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その31


今は午後弁当食べた後の昼休み、外は土砂降りになっていた。 最悪だなぁ、天気見るの忘れてたわ。 びしょ濡れ覚悟で帰るしかないかなと思っていると……



「わぁ、凄い雨だね。 そういえば新庄君バイクでしょ、大丈夫なの?」



俺と同じく窓から見える外の様子を見て斉藤が話し掛けてきた。



「まぁ少し濡れるかもしれないけど大丈夫だろ」

「も、もし良かったら傘とか…… あ、バイクだもんね」

「ああ、大丈夫だって」



斉藤から目を離し同じく外の雨を見ている宗方が目に入った。 校内まで聞こえる雨音に傘持ってても濡れるなこりゃ。



「宗方さんを見てる?」



斉藤が周りに聞こえないよう小さな声でそう言った。



「え? なんで?」

「新庄君たまに窓見る時宗方さんの方向向いてるから」

「いや別に斜め左向きやすいからたまたまだ」



というかたまにってこいつ俺のこと……



「あッ、そうじゃなくて環奈達と離してる時とか目の端に新庄君が入る時だよ!? ジロジロ見てるわけじゃないよ!」

「あ、そう…… なのか?」



考えてたことを察しられたか? でも横向きで山梨と話してる時は確かに目の端くらいには入ってるかもな。 



「そっか、たまたまか」

「それが何か?」

「ううん! …… じゃないや、つかぬことを聞くんだけど宗方さんと新庄君って仲良い?」



なんか前にも聞かれたような気がするこの質問…… 友達って言ってるんだから仲良いか? と聞かれれば仲が良いということになるんだろうか? 



だが宗方はみんなが居る前では俺とはそんな素振りを見せない。 これは暗にみんなには言うなと言っているようなものなのでここはこう言うべきなんだろう。



「そんなことない」

「えっと…… そうなの?」

「いやに聞いてくるな。 それがなんなんだよ?」

「あのね、私…… ダメだ、廊下に出てくれる?」

「はあ?」



斉藤にここで話せよと言ったが嫌と言われて強引に廊下に連れてこられた。



「わざわざごめんね、それで新庄君、私と…… と、と…… 」

「と? と?

「………… アホッ!!」

「は?」

「ご、ごめん、これは私自身に言った言葉で…… こんなことで詰まるなんてどうしよう」

「いや意味がわかんねぇ」



すると変にドギマギしている斉藤の後ろに宗方の姿が。 めっちゃ怖い顔してんだけど…… そういやこいつ斉藤のこと特に嫌いとか言ってたしな。



「おい斉藤」

「え? あ、ごめん! 私連れ出しといて」

「いや、そうじゃなくて後ろ」

「後ろ? あ、宗方さん!」

「邪魔」



まるで親の仇にでも言うような口調でドンと斉藤を押した。 俺はこの前のこともあってか咄嗟に斉藤の肩に手を掛けて止めた。



「あ、ありがとう新庄君って…… 何するの宗方さん!?」

「あんたらが私のロッカー塞いでるからでしょ?」

「だからって酷い!」

「おい、宗方と斉藤喧嘩してるぜ」

「ほんとだ」

「どうせ悪いのは宗方さんでしょ?」



ガヤガヤと野次馬が集まってきた。 こんなとこで喧嘩するなよ…… もともと変に突っ掛かる宗方のせいなのだが。



「宗方、もう少しソフトに……」

「あんたこいつの味方するの?」

「は? え? 味方? 別にそんなわけじゃ」

「だったら黙ったら?」

「宗方さん何その言い草」

「はッ、新庄君が居るから私は平気みたいな顔して。 言っとくけどね、この男はあんたが期待してるような奴じゃないのよ? 心の中ではあんたをウザいって思ってるんだから」



その時バチンと音がした。 



「私のことをどうこう言うのは構わないけど新庄君まで蔑まないで!」



斉藤の奴宗方にビンタしやがった…… そして辺りはどよめく。 



「ちょッ、沙優奈どうしたの!?」



廊下から野次馬が騒いでいる様子で気付いたのか奥から山梨と藤岡が駆け付けてきた。 



「…………」

「何があったのよ?」

「つーか見せもんじゃねぇーんだからあっち行った行った!」



藤岡が周りにシッシッと手をやると「なんだよ」と言う感じに野次馬は散って行った。



「それでなんなのさ?」

「新庄君をバカにした」

「宗方さんが?」

「そう」

「それって宗方さんが沙優奈のことをまず言ってそれから新庄君に飛び火したって解釈してるけどそれで合ってる?」

「うん」

「新庄君は?」



そう言われた途端宗方と斉藤の目がキッと俺に向くのがわかった、俺は宗方はこんな性格だってのは承知している、ただなんで斉藤をそんなに嫌うのかわからない、ていうかなんで今日に限ってこんな面倒なことを…… 斉藤だって愛想悪い俺にめげずに接しているのも知っている、こいつみたいな奴は本当にそう思って言っているんだろうなって。 だからか? 俺が今こんなにイライラしているのは。



俺は自分が世間と壁を作って深入りしないで一方的に遠ざけている、だって俺は誰かと仲良くなりたいなんて思わないから。 そう、今のこの状況もひたすらに面倒だ。 なんで2人とも俺の言葉をそんなに待ってるんだよウザいって感じている自分は宗方から友達とか斉藤から俺を別に庇いだてなんかしてもらうような奴じゃないってことも…… ああ、考えが纏まらない。



「うるさい」

「え?」

「目障りなんだよお前ら、宗方も斉藤も下らねぇ。 マジでどうでもいい」

「はぁ!? あんたちょっと」



俺はその場から逃げた。 午後の授業は当然出なかった。





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