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2.両親/婚約者

「お父様、お母様、ただいま戻りました」


すぐに屋敷に戻ったアキエーサを持っていたのは、実の父からの怒声だった。


「やっと来たのか! 遅いぞアキエーサ!」


父リーベエは激怒してアキエーサの頬をひっぱ叩いた。


「っ……これでも侍女から知らせを受けてすぐに参ったのですが。本日はどんなご用件で?」


頬を叩かれてもアキエーサは臆することなく聞いてきた。その様子が気に入らなかった父リーベエは更に怒鳴りつける。


「口答えするな! 遅れてきたのは事実だろう! その事でも後でお仕置きしてやるから覚悟しておけよ!」


「分かりました。その前にワカマリナがいなくなったと聞いたのですが、どのようにいなくなったのでしょうか?」


呼び出されていきなり頬を叩かれても動じずに、冷静に機械のように要件を口にするアキエーサの顔はとても落ち着いていた。それとは対照的に義母フミーナの方は切羽詰まったような顔でヒステリックに叫んできた。


「アキエーサ! 貴女はよくそんなに落ち着いてられるわね!? ワカマリナがいなくなったのよ!? 妹がいなくなったことを悲しんでいないというの!?」


「いなくなった状況が分からないのですから悲しむ暇もありませんね」


アキエーサは事実を淡々と軽く告げると、母フミーナは逆上して胸ぐらを掴んで叫んだ。


「この薄情者! 義理の妹だからって馬鹿にしてるのね!」


今にも噛みつきそうな雰囲気のフミーナを止める者は誰もいない。リーベエもフミーナに同意見なのか怒りの形相でアキエーサを睨んでいる。それでもアキエーサは顔色一つ変えることもしない。


「いえいえ、そもそも私は事実を口にしているだけですよ。私を怒るよりも現状に目を向けないと何も解決しないでしょう? 本当にワカマリナが心配なら私に構っている場合じゃないと言われないと分かりませんか?」


「くっ!」


「ちっ!」


フミーナは乱暴に手を離した。彼女もアキエーサの言葉通りこんなことをしている場合じゃないと頭で分かっている。ただ、この状況で驚くほど落ち着いているアキエーサが気に入らないのだ。だからアキエーサを睨み続けるのだ、母フミーナも父リーベエも。


そして婚約者が乱暴に扱われているのに傍観しているだけだったこの男も。


「アキエーサよ。確かに君の言う通りだけどさ。君の態度も酷いじゃないか。義理とはいえ妹がいなくなったんだぞ? もっと取り乱してもおかしくないと思うんだけどね?」


「クァズ様……」


それはアキエーサの婚約者クァズ・ジューンズだ。金髪碧眼の美青年の侯爵令息の彼は、いら立ちを隠しもしない口調でアキエーサに皮肉をぶつける。


「君はワカマリナの姉なんだぞ? それなのに両親のように取り乱したり感情的にならないとは薄情者と呼ばれても仕方ないな。はぁ、僕の婚約者とあろう者が嘆かわしい。君じゃなくてワカマリナみたいな子が婚約者だったらよかったのに」


わざとらしくため息までついて嫌味を言い放つ婚約者クァズに心の底から軽蔑するアキエーサは、冷めた目で見ながら言い返した。


「クァズ様、ご忠告感謝します。ですが言わせてもらえると、私の婚約者でありながら我が妹と戯れて堂々と浮気する男のセリフとはとても思えませんね」



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