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13.ワカマリナ視点/領内

(ワカマリナ視点)


わたくしはワカマリナ・イカゾノス。世界一可愛い伯爵令嬢ですわ。



数年前のわたくしはお母様と二人暮らしをしていました。ある日、お父様がわたくしたちを迎えに来て、お母様を正妻として再婚してくださってから貴族令嬢になれたのです。お母様は愛人だったのです。



今のわたくしはお父様とお母様に深く愛されてとても幸せ者ですわ。お母様と再婚してくださったお父様はとてもお優しい人です。自慢の家族です。



出来の悪いお姉様さえいなければ。



お姉様はわたくしと比べて地味で可愛くありません。家のためにいつも使用人のように働くばかりでつまらない人です。趣味は読書だそうで難しそうな本を見ていて理解できません。わたくしとも仲良くなれません。



お姉様はお父様と政略結婚した女の子供、だから愛されないのです。だからわたくしがお姉様の分までお父様とお母様に愛されなくてはいけないのです。



愛してくれるのは両親だけではありません。いろんな格好のいい男の人達がわたくしを可愛いと言ってくれるのです。お父様が治める領地の平民の人達はそれはもうわたくしを敬ってくれるのです。だからついついお金を渡してしまうのです。たまにわたくしに反抗する人もわたくしが怒れば黙るのです。



つまり、わたくしはお父様の領地経営というのに役立っているのです。お姉様もわたくしを見習うべきですわ。





イカゾノス家がワカマリナの捜索を始めてからすぐに有力情報が入ってきたのは、領内の平民からだった。目撃情報がすぐに入ってきたのだ。ワカマリナが行方不明になったこともあって、珍しく屋敷にいたリーベエがそれに対応した。


「おい、それは本当か?」


「はい、多くの目撃情報が挙げられていますから間違いないのでしょう」


リーベエは多くの目撃情報と聞いて最初は喜んだが、その内容を聞いて顔をしかめた。ある程度予想はしていたが、厄介なことになりそうだったからだ。


「いつも男達侍らせていたそうですよ。目撃情報をまとめれば、ワカマリナお嬢様は美男子達と遊び歩いていたようですね」


「……特定の男一人というのでなく複数の男と?」


「はい。我が屋敷に勤める使用人の中にもワカマリナお嬢様が複数の男達と出かける姿を見ているため、間違いはないでしょうな」


「なんということだ……」


男と一緒だった、と聞いて嫌な予感を感じた。貴族が行方が分からなくなる事例の多くが恋愛がらみだ。


当然、リーベエもその可能性も考えていた。だが、多くの美男子を侍らせて遊んでいたというのは予想の斜め上だ。


「はぁ~……ワカマリナめ、なんて面倒なことをしてくれたのだ。クァズと婚約するというのにそんなことをしていたのか。いくら可愛いからって派手に遊び歩いていたとは。もういい年なのだから自重すればいいものを」


「クァズ様と婚約? 私の記憶が正しければアキエーサお嬢様の婚約者だったはずですが?」


執事が不思議そうにするとリーベエは心底面倒くさそうに溜息を吐く。


「……アキエーサとの婚約を破棄してワカマリナと婚約することになっていたのだ。クァズもアキエーサよりもワカマリナがいいというからな。それにしてもアキエーサも何故ワカマリナに自重するように言わなかったんだ。姉ならば姉らしくすればいいというのに……。アキエーサがもっとしっかりしていればこの前のドレスや指輪の代金を払わずに済んだんだ。今度会ったらただでは済まさんぞ。たっぷりお仕置きせねばならんな」


「…………」


リーベエは自分が親であることを棚に上げて、ルカスのもとに身を寄せるアキエーサに愚痴をこぼす。挙句にはただでは済まさないなどと言って怒りすら抱く。リーベエが滅多に屋敷に戻ってこないことも原因であるとは微塵にも思っていないようだった。


「ワカマリナのためにも私はしばらく屋敷に留まるとするか。あいつの購入したドレスやら宝石やらの金額とかまだ把握しきっていないしな。……アキエーサのせいで忙しくなったものだ、まったく仕方がない」


「……さようですか」


そんな主の姿に目の前の執事は内心嫌な思いをしていたのだが、リーベエはその傲慢で自己中な性格ゆえに見抜くことはできなかった。



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