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十従獣魔のエスクワイア  作者: 岩山 駆
荷車の騎士編
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襲撃



 奥深い地下の洞窟は村から外れる程途方もなく、果てが皆目見当がつかない長さだった。それだけの掘削をして侵入を試みたというのが末恐ろしい。


 ルチルたちは進む。生徒七人に騎士八人の計十五人編成だ。


 とある光源によって内部は照らされて移動に不自由はないのだが、奇妙にも光の色彩が忙しなく変化を起こしていた。


 赤になったかと思えば緑に、すぐ黄色になって今度は青、次は橙となるので落ち着きがない。


 というのも灯り役の馬魔族の貴族、ヘングスト・フォン・ヴァイスの魔法紋(ルーン)によりしんがりから全身を発光し続けているのである。


「なぁさっきからその松明代わりの灯り、七色に光らないようにはできねぇの?」


「なにを言うんだい? せっかく僕が輝く機会だというのにただ明るくするだけじゃつまらないじゃないか!」


「響くから大声出すなバカ」


「バカ!? 今僕をバカと言ったのか!? 不敬だぞ貴様!」


 サーフィアと口論をしているヘングスト。


「ほんとに声も視界もうるさいわね盗賊よりも先にアンタを焦がすわよコラ」


「……はい」


 しかし振り返って猫耳をイカ耳にした王女ルビィからの叱責にはたまらず大人しくなって光源を普通に戻した。


「ったく、探検しにきてる訳じゃないんスよ。賊退治に向かってるんスから、もう少し緊張感を持って臨むようにっスねぇ」


「だが、萎縮した状態で同行されるよりはいい。戦闘が待っているだろうからな」


 賑やかさにミニュアから苦言が出ているがイオ隊長は寛容だった。


「まぁそれはウチも構わないんスけど、ホントにいいんスか? 王女殿下まで連れてきちゃって」


「あまり褒められたことではないだろうね。だが、助成を求めた上にこちらの都合で同行を拒否したとして、到底納得なされるわけがない。ミニュアだったら説得できるかい?」


「あー……確かに無理っス」


 昨晩の件を思い返した蝙蝠魔族の騎士は認めざるを得なかった。


「それに、この中で一番攻撃力があるのは紛れもなく殿下の《神の火(ウリエル)》だ。戦力として申し分ないのもまた事実。いち早く制圧するためにも彼女の力を借りるのが最善だろう」


 そんな調子で一本道のトンネルを進む。途方もなく長いその穴は、いったいどこまで掘り進められたのか定かではない。


「そういえば探検で思い出したんだけどよー」


 道中の雑談がてらにボークが話題を切り出した。


「昔読んだ各地のダンジョンを渡り歩いた冒険家が書いたっていう探検録の中で、すげー面白い内容があってさ」


「オメーまたそれか。相変わらずそういうの好きだよな」


「でもエンキぃ、作者が体験したのが事実ならスゲーことなんだぜ?」


「なんの話だ?」


 荷車(ランスロット)卿、イーオス・アステリオは興味を示す。


「ああいや、別に大した話じゃないですよ。ただ、その探検家がある地下ダンジョンを潜った時に別のダンジョンの入り口から出てきたって経験からとある仮説が立てられたことをボークのヤツがいつも語ってるだけで」


「ダンジョン単一説、って聞いたことありません? この地上にあるダンジョンは元々ひとつで、実は全て繋がっていたという推論があって……」


「ね? しょうもない与太話でしょ? 真に受けてやらんでください」


「おーい遮らないでくれよー。せっかくおもしれーところなのに~」


 エンキにあしらわれて抗議するボークだったがイオ隊長は取り合った。


「初めて耳にするが、なるほどダンジョンというものは総じて成り立ちが不明瞭な場所だ。なにがあってもおかしくはない。実際、最奥部では我々の文明では説明できないような物が埋まっていたりすることもあると聞く」


「じゃあ……!」


「ただし、私も様々なダンジョンに立ち入った経験はあるが深層までたどり着き、行き止まりだったことも幾度かある。あれらが総じて同じだったというのはいまいち実感が湧かない。世界各地に存在するそれらが繋がっているというのは、厳しい理論ではないかな」


 ロマンのある話ではあるよ、と緩やかに見解を述べる。猪魔族はちょっぴり気を落とす。


 そんな説明にふとルチルは疑問を抱いた。


「この隊もダンジョンに潜ることがあるんですか?」


「いや、以前所属していた別の隊での話だ。剣鉈(パロミデス)隊と呼ばれ、王都周りで被害をもたらすモンスターの討伐やダンジョンに生息するモンスターを間引くといった行動を主としている隊にかつて席を置いていた」


 牛魔族のイーオスは元来武闘派の騎士だったと。


「……故あって隊を移籍しここでの隊長になったが、こちらの居心地も悪くない。部下たちが伸び伸びと働けるアットホームな隊を目指そうと思っている」


「単語だけだとブラックな響きだな」


「サーフィア言い方!」


 なんて失礼も彼女は笑って許した。


 だが、そんな調子で先頭を進み続けたイオ隊長がやがて足を止め、穏やかな雰囲気を瞬く間に重々しいものへと塗り替える。


「ヘングスト・フォン・ヴァイス。ただちに照明を消せ」


「へ?」


「探知圏内に入った。気取られるぞ」


「くっ……見せ場はこれで終わりか」


 名残惜しそうに後方からの灯りを絶つも、トンネル内は真っ暗にならなかった。行く手に光が漏れていた。


「物静かに私に続け」


 各々が剣といった武器を構え、慎重な足取りで前へ。


 くねらせたように曲がるトンネルは蟻の巣のように入り組み、進路が別れ始めた。


「三人、いる」


 押し殺した声音で告げられた情報に、一同の緊張感が高まった。


 近づくにつれ、徐々に自分たちのものではない男たちの声を拾い始める。談笑のようだった。


「いやーちょろいちょろい。村の男連中をボコってガキと女を連れてく簡単なお仕事だぜ。でも明日にはささっと奴隷市にでも売りつけておいとましねぇとな」


「昨日酒盛りした連中はまだ起きてこねぇのかよ。いい加減見張りも飽きてきたんだがなぁ。下っ端の下っ端は辛いわ」


「そうくさるな。昨日の今日で反撃しにはこれねぇし救援を呼ばれようと到着する頃には後の祭りだ。移動したらゆっくりしようぜ」


 油断しきっている彼らが仲間を呼ばないよう真っ先に抑えるべく動いた。


 指示を受けた騎士のひとりが拾った小石を遠くへ投げつける。コロンという物音が静寂を包み、見張りたちは反応する。


「何だっ、崩落の予兆か」


「お頭の掘った穴だぞ、そんな訳あるか。たまたま一部が崩れただけ──」


 ランタンと申し訳程度に用意された石椅子をたむろっていた連中に複数の影が走った。


 鈍い呻き声が連鎖した後、盗賊の三人はその場に崩れる。騒ぐ暇も与えず気絶させた。


「ミニュア、拘束」


「ラジャーっス」


 ふたつ返事で《秘匿の宝物庫(ブラックボックス)》の歪みからスルスルと捕縛用の縄が取り出され、慣れた様子で気絶した賊たちを縛り始める。


「ボクもやるよー」ルチルが手伝いを買って出た。


(せつ)も結び方には学びがある」メノウも協力してくる。


 三人は総じてげっ歯類系で鼻っ柱が丸く、獣耳が小さいのが特徴的だった。土汚れが目立つ。


「地下での活動を主とするだけあって土竜魔族か」


「みんなモグラ獣人だな」


 猿轡を噛ませ、完全に無力化することに成功したが、まだこれで終わりではない。


「モルグ洞賊団は推定二十余名で構成される勢力だ。人質の救出を最優先に動き、最小限で制圧するぞ」


 こうして本格的に騎士たちの襲撃が始まる。

次回の更新は1月29日(日曜日)を予定しています!

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