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5.請求書/言い訳

「おい、なんだこれは? 数多くの宝石やドレスの代金………いや、まてまてまて! これ全部を我が家で払えと言うのか!? 一枚目でとんでもない金額ではないか! どうしてこんなものを…………ぐぬぬぬぬ、確かに色んな女と遊び歩くような男のようだな………」


「あ、あなた、何が記載されているの?」


リーベエの尋常でない様子から嫌な予感がしてきたフミーナは、恐る恐る確認を取る。


「………ほとんどが多くの宝石つきの指輪にドレスの請求書の書類だ。クァズ君がアキエーサに押し付けて、我が家で払えと言うのだけでも問題だが……どれもサイズが違う。我が娘たちのどちらのサイズが合っていないのに、こんなにたくさんの指輪にドレスの購入……誰か別の女にプレゼントするとしか考えられんな……おそらくは複数人のな……」


「はぁ!? 何ですって!?」


「う、そ、それは……」


その通りだった。領収書に記載されている指輪やドレスのサイズは全て異なっているのだ。しかも、その全てが違った色やジャンルにもなっている。これではまるで、指と体の寸法が違う多くの女のために購入したようなものだ。何よりもサイズそのものが、アキエーサでもワカマリナでもない。証拠としては十分だ。


「他にも証拠がありますね。例えばお父様宛てに届いた請求書の中にも混ざってるはずです。最近は雑事を使用人に任せっきりで、請求書や他の書類のことなんかほったらかしにしてるみたいですから気づいてないでしょうね」


「なんだと!?」


「よ、余計なことを………」


それも事実だ。リーベエははプライドの高い貴族だが、細かい雑事は苦手としているため、面倒ごとは使用人に任せるような傲慢な男だった。支払いを求める請求書などの類でさえ「どうせ娘たちや妻の消耗品」などと言って気にしていないのだ。


「……本当か?」


「後で使用人に確認させてくださればいいでしょう」


「「………」」


アキエーサが言っていたことが事実だと悟った両親はクァズを振り替える。その眼は普段アキエーサに向けるような理不尽に厳しい眼であった。


「どういうことかね? 君は私達に向かって『今はワカマリナ一筋です!』と言っていた記憶があるのだが?」


「他に付き合っている女でもいるの?」


二人の大人に冷たい目を向けられたクァズは酷く狼狽する。


「こ、これは違う! 全部、ワカマリナへのプレゼントなんだ! たまたま間違えてサイズを間違えてしまったんだよ! せっかく買ったんだから返品していなかっただけで……」


「それはあり得ないでしょう。これだけ数多くのドレスや指輪のサイズを間違えられますか?」


「ぐ、余計なことを……!」


アキエーサに指摘されて、忌々しく思っても流石に無理があると言われて気付いたクァズだが、それでも言い訳を続ける。


「そ、そうだ! これは友人達へのプレゼントなんだ! か、彼女たちとは決してやましい関係じゃないから安心してほしい!」


「それなら最初に落ち着いて説明できるはずですよ。たとえそうだとしても、やましい関係を疑われるのは間違いありませんがね」


「黙れ! 人聞き悪いように受け取らないでくれ!」


「「………」」


必死に言い訳を考えて口に出すクァズだったが、両親の冷たい目はなかなか変わらない。


「うう……どうすれば……」


そう簡単に変わりそうもない。それでもこの状況から脱したいと思ったクァズは、思い切って話を挿げ替えることにした。最初の話題に戻るのだ。


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