見たミニュアはそうぼやく。


 虎魔族の野生児から光る全身紋様が消え失せ完全に沈黙。今度こそ、決着はついた。


「隊長ー! 凄かっ……その子大丈夫ですか?」


「問題ない。直撃させずに剣圧で叩いただけだ」


 いち早く駆け寄ったルチルは横たわる人虎のもとに恐る恐る近付く。


 意識をなくしてはいるが五体満足で大きな怪我もない。相応な手心を加えて倒されている。


 それだけの実力差が窺えた結果だった。現にイオ隊長は無傷でありさほど消耗している様子もない。


 サーフィアが全霊を籠めて生成する銀剣以上に巨大化していた重剣(アロンダイト)を元の平短剣に収縮させ鞘に納める。


「彼女には意識を取り戻してから聞かねばならないことが多々ある。しかしよもや原石(・・)持ちとは思わなんだ」


「あの、イオ隊長、その原石(・・)って一体なんです? 昔、師匠が似たような言葉を口にしていた覚えがあって、その時は言葉の綾なのかなと思っていたけど、恐らくその子がタダの獣人じゃないってことなんですよね」


 ルチルは自らの師である日鷹(ガヴェイン)卿、オニキス・キャスパリーグがふと溢した台詞が蘇る。


 ──最初は面倒な命令だと思っていたが、面白い掘り出し物をしたかもしれない。お前たちという原石(・・)の可能性を磨けるんだからな。


 二人が口にしているそれは、決して偶然同じようになぞらえただけの単語ではないだろう。


「実はボクもあんな風に光る紋様が出ることがあって……なにか関係があるんですか?」


「それは……」


 イオ隊長が言いかけたところで、一同の重心が揺らいだ。


 轟々という地鳴りと共に激しい揺れが起こる。


「なっなんスか!?」


「またトラ女の仕業か……!」


 しかし人虎はいまだに気絶しており、魔法紋ルーンの仕業ではないことを悟る。


 すなわちこれは自然現象。ただの地震。


「地下だっ」イオ隊長は警告した。


 足場から不穏なひび割れが走っていき、地盤が裂けていく。


「この一帯は空洞化している! 彼女が地形を大きく動かした影響で不安定になったんだ!」


「空洞って、この下になにかあるってのかよ!?」


ダンジョンだ(・・・・・・)……! 恐らくこの虎魔族も──」 


 それ以上のやりとりを大地は許さなかった。


 崩落が始まる。まるで蟻地獄が呑み込むようにすり鉢状に深淵の穴を開く。


「うおおお!?」


「なんスかこれェ!」


 規模は広大であっという間に引きずり込まれ、離脱の猶予はなくルチルたちは落下する。


 底の見えない真っ暗な地下に、意識もなく無防備なまま身を投げ出した野生児の姿をルチルは見た。


「っ待って!」


 すかさず飛び出した狼魔族の少年は、真っ逆さまに人虎を追って闇の中に消える。




 一方その頃、洞賊団の地下アジトでも強い地揺れに見舞われて内部にいた騎士たちと捕虜の盗賊たちも混乱を起こしていた。


 天井からパラパラと小石が落ち、パキパキと不穏な音がそこら中で合唱する。


「なんだこの揺れは!?」


「みんな早く出口に急げ!」


「ギャー! おかしら助けてえええー!」


「おおお落ち着けぇ! これぐらいじゃビクともしねぇから! それよりあの場所が崩れちゃ不味い! すこぶる不味い!」


 土竜魔族のモルグ・ボーリングは縄に縛られながらしきりに身体を揺すった。


「ぐっ、コラ! どさくさに紛れて抵抗するな!」


「違う! そんなつもりじゃねぇ! 話を聞いてくれ! ヤベェことになるかもしれねぇンだ!」


 賊の親玉が必死の訴えをしている間に地震は息を潜め、アジトに平穏が戻り始める。


「……静まったようだ。とにかく全員早く地上に出るぞ。隊長と合流しなくては」


「頼む! その前にひとつだけ確認してきてくれ! あそこだけは塞いでおかねぇと! 後生だ!」


「しつこいぞ」


 にべもなく一蹴し、周囲も落ち着きを取り戻す。


「なにをまだ騒いでいるの?」


 赤髪の猫魔族の少女がその場にやってきた。


「殿下、賊の戯れ言です。お聞き流しを」


「いや聞いてくれ! このままじゃあの村の連中も危険……かもしれねぇ! この揺れで塞いだアレが開通したりなんかしたら!」


「いい加減に……!」


「アレってなによ」


 ルビィは言葉を拾った。見張りの騎士は渋面を広げるもそれ以上に口に出さなかった。


「もしテキトーなことぬかしていたらその時は承知しないわ。火炙りの刑をここで処してやるから。それでも伝えたいことがあるのなら言ってみなさい」


 という半分脅し文句にモルグは生唾を呑む。しかしそれでも口を開いた。


「こ、このアジトを掘り進めていた途中、一度とんでもねぇものを見つけちまったんだ。食料庫の更に奥の方……慌てて埋めたんだが今回の地震でまた出てきちまった可能性がある」


「それは?」


「…………ダンジョンの通り道だ」


「ダンジョン? この辺りに存在するだなんて初耳だけど」


「そうだ。未発見というだけあって希少な発見だった。今はモンスターがこっちに侵入してくるかもしれないから今は塞いである。それが壊れてたら一大事なんだよ」


 絞り出された解答に緊張感が張る。少し打ち明けて舌が乗ったのか彼は更に滔々と語る。



「最初は大して焦りもしなかった。むしろお宝発掘ができるかもしれねぇと両手を叩いたくらいだ。そんな調子で少しだけ入って調査したんだが……」


 しかしそこで話が途切れた。うつむき、記憶を反芻させている。


 恐らくはロクでもない経験をしたということだろう。


「それで? なにかいたとでも言いたいのかしら?」


「おう。もうヤツはモンスターなんて生ぬるくて呼べやしない。文字通りのバケモノだったぜ」


 相当な恐怖体験だったのだろうか。此処から今すぐ離れたいと言わんばかりにそわそわと世話しない。



「おめーらも聞いたことあるだろう? ベヒーモスって超獣の名前くらいよ」



ルビィ「……知らないわ!」


モルグ「…………」



次回の更新は3月11日(土曜日)を予定しています!

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