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19将軍さまと名乗る男1

いつもありがとうございます。

今日も更新しました。

将軍様こと、惣兵衛さんが登場です。

さて、その正体は?どうぞお楽しみください!!

「朝ごはんができましたよ」

今日もおはなの艶やかな声で、平次は目を覚まします。

結婚して半年、すっかり奥さんとしての暮らしが板についたおはなは、毎日小綺麗に身支度をして、愛する夫や家族のために、せっせと家事にいそしんでいます。

布団からゆっくり起き上がり、今日もおはなさんの味噌汁が飲めるなんて、幸せだなぁ、と平次は眠い目を擦りながら、着替えを済ませます。顔を洗い、居間へ行くと、既に店の若い衆がお膳の前に座っていて、平次の顔をみると深々と頭を下げて「おはようございます」と挨拶をしました。

「おはようございます。今日もみんな、体に気を付けてしっかりやってください」

と、平次が朝の挨拶をすると、筋骨隆々の若い衆はかしこまって返事をし、目の前に並べられた山盛りのご飯に目を輝かせます。

今朝の献立は油揚げと里芋の味噌汁、青菜の漬物、そして麦飯です。

平次のお膳にだけ、おはな特製のきんぴらごぼうが一品、添えられていますが、平次以外はおそのもおきくも、皆と同じ献立です。

おさきはおみねやおそのと共に配膳を手伝うと、そっといつもの場所に座りました。朝食を食べたら、おみねとおきくと寺子屋へ行かなければなりません。

あの、花魁事件以来、寺子屋に行く時、おみねが送り迎えしてくれるようになったからです。おみねの夫はお殿様に使える武士なので、ただいま参勤交代のお供で、江戸で長期出張中です。そのため、女の一人暮らしは物騒とのことで、おみねは夫が戻るまでの間、実家である倉持屋で生活することになっていました。

朝食が終わると、おみねはおさきとおきくを従えて、意気揚々と玄関に立ちます。

「じゃあ、母さん、行って参ります」

「気を付けて、行っておいで」

おそのが目を細めて嬉しそうに見送るのを見ながら、三人は寺子屋まで歩いて行きました。


 寺子屋のあるお寺の横には、古い屋敷がありました。

すっかり朽ち果てて、障子はぼろぼろに破れ、いつの間にか家財道具一切も消えて、持ち主が生きているかどうかすら定かではありません。

そんなぼろ屋で一泊して、目を覚ましたばかりの惣兵衛は、垢まみれの着物の袖で顔を拭うと、むくっと起き上がりました。

「すっかり眠ってしまったが、ここは雨風もしのげるし、なかなかいい」

そう言うと、今度は顎が外れる程の大欠伸をして、横に置いていた刀を手繰り寄せます。

名工の名の刻まれたその太刀は、かつて惣兵衛がとあるお殿様に仕えていた時に、下賜されたものです。

と言えば、聞こえはいいのですが、正しくは就職祝いとして、上司であるお殿様から同僚全員が頂いた、仕事の備品のようなものでした。

「どんなに腹が減っても、それがしは武士だ。これを手放すわけにはいかん」

そう言うと、剣豪を気取って屋敷の庭に下り、鞘も抜かずに剣を構えてみます。正直、戦乱の世ならともかく、これだけ太平の世が続くと、これも宝の持ち腐れと言っても過言ではありません。

しかし自称剣豪の惣兵衛は、刀を振り回す自分を遠目で見ている若い娘を意識しながら、わざと剣を振り回してみせるのでした。

 そんなボロ屋敷の住人は、寺子屋でも噂の的でした。

「ねえねえ、あのぼろ屋敷に、誰か住み始めたらしいぞ」

「そうそう、何か、むっさいお侍様が住んでいるんだよなぁ」

と、子ども達は口々に噂をしながら、風変りな惣兵衛を楽しんでいるのでした。勿論、おきくも、そんな惣兵衛に興味津々です。手習いが終わり、休み時間になると、おさきに自ら話題を振ってきました。

「ねえ、あね様、今日の帰りに、ちょっとお隣の屋敷を覗いてみませんか?」

無邪気に言うおきくに辟易しながら、おさきも興味が無いわけではありません。

「うーん。じゃあ、おみねさんが迎えに来てくれるまでの間って約束ですよ?」

とうっかり了承してしまい、おさきははっとしました。

この無駄に色気の多い義理の妹が、ボロ屋敷の主に変なことでもしたらどうしましょう?

何だか嫌な予感のする、おさきなのでした。




 




いつもお話を読んでくださいまして、本当にありがとうございます。

次話も続きますので、どうぞお付き合いください。

これからも、よろしくお願い致します!

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