18.クァズ視点/怒り
(クァズ視点)
ワカマリナとイカゾノス家について少し調べてみたら、とんでもないことが発覚した!
「ワカマリナ……とんでもない阿婆擦れじゃないか!」
まず、ワカマリナの学園生活! ワカマリナは普段から多くの美男子を侍らせていたのだ。その男たちの誰もが高位貴族の令息ばかり。特に婚約者がいる男を中心に侍らせていたのだ。そのせいで婚約が破棄になったとか。
……おいおい、僕が言うのもなんだけど何やってんだよ! 自分の可愛さを使って男で遊びまわっていたのかよ!
それだけじゃない。次に金の問題! ワカマリナは男に金を貢がせているらしい。まあ、これは仕方がないが問題は金の使い道だ。娯楽施設や商店で騒いだり物を壊したりと……ああもう! これ以上聞かなくても理解できてしまうよ! ワカマリナがとんでもない女だってな!
そして、イカゾノス家! どうやらアキエーサは、当主リーベエと前妻との間に生まれた娘のようだ。ちなみに前妻とは政略結婚だったという。リーベエは前妻が亡くなった後で元愛人だったフミーナと再婚。そのフミーナとの間に生まれたのがワカマリナだった。再婚したころにワカマリナはすでに生まれていたらしい。
……ここまで聞いて、僕の中でイカゾノス家の歪さが少し分かった気がする。邪推になるけど、リーベエと前妻との間に愛は無かった。その二人の間に産まれたアキエーサは当然リーベエに愛されなかったのだろう。今でも扱いが悪いのはそのせいか。使用人扱いだしな。
それに対して、リーベエとフミーナは愛人関係だった。愛というのはあるのだろう。あの二人の間に生まれたワカマリナはあんなに我儘を許されるくらい愛されているからな。
姉妹格差はそこからか。道理でおかしいと思ったわけだ。……って冗談じゃない! ワカマリナがあんなではイカゾノス家の金が尽きるのも時間の問題だ! そんな歪んだ家と関係を持つなんて御免だね!
◇
「伯爵! ワカマリナは多くの貴族令息と学園で浮気をしていたぞ! しかも婚約者がいる男ばかり侍らせて問題を起こしているじゃないか! そいつらの両親は怒り心頭でイカゾノス家に多額の慰謝料を請求するそうだぞ! 婚約者を奪われた令嬢たちも同じだ! どういうことだ! こんなこと知らなかったぞ!」
「「く、クァズ君!?」」
「ワカマリナがそんな女だったなんて僕は何も知らなかったぞ! 一体どういうつもりだったんだ! 僕を騙しやがったのか!? 説明しろ!」
「「そ、それは……」」
よりにもよって、クァズにワカマリナのしてきたことを知られてしまった。弁明しようにも、どう説明すればいいか分からないリーベエとフミーナは互いに顔を見合わせる。正直言って、二人とも知らなかったとしか言えないのだ。だが、クァズがそんな言い訳で納得するとは思えない。
「……おい、どう説明すればいいんだ。ワカマリナのことはほとんど事実のようだし……」
「……そんなの、私が聞きたいくらいよ。あの子がそこまで馬鹿なことをしてたなんて……」
いつまでもグズグズしている二人に対して、クァズの怒りは更に深まる。
「おい! 聞いてんのか!? 僕の話を真面目に聞けよ! 思えばワカマリナも人の話をよく聞かない女だったが、子が子なら親も親か! こんな家の娘と仲良くしなきゃよかったよ! 金遣いの荒い無能一家め!」
「「……っ!」」
ワカマリナのことどころか親である自分たちまで貶されたリーベエとフミーナはカチンときた。以前からクァズに思うところがあったこともあって、反論を始めた。