その37
宗方達と訳あり多目的倉庫にやって来たのだが……
「な、なんか話を聞くと一層そんな雰囲気あるような気がする」
「だろ! 出そうな雰囲気じゃね!? 誰か入ってみろよ」
斉藤はめっちゃビビッてるし西はすげぇテンション高くなってるし。
「バカみたい、こんなんで怖がるとかってヘソで茶が沸くわ」
言ってることがバカみたいだぞ宗方。
「え!? 宗方さん」
「うひょ〜ッ」
そんな中宗方は一目散に倉庫に入って行きドアを閉めた。 そして5分……
「なんか…… 宗方戻って来なくね?」
「ま、まさか私達が面白半分でやって来たからその首吊り幽霊に引き込まれて……」
「んなバカな」
西と斉藤は宗方が戻って来なくて不安げな表情になる。
「と、とにかく俺らも入ろうぜ? 俺の彼女に何かあったらヤバいからな」
そもそもお前が行こうなんて言わなければ良かっただけでは?
「新庄君…… どうしよ? 怖い」
「幽霊なんて居るわけないだろ? どうせ宗方が隠れて出て来ないだけだ」
恐る恐る西がドアを開けて倉庫を見渡す。
「宗方いねぇ……」
「いや入って探せばいいだろ」
「お、おい新庄!」
俺は中に入ると2人も後に続いた。
「暗い…… やっぱり怖い」
「雰囲気出てるよな……」
二階建ての倉庫、所狭しと備品が置いてあって隠れるのにうってつけだな。 大体こういうとこって隅っこに隠れるもんだよな? でも宗方のことだからドア裏とかに居たりしてと何気なく振り返ると居た……
俺に気付かれると宗方は言ったら殺すと言わんばかりの目で俺を睨み付けまだ宗方の存在に気付いてない斉藤と西のところまでそっと近付くと。
「ねえ……」
「ひッ!! いやぁぁぁあ! ッ!」
「うわあああああッ!!」
斉藤は物凄い勢いでその場から飛び退き何かに頭をぶつけて倒れた、まさか失神したのか?
「し、新庄、マジで出たッ!!」
「いやそれは」
こいつ怖すぎて宗方だって気付いてないのか? アホすぎるっていうかこんなに怖がるならなんで提案したし……
「うわあああッ! お、俺だけは助けて下さい! そこに居るクズ野郎持って行ってもいいんで俺だけはッ、俺だけは!!」
土下座をしながら俺を指差し命乞いする。 クズ野郎と言い物扱いみたいに言いやがって。 まぁ俺なんてそんなもんなんだろうなとは思うけど。
「ダメだよ?」
「ひぃッ!!」
どこからともなくというかハシゴ登った辺りの二階からドスが効きつつおどろおどろしいトーンの宗方の声が聴こえてそれと同時に備品が揺れ出した。
なんか結構ノリノリだな、一応お前の彼氏だろ……
そんな時揺らしていた備品がピンポイントで土下座をしている西に向かって落ちてきた。
「危ねぇ!!」
「ひえッ!」
俺が西を引っ張りなんとか難を逃れた。 落ちて来たのはなんとコピー機…… こんなもん当たったら死ぬぞ!? あいつ頭おかしいんじゃねぇのか? …… いや、おかしかったよな。
すると次にまた備品が揺れ出した。
「西、お前なんか知らんけど殺されるぞ!? 早くこっから出て行かねぇと」
「ころ…… た、助けてくれぇーーーッ!」
西は俺の腕を掴んでドアの方へ走った。 こいつあんなこと言っておいて俺を引っ張って行くなんて意外といいところあるじゃねぇか。
なんて思ってはいなかったよ……
西はドアの付近で俺に足払いをして俺をコケさせその隙に勢いよくドアを開けて走り去って行った、要するに俺を囮にして逃げやがったか。
西の奴思いっきり足蹴りやがって…… そこで寝てる斉藤も放置して行くとはあいつもなかなかのクズっぷりだな。 そう思っていると斉藤の上の備品が動いた。
は!? まさかあいつ!
俺は急いで斉藤を引き寄せるとガシャンと古いデスクトップのパソコンが床に当たる。
「お前マジかよ? 西追っ払うだけじゃなかったのかよ!」
「あー外れたんだ、惜しい」
「惜しいじゃねぇよ」
ハシゴから宗方が降りて来た。
「だねぇー、世那君が助けちゃうから惜しくないよねぇ」
「は? そういう問題かよ、お前の彼氏逃げてったけど?」
「あんなのもう彼氏じゃないわ、元からつまんない奴だしそれに私らのことバカにしたのよ? あんな奴と添い遂げるなんて無理!」
「添い遂げるって極端だなお前……」
それにお前は俺のこともバカにしたことあるじゃねぇか、あー自分はいいのかこいつ自己中だし。
「それに私モテるってことわかったでしょ?」
「それが何か?」
「…… あーそう、やっぱそこのくたばり損ない居ると邪魔かー」
「なんで斉藤を目の敵にするんだよ?」
「だって世那君が私以外の友達は裏切るに決まってるのにうつつ抜かしてるからでしょ? あ、ていうよりまさかそいつと友達とかじゃないよね? ねぇ?」
妙な気迫で俺をドア付近の壁際まで追い詰めて俺に張り手するのかと思ったら顔のすぐ横の壁にドンと手を当てた。 すると……
「ん…… ううッ」
斉藤が覚醒しかけた。 そんな斉藤に俺達2人意識が行くと倉庫のドアが開いた。
「先生ッ! ここだ、ここで幽霊がッ!」
「そんなもんいるわけないだろうが…… ん?」
「あッ、宗方?」
「あ、あれ? 私なんでこんなところで寝てるんだろう?」
斉藤は辺りをキョロキョロと見回し戻って来た来た西は宗方が居ることにポカンとした。