49.招待状/手紙
「おいおい、あいつのことを変わり者呼ばわりなんざするなよ。かわいそうだろ? というよりもお前、自己評価低いぞ? 今のお前は俺の娘なんだからもっと胸を張ってもいいんだぞ」
「胸を強調するような服は好みません。ましてや一部をはだけさせる服は言語道断です。御冗談はよしてください」
「……い、いや、そういう意味じゃないんだが……俺が言いたいのはダブールの、」
引きつった顔でルカスが何か言いかけた時だった。二人がいる部屋に向かってノックする音が聞こえてきた。
「旦那様! お時間いいでしょうか?」
「何だ? 入っていいぞ」
執事の様子から何かを察したルカスは真顔になって入出を許可した。アキエーサも入ってきた執事の顔に注目する。
「王宮から知らせが届きました!」
「「!」」
王宮からの知らせと聞いて、ルカスもアキエーサも一人の女の顔と名前が浮かんだ。それはアキエーサの義妹……だった存在であり、今は王太子を誘惑して婚約者になった娘。その名は……。
「ワカマリナのことか?」
「ワカマリナのことですね?」
二人から同じ人物の名前が口に出た。ワカマリナ・イカゾノス。リーベエの再婚相手の娘であり、アキエーサとは母親違いの妹にあたる。両親の知らないところで散財したり、多くの男と遊び歩きながら我儘で自己中で傍若無人にふるまい続けてきた挙句、王太子に手を出して婚約者になってしまった女の名前だ。
「……そうです。彼女が絡んでいることは間違いありません。この招待状から察するに国王陛下も苦渋の決断をなされたのでしょうな」
「何? 招待状だと? まさか、あの王太子が主催のパーティーかなんかか?」
「……さようです」
「………マジかよ。あの馬鹿王子め、なに考えてんだ?」
王太子が主催のパーティー。そんなものの招待状を送られたと思うと、ルカスは嫌で仕方がなくて思わず頭を抱えてしまった。アキエーサも同じ思いのようで、執事に一つ確認を取る。
「執事さん……もしかして、私にも招待状が来たりしているのでしょうか?」
「残念ながら、お嬢様にもワカマリナ嬢からの手紙と一緒に送られています」
「そうですか……はぁ……」
アキエーサは溜息を吐いて項垂れる……前に、執事にまた確認する。
「手紙ですか? あのワカマリナから? この私に?」
「はい。読まずに捨てますか?」
「いえ、流石にそれはマズいです。王宮のパーティーであの子と会った時に面倒なことになりそうなので見せてください」
「分かりました。嫌になったらすぐに捨てましょう」
「ええ、焼き払った後で出た灰をね」
アキエーサは悲壮な気持ちを抱きながら、執事から受け取った手紙を読んでみた。そして、すぐに目を抑えながら項垂れた。
「……どうかなさったのですか? 何か不都合……よほどひどい内容なので?」
「いいえ、字が汚すぎて読めないのです。……ふふふ、これは解読に苦労しそうですね」
「心中お察しします……」
とても伯爵令嬢が書いたとは思えないほどの字の汚さから見て、その解読する努力も嫌だったのだが、真面目なアキエーサは苦労して解読を成し遂げるのであった。




