最終話
「わぁッ、すっかり元通りだね沙優奈」
「うん、お陰様で」
「傷が残らなくてよかったね、いったいどこのどいつにやられたんだか。 優しい沙優奈がいいって言うから犯人突き止めたりしないけどもし沙優奈が許せないってなったら私らいつでもそいつのことボコボコにしてあげるね!」
「だからいいって」
苦笑いで斉藤は山梨達にそう言った。 こんなこと言ってる山梨達だって犯人の目星くらいは付いていて宗方の方を向いてそう言っている。
だが宗方は全く動じずいつもの調子だ、斉藤の中ではもう済んでいることなんだろうが。
俺も学校に復帰していつもの学校生活のスタートだ、橘さんには大分世話になったしもう迷惑は掛けられないな。
「宗方さん、これね……」
「何よ」
斉藤は宗方に積極的に話し掛けるようになった、そして宗方は物凄くウザそうな顔をするがちゃんと受け応えている。
「理解出来ないわ、あんなのと沙優奈が仲良くするなんて」
「いや仲が良いのかよくわかんないけど」
山梨と藤岡はそう言うがちょっと前に比べたら大分マシになったろう。 俺が斉藤と仲良くしてくれと言ったのをちゃんとやってくれてるのだろうか? まぁいい。
「世那君その新しいバイク前よりボロくない? 新しいのに」
「仕方ないだろ? 俺は乗れればいいし」
「ふぅん。 乗せてってよ?」
学校が終わると宗方が俺のバイクの前に立っていた。
「事故っても知らないぞ?」
「事故るのは勘弁してよ、まぁ私が居るから大丈夫でしょ」
それってなんの根拠にもなってないぞ?
「うッ……」
「まだ傷む?」
「少しな」
「ごめんね」
宗方を後ろに乗せて俺の腰に宗方が腕を回した時事故った時の傷がチクリと傷んだ。
「ほんと、死ななくて良かったね」
「ああ、青葉が居てくれたお陰だな」
「だったらもっと感謝しなさいよ」
「これでも感謝してるんだ、それに斉藤とも仲良くしてるみたいだしな」
そう言うと宗方はブワッと赤くなった。
「な、仲良くなんてしてない」
「いてッ!!」
太腿をギュウッとつねられる、加減しろよ……
バイクを走らせていると後ろの宗方が大きな声で話しかけてきた。
「はぁー、私ここまで献身的なんだからちゃんと私と付き合えば?」
「んー、それは考えてる」
「は? 考えること!? あ!! あいつと私どっちがいいか見定めてるんでしょ? 世那君のくせに!」
「いや、ちゃんとお前と斉藤とも向き合わないとなって。 俺今までそういうのないがしろにしてた部分あったから」
「そーよ、私の気持ち全部空回りとか許せないし!」
宗方の家に着きバイクから降りると……
「でもまぁ私とちゃんと向き合うってことはこれから私にいっぱい構ってくれるってことだよね!」
「え? そうなのか??」
「そうだよ! ここまで来たんだし今日は私の手料理振る舞ってあげるわ、カップ麺とかじゃなくてね」
宗方は俺の腕を掴んでグイッと引っ張った。 やれやれ、そう言われたら行くしかないみたいじゃないかと思いつつもこいつのそんな申し出に素直に嬉しいなって思う自分はちょっとだけ変われたんだなと思いたい。
付き合う付き合わないは正直どっちだっていいところもあるんだけどこいつと斉藤やこれから誰かと繋がっていく縁は大事にしたいと思う。
fin
ここまで読んでいただき誠にありがとうございました(^^) 次回作を掲載した時にはまた見てやってください。