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その32


「雨もうちょっと弱くなれよ」



誰も居ない図書室でそう呟いていた。 宗方と斉藤の喧嘩にウンザリして土砂降りの中帰ると思ったか? いいや、あいつらの喧嘩如きで勢いでこんな雨の中帰ってやる!! なんて衝動俺にはない。 所詮俺にとってはあの時のこともそんなもんだ。



そして5時限目の授業が終えるチャイムが鳴った。 まぁここには誰も来ないだろうと踏んで窓際で佇んでいるとガラッと扉が開いた。



「おい、自分勝手野郎」

「宗方か」



扉を閉めて宗方は俺の目の前に来た。



「文句言いたげな顔だな? さっきのことでムカついてるか?」

「前にスーパーに行った時……」

「あ?」

「私が女の子をシカトした時世那君私を怒ったよね?」



そんなこともあったな。 



「あの時私は世那君は偉そうに私に向かってやっていいことと悪いことがあるなんて言ってたよね、でもあの場で…… 私と斉藤さんが面倒になって逃げたことはやっていいことだったって言えるの? 結局世那君はただ単にあの時の女の子に自分自身を重ねて自分の願望を押し付けてただけだよね? 要は私の気持ちを考えないで自分の欲求を満たしただけ。 凄いよなぁ、どの口が言ってんだか。 ふふふッ」



言われてみればそうかもしれない、俺は現に自分がそう思っただけで斉藤も似たような境遇だから少しくらいは理解出来るだろうと。 けど斉藤はそうじゃなかったってのに本当はこいつの気持ちなんて考えてなかったのかも、正に押し付けだ。



「かもな。 俺は所詮そんな奴だ、流石のお前でも愛想尽きたか? だから友達選びに俺を選んだのは間違いだ」

「ううん、寧ろ逆。 そんな世那君の良いも悪いも含めて友達でしょ?」

「良いとこなんてあったか?」

「世那君、君はクズ」

「は?」



今クズって言ったかこいつ? 別に否定はしないけど。



「私も世間一般にクズ人間って括りかもしれない、でもそれが何か悪いこと? 私的には違う、周りの方が私からして見ればクズで私と似たような匂いを放つ世那君はクズとは思わない、だって私がそう思ってるから世那君もそうに違いないって思ってる。 言ってる意味わかる?」

「いいやわからんが凄く面倒そうだって感じる」

「そっか、でも私は世那君のそんな感情は一切どうでもいいし知ったこっちゃない。 世那君の気持ちなんて私には関係ない」

「俺の迷惑は考えないと?」

「うん考えない。 友達は迷惑掛けるもんなんだって」

「そりゃ友達って物凄く友達って意味からかけ離れてるんだな、意味は深く知らないけど。 意味意味言ってるけど意味わかるか?」

「全然意味わかんなくなってきたけど私はそんな世那君を許してあげることにした」

「許してくれとも言ってないけど」

「許可も求めてないよ」



会話してるようで会話になってないような気がするけど宗方は真面目に言っているようだった。 俺はてっきりやっぱり俺とは友達になれないわって言われると思ったのに。 いやこいつはそんなとこも見透かしてるのかもしれない、なんせ俺の気持ちは無視するんだもんな。



「どうせ私と斉藤さんの喧嘩よりも早く雨止まないかなとか思って外見てたんでしょ?」

「なんでわかった?」

「いや適当に言ってみただけ。 ほんとクズだね、でもいいよ許してあげる。 私ってクズな世那君に最適だね。 それと次の授業もサボるの? そんなに誰も気にしてないけど」

「ああ、そうするわ」



斉藤は「じゃあごゆっくり」と言って去って行った。 



そうか、俺はやっぱりクズ側の人間だなと再確認して6時限目が終わり他の奴らが教室から居なくなるであろう時間を狙って鞄を取りに戻った。



よし、もう誰も居なくなってるなと思って鞄を取り廊下にでると……



「新庄君!」



廊下のつき当たりの角から斉藤が姿を現し俺を呼んだ。 なんで居るんだ? と思っていると俺の元へ走ってきた。



「待ってたんだけどもしかすると私と会いたくないかもって思って隠れてて。 でもどうしてもさっきのこと謝りたくて」

「そんなのもういいよ、俺ってそこまで気にしてもらうほどの人間じゃないから。 斉藤もそんな俺に悪いとか思う必要ない」

「あ、いやその…… 」

「あのさ、俺本当にお前から謝られるような奴じゃないから。 さっきだって面倒くさいって思って逃げただけだし」

「でも……」



シュンとなる斉藤を見てこいつは俺や宗方側の人間ではないので愛想を尽かすだろうと思った。 それでいいんだ、それで。



「私新庄君の良いところ知ってるよ?」

「良いところ? クズなところ?」

「…… 最初の頃覚えてる? 私が初めて話し掛けた時よろしくねって言った時新庄君無視した」

「それのどこが良いところなんだ?」

「私それ結構ショックだったし少し睨まれて怖かった、けど新庄君はみんなにそんな感じで。 でもなんとなく次もおはようって声掛けた」

「しつこいと思ってた」

「でも何度も言ってるうちに挨拶返してくれた」

「良いとこかそれ?」

「それに前より話が続くようになった。 気を付けて帰れよって言ってくれた、資料室で庇ってくれた、さっき押された時も支えてくれた」

「それはお前がしつこいからで」

「でも優しいって私が思った、そう思うから私からすれば良いところ」

「俺はそうは思ってなくても」

「うん」



あれ? なんか全然ニュアンスが違うように聞こえるけど宗方と若干共通点があるような、ないようなところが。 斉藤がそう思っているから俺がそう思っていなくても良いところになるのか……



「それでね、さっき言おうとしたのは私新庄君と友達になりたいなって。 でも結構話してるし友達みたいなもんかな?」

「お前が一方的に話し掛けてくるからだろ」

「だってそうでもしないと新庄君ダンマリじゃん」

「つーか嫌って言ったら?」

「ここまで言ったし私はもう新庄君とは友達だと思ってるから」

「また一方的だな…… なんで俺?」

「私が友達になりたいって思ったから」



少し宗方と斉藤がダブって見えた。 斉藤は俺や宗方とは違うタイプの人間なのに。 




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