9おさきの味方、おみねさん1
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いよいよ紅葉山小町と言われた、おはなの嫁入りです。
どうぞお楽しみください!!
「準備はいいかい?」
行列の先頭に立つ予定の倉持屋の番頭は、ゆきの屋の奥に声をかけます。
「はい、お待たせ致しました。準備万端整っておりますよ」
そう言って、紋付を着て現れたおはるは、ゆっくりおはなの手を引いて、玄関に立ちます。
おはな、二十六歳。世の中ではすっかりおばさんの年齢ですが、流石に紅葉山小町と言われただけあって、八つは若く見えます。形の良い小ぶりの唇に差した紅は艶やかで、白無垢から覗く顔をほんのり赤くして、恥ずかしそうに俯く姿は、まだ娘として通るくらいです。
「まあ、本当に綺麗なお嫁さんだこと」
花嫁姿のおはなを一目見ようと、あちらこちらから集まってきた村の人々は、期待以上の美しさに思わず息を呑みます。
「では、行きましょうか」
番頭にの合図で、一行は倉持屋に向けてゆっくり出発し始めました。
沿道の人々のため息交じりの感嘆を耳にしながら、おはなもしとやかに歩きます。
今日からどうしましょう…。
行列の後ろの方で、佐助とおはると一緒に歩いていたおさきは、これから始まる倉持屋での生活を案じて一人複雑な気持ちになるのでした。
倉持屋へ着くと、入口で紋付き袴を身に着けた、平次が待っていました。平次はおはなの美しい花嫁姿を見ると、顔をぱっと輝かせます。
「おはなさん、とても綺麗ですよ」
「ありがとうございます。今日からどうぞ、よろしくお願いします」
おはなは平次ににっこり微笑むと、可愛らしい声で挨拶をして頭を下げます。
「おはなちゃん、こちらこそ、今日からよろしくね」
紋付きを着たおそのが挨拶するのを見て、おさきは倉持屋の人々の顔を一人ひとり確認していきます。
あの生意気な義理の妹は、今日はいないのでしょうか?
まあ、こんなにおめでたい日に、喧嘩をするつもりもありませんけれどね。
そんなことを思いながら、暖簾の下に並ぶ人々の顔を次々に見ていくと、前回の挨拶の時には見えなかった人がいることに気がつきました。
あれは、誰でしょう?着物からすると、使用人ではなく倉持屋の身内のようです。
しかし平次の家族は、おそのさんと、生意気な義妹のおきくだけだったはずです。
親戚のどなたかでしょうか?
おそのの横で屈託なく微笑む笑顔が魅力的で、思わずおさきが見入っていると、その女性は倉持屋の敷居を跨いだおはなに話しかけました。
「お久しぶり、おはなちゃん!いや、今日からはあねさんか。仲良くしてね!」
「まさか、おみねちゃん?」
「そうよ、おはなちゃん。兄さんが何かしたら私に言って!懲らしめてやるから」
そう言うと、おみねはけらけらと可笑しそうに笑いました。
これは頼もしいお方ですね。
あわや倉持屋で独りぼっちになりかけていたおさきは、強力な味方になってくれそうなおみねを見て、一人安堵するのでした。
いつもお話を読んでくださいまして、本当にありがとうございました。
次話も続きますので、どうぞお楽しみください。
これからも、よろしくお願い致します!!