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その8


「あ、いっけなーい! 現国の教科書忘れてきちゃった」

「じゃあ隣から見せて貰えばいいじゃん?」

「え? 隣って……」



少し斜め前に見える宗方の席、そんな宗方の隣の女子が教科書を忘れてきたようだ、そして友達から見せて貰えばいいじゃんと言われているが気が進まなそうだ。 



「…… ええと宗方さん」

「いいよ、私ので良ければ」

「じゃ、じゃあ……」



宗方はそんなやり取りに冷めた返事で返す、そんな宗方に少し戸惑いながら隣の女子は机をくっ付ける。 



いやそんなだからそうなるんだろうよ…… って俺も似たように思われてんのかな?



「うっわぁ〜、暗ッ。 もうちょっと愛想良くできないわけ?」

「ゆきの奴超気不味そうじゃん」

「ていうか罰ゲームじゃん?」



ヒソヒソ話してるつもりなんだろうけどこっちまで聴こえてくるってことはわざと宗方に聴こえるように言ってんだろうなぁ。 



まぁ宗方も宗方で俺と離してる時とテンション全然違うし。 喋り方も違うしでそういうキャラ作ってんの? って言いたくなるけどどっちが本当のあいつなんだ? いやどっちでもいいけどさ。



「ええと……」

「うん?」

「あのプリント……」

「は?」



ああ、プリント来てたのか。 宗方のヒソヒソ話のせいで気付かなかったわ。 俺は前の席の女子からプリントを受け取ると後ろに渡した。



「いやいや、お前受け取り方冷たくない? なんだよその奪い取るみたいな取り方」

「はあ? 俺はそんな気ないんだけど」



俺のやり取りを見ていたのか木戸がつっこんできた。 お前こそなんだよ? どうでもいいだろがそんなこと。



………… ん? あれ? これってさっきの宗方と似たようなもんか?? 



いや〜、流石にあんな奴とは違うだろ。 あいつみたいに豹変したりしないもんな。 



てか宗方と似たように思われるのはなんか嫌だな、ナイフ持ち歩くような奴と同じに思われたくないしな一応……



「なんか悪かったな? 嫌な思いしちまったらごめん」

「え?」



前の席の奴にとりあえず謝ると予想外だったのか間が抜けた顔をしてこちらを見ていた。



「う、ううん全然そんなことないよ、こっちこそごめん!」

「は? 何が?」

「なんでそうなるん?」



木戸がそんな俺と女子を見てそう言った、俺にもわかんねぇよ。



「む、宗方さん、何?」

「え? 何が?」



そんな声が聴こえたので宗方の方にさり気なく視線だけ向けると宗方の隣の女子が何故かビビっていた。



「めっちゃ睨んでたよゆきのこと。 こわぁ〜」

「なんか地雷でも踏んだんじゃない?」



なんだ? 宗方の気に触れるようなことでも何かしたのか? 気を付けた方がいいぞ、もしかしてナイフなんか忍ばせてて刺されるかもしれないからな。 と隣の哀れな女子に心の中で呟いた。



そしてその授業が終わり……



「次の時間は家庭科だわ、昼前に腹ごしらえ出来るな!」

「女子どもせいぜい美味しい料理振る舞ってくれ」

「はぁ〜? 何様なのよ?」



次はクラスの奴が言ってたように調理実習だ、家庭科室に移動して班になりやるのだが。



「じゃあ好きに5人のグループ作ってね〜」



まさかのその場でグループ構成…… こういうのって最初から近い席の奴らで構成するとかさ。 普段俺ってこんなんだから余るんだよなぁ。



そうして好きな者同士集まっていくがやはり余る俺。 あ、似たような奴がもう1人、宗方……



俺と宗方なんかじゃ誰も寄ってこないだろうなと思ったけど男子が2人来た。 なんだこいつら?



「仕方ねぇな新庄、俺らが入ってやるよ。 よ、よろしくな宗方」

「よろしく」



ん? んん? 俺への哀れみの挨拶は程々に宗方の方は少し鼻の下を伸ばしながら挨拶する。 こいつらもしかして宗方狙いか? 



確かに宗方は1番ってわけではないけど綺麗な方だ、女子からしてみればやっかみ者の宗方でも男子からするとその綺麗系だってだけでこういう時がチャンスとばかりに寄ってくるのか。



でも無情かな、この宗方のクールというか無表情っていうかそんな雰囲気が好きだったら残念だな、あくまでそれは演技なんだぞ? ってのは言えないが。



まぁなんだかんだで4人になったしあと1人……



「あ、私もこっちに入ろうかな」

「え、沙優奈さゆなマジで言ってんの?」

「う、うん。 ほら、あっちが決まらないと始められないでしょ?」

「まぁそうだけど……」



女子の中にも気の利くというより変わった奴が居るんだな、こんな班に入ってくれるとは。



斉藤さいとう 沙優奈さゆな、こいつは俺の前の席の女子だ。 さっきのこともあったのによく来たな。



「…… よろしくね新庄君」

「? まぁよろしく」

「よぉーし、こっちも5人揃ったな。 宗方、さっそく始めようぜ。 って宗方?」

「何? ていうか斉藤さんジロジロ見ないでくれる?」

「うッ…… 不束者ですがよろしく」




とんでもなく冷たい声色だったので場にピシャッとヒビが入るような音が聞こえた気がする。 宗方が斉藤の姑みたいになってるけど大丈夫か?

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