11おさきの味方、おみねさん3
いつもありがとうございます。
明日アップできないので、今日アップします。
おさきちゃんは今日もお休みですが、次話から復活です。
どうぞお楽しみください。
それからもおはなと平次は、毎日あずき屋で逢瀬を重ねました。
平次の仕事っぷりはそれは大したもので、一年を過ぎた頃には、倉持屋の商いは平次を中心に回るようになっていました。おはなはそんな平次の話を聞きながら、三年経ってお嫁に行く日を心待ちにしていました。
ところが、結婚の約束をして二年半が過ぎたある日、ゆきの屋ではある縁談が持ち上がっていました。
それは、城下町の鍛冶屋の息子との縁談でした。
「相手様は国一番の名刀を打った名のある鍛冶屋の跡取りだから、お金もたっぷり持っているし、ぜひおはなを、とのことなんだよ。これは玉の輿って言うのやつじゃないの?」
と、母のおはるが嬉しそうに言うのをみて、おはなは悲しくなりました。
「でも母さん、私には決まった人がいるんです!倉持屋の平次さんです!どうかお願い、縁談は断ってください!!」
しかしおはなの必死の懇願も虚しく、おはるも父の佐助も首を縦には振りません。
「確かに平次さんはいい男だよ。でも倉持屋じゃ、うちと同じような暮らししかできない。それに引き換え、鍛冶屋の女房になれば、使用人がたくさんいて、店のことも奥の台所仕事も何もしなくていいから、華やかな着物を着て、贅沢のし放題だよ。絶対、こっちがいいに決まっているじゃないの?」
「嫌です!」
「おはな、いい加減にしなさい!!この話は、もう断れないんだ!!!」
佐助に一喝されて、おはなは目を見開きます。
「この話を持って来られたのは、お城のお奉行様だ。鍛冶屋の息子が紅葉山小町と言われたお前を見て、一目ぼれしたらしく、父親が刀の値段を値引きする代わりに、頭を下げて頼み込んだらしい。だからこの話を断ることは許されない。断ればゆきの屋は潰されてしまうんだよ」
「そんな…!!」
こんな酷い話があるでしょうか?おはなは両手で顔を覆って声を上げて泣き崩れました。
せっかく平次さんと幸せな未来が待っていると、楽しみにしていたのに。私は顔も知らない、自分の欲のために親に頭を下げさせるような男のところへ嫁がなければならないなんて…。
おはなは泣きながら家を飛び出すと、倉持屋へと向かいました。
一目平次を見たら、お別れを告げて命を絶つつもりでした。しかし泣き腫らした目で倉持屋の前に立ったおはなが見たのは、目を疑うような光景でした。
何と平次が、若い芸者と思しき女と仲睦まじく歩いているのです。
嘘…。
おはなはまるで時間が止まったみたいに、ただ二人を見続けました。
すると芸者は平次の肩に頭を預け、平次もそんな芸者の肩を抱き寄せます。
「…平次さん、酷い!」
おはなが思わず口にするのを聞いた平次は、はっと立ち止まって慌てて芸者の肩から腕を離しました。
「おはなさん、違うんだ!これは、この人は私の…」
「もう結構!平次さんがそんな人だったなんて…さようなら!!」
「おはなさん!!待ってください!!!」
慌てる平次を余所に、おはなは一目散に走り去って行くのでした。
いつもお話を読んでくださいまして、本当にありがとうございます。
これからも、どうぞよろしくお願いいたします!!