その36
「おっと…… どうした宗方?」
「ああ、西君なんでもないよ。 同じクラスメイトだから」
「あ、沙優奈じゃん」
「ジュン君宗方さんと付き合ってるんだってね?」
「そういうこと。 宗方ってツンとしてるけど美人だろ?」
西が宗方の肩に手を置いて自分の方へくっ付けた。 こいつらもまさか校内散歩か? 西順也…… 俺とは違ってこいつは社交的そうで見た目も爽やかで雰囲気は木戸と同じような人種だ、そんな奴と宗方が付き合いだすとは。
ていうか宗方の奴付き合ってる割にはすげぇ嫌そうな顔してんじゃねぇか、もしかして人前では関わらないでを彼氏にも執行してるのか?
と思ったら宗方は西の手をギュッと握ってこちらを見て勝ち誇った顔をし出した、なんか異様にムカつくんだけど。
「つーかさっきからダンマリしてんのって根暗の新庄だよな? なんでこんな奴と一緒にいるんだ沙優奈は?」
「「はぁ?! え?」」
宗方と斉藤がハモッたので2人とも顔を見合わせる。 これ前にもあったような……
「いやなんか変なこと言ったか俺?」
「…………」
「新庄君はジュン君が思ってるような人じゃないよってこと」
斉藤はそう言うが実際根暗だし嫌われてるから思った通りの奴なんだけどな。
「へぇー、じゃあ俺らと一緒にデートしねぇか? あ、つってもお前らは付き合ってないんだっけ?」
そうなんだけどこいつの言い回しってムカつくよな、なんか斉藤も面白くない顔してるし。 つーかムカつくのに更に拍車を掛けてるのが宗方が確実に俺を小馬鹿にしたような顔を向けていることなんだが。
「ははははッ! ただの軽口なんだから2人ともそんな怖い顔すんなって」
「え? 新庄君も?」
「へ? 何が?」
打って変わって斉藤が喜んだような顔になってるんだがどうしたんだ?
「………… それよりどうするの? こいつらと行くの行かないの?」
「あ、そうだったな! 新庄にデートってやつを見せつけてやろうぜ宗方」
またも宗方を自分の方へ引き寄せる西。 だが心なしか宗方の顔が引き立ってるのは気のせいだろうか?
「別に私らはジュン君達と一緒に行くつもりはないんだけど……」
「えー、沙優奈ノリ悪いぜ」
そうだ斉藤断ってくれ、俺そういうの好きじゃないし。
「この子勘違いしてるんじゃない? 例えば自分が西君に何かされるとか」
「は!?」
またとんでもねぇこと言い出したぞ宗方の奴……
「あははッ、ないない。 沙優奈も可愛いけどさ、俺の連れは宗方なんだしそこら辺の判別はつくつもりだぜ」
「わ、私はそんなこと思ってない!!」
「何慌ててんのこの女」
宗方が更に追い討ちを掛ける。 もうその辺でやめてやったらどうだ?
「し、新庄君……」
俺に助けを求めるような顔で来るなよ…… なんも出来ねぇし。
「あ、ああ、なんつうか…… もう帰るか?」
「えッ!?」
斉藤は物凄くガッカリするような顔になった。 この面倒くさい奴らからおさらば出来るんだから帰ったほうがいいだろ。
「安い女ね」
「なッ!!?」
「ッ!! ぷぷッ……」
宗方また挑発を…… やめりゃいいのに。 安い女ねなんて言ったのが西にはツボったのか笑いを堪えている。
「新庄君! ここまで言われたら見せ付けてもらうしかないよね!?」
「はぁ? 何言って……」
なんか斉藤もう引く気がない顔になってるし。 宗方…… お前なんて面倒くさい展開にしてんだよ? と思って宗方を睨むと「うわぁ……」という顔をしている。
まさかあいつ俺らが帰ると踏んでいたのに急にはまるよみたいな雰囲気になったからゲンナリしてんのか? ふざけんなよこのバカ、斉藤焚きつけたのはお前だぞ。
「でも実際校舎の中今更ウロウロしてつまんなくないの?」
「おいおい宗方そりゃないだろ、実はいい場所があるんだ」
「いい場所?」
「ああ、この学校ある噂があってな。 駐輪場の近くにある多目的倉庫あるだろ?」
そういやそんなとこあったな。
「そこでさ昔生徒の首吊り自殺があったんだ。 でな、噂を聞き付けて面白半分でやって来た奴らの前に出るって話だよ」
「その首吊り生徒が? へぇー」
「なんだよ宗方、その反応怖いの平気なのか?」
「まぁね、私そういうの信じてないし」
「んだよ! そっちの2人は…… おお、沙優奈めっちゃ怖がってんじゃん」
「あわわわ、うちの学校にそんなことあったなんて…… し、新庄君どうしよう?」
「何が?」
「え!? 新庄君怖くないの?」
「まぁ別に」
どっちかっていうと俺も信じてないしぶっちゃけ幽霊なんて居たとしても精神的圧力しか掛けてこないし物理と精神面両方攻撃してくる人間の方が怖いし残酷だし。
「じゃあ怖がるギャラリーも居ることだし行ってみようぜ!」
「そんなぁ〜」
「下らな」
「はぁ〜」