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9.預かる/愚痴

「ふん。小僧の方は何も言えなくなったようだな。義理の両親になる者達がこんなんだから当然か。ワカマリナのことは知ったことではないがアキエーサをこんな所に置いてはいけないな。なあ、リーベエよ。この子は俺が預からせてもらってもいいか?」


「「はぁ?」」


ルカスの言葉にリーベエとフミーナは動揺した。ルカスがそんなことをする意味が分からないからだ。


「何を勝手に言ってるんだ兄上は? アキエーサは我が家の娘だぞ」


「一番大事な娘はワカマリナなんだろ? あっちの娘を探すのに集中したいなら俺がアキエーサを預かっても問題あるまい?」


「そ、それは……」


リーベエにとっては、ルカスにアキエーサを預かってもらってもいいと思う反面、ルカスがそんなことをする理由が分からないから簡単に許可したくないという思いがある。だが、フミーナの方は違った。


「ええ、構いませんよ。アキエーサなんていてもいなくても同じですから」


「! おい、フミーナ、勝手なことを言わないでくれ。仮にもアキエーサは我が家の娘だ。そうやすやすと預からせるなど、」


「娘とは名ばかりの、お前らの都合のいい道具か何かか? アキエーサは有能な子だぞ。少なくともワカマリナよりもな。こんなに優秀な娘はお前ら三人にはもったいない。それよりもワカマリナを探すことにしたらどうだ? お前らにとっては、あれこそが一番大事なんだろう? あんな我儘で馬鹿でどうしようもない娘がな」


もはやルカスの言うことに何も口答えできないリーベエにフミーナにクァズの三人。ルカスとアキエーサはその間にも話を進めていく。


「一応、俺もワカマリナの捜索には協力してやるよ。残念ながらあんなのでも親族にあたるしな。まあ、期待はしないでもらおうか。俺はワカマリナは好かんからな」


「「「…………っ」」」


「行こうかアキエーサ。何ならうちの養女になってもいいぞ」


「ありがとうございます伯父様。御厚意に甘えさせていただきます。お父様、お母様、しばらく伯父様のもとにやっかいになるのでご心配無用ですわ。ワカマリナの捜索、頑張ってください」


アキエーサは喜んでルカスについて行った。


「「「……………………」」」


ルカスとアキエーサは部屋から出て行った。残った三人は呆気に取られてしばらく沈黙していたが、フミーナが顔を真っ赤にして文句を言い始めた。


「何よ何よ何よ! 何なのよあの男は! 私達を馬鹿にしただけじゃ飽き足らずアキエーサを依怙贔屓してワカマリナを我儘で馬鹿でどうしようもないとか言い出して! もう何なのよ!」


フミーナに触発されて続くようにリーベエも愚痴をこぼし始めた。


「……兄上め。ワカマリナを探すのを手伝ってくれるのはいいがアキエーサを養女にだと? 今も昔も舐め腐りやがって、アキエーサはいけ好かなくても我が娘だ。我が家のために死ぬまで尽くすべきなんだ……!」


ルカスとアキエーサに対して愚痴を吐き捨て続けるイカゾノス夫妻の姿、親族に対して本人たちがいないところで罵声を叫ぶ姿、それを間近で見聞きしてしまったクァズは気まずそうにしていたままだった。


「…………」


クァズとしては、イカゾノス夫妻のこんな姿を見たことがなかったのでどうすればいいか分からない。ただ、確実に思うことがあるとすれば、この場から離れたくて仕方がない。気まずいからだ。


「ぼ、僕は帰らせていただきます……。ワカマリナのことで分かったことがあればすぐに駆け付けるので……」


それだけ言ってクァズは、イカゾノス夫妻の返事も聞かないで部屋を出て帰っていった。速足で。




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