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その14


「でね、ここの問いはね、この公式を当てはめて……」

「ああ、そういうことか。 なるほど」

「今のでわかった?」

「こうすればいいんだろ?」

「あ、そうそう。 良かったぁ、私の説明で理解出来て」

「まぁわかりやすかったよ」

「ほんと? 他にわからないところある? 教えるよ!」



俺は数学が苦手でテストの成績も数学は思わしくなかった、それをテスト返却の時にちょうど斉藤が前の席だったので見られてしまった。



斉藤は数学が得意なようだったので良かったら教えると言ったので教えてもらっている。



俺に勉強教えたいなんて斉藤も変わった奴だなぁと思ったが……



「沙優奈、ちょっと」

「ん、何? 少し待っててね!」

「ああ」



斉藤が友達の席の方へ呼ばれて何やらこっちを見て話している。 またヒソヒソ話かよ? 



だけど大方の予想は付く。 なんで俺みたいな奴と仲良くしてるんだ的なことを話しているんだろうな、まぁこれに懲りて斉藤も俺との距離を取ると思ったが。



斉藤達はチラチラとこちらを見て何やら盛り上がっているみたいだった。 そして少しして斉藤は戻ってきた。



「まったくもぉ……」

「俺みたいなのと一緒に居るなって?」

「え? 全然違うよ、そういうのじゃないよ」



なんだか斉藤は慌てて取り繕った。 いやそんなのじゃ誤魔化せないぞ? そんな話だったんだろう。



「いいよ無理に勉強教えてくれなくても。 それでお前が友達失くしたらバカみたいだろ?」

「だから違うの。 寧ろ新庄君が…… ってもぉいいから続きやろ?」



なんだよ歯切れが悪いなぁ、まぁそれで斉藤がいいっていうなら別にいいけど。



休み時間が終わる頃まで斉藤が俺の方を向いて勉強を進めていると……



「これ」

「え?」



宗方が俺と斉藤の横に来ていた。



「斉藤さんこの休み時間内にプリント集めるように先生に言われてたでしょ?」

「あ! そうだった!!」

「もう休み時間終わっちゃうよ?」

「ああーー! ほんとだ……」

「はぁ、何やってんだか」



いつもの冷めた目で宗方は斉藤を見てそう言った。 そして更に……



「少し勉強が教えられるからって他のことが疎かじゃ意味ないよね?」



ひでぇ、容赦ねぇなこいつ。



「ちょっと宗方、そんな言い方ないんじゃない!?」

「私は注意してるだけなんだけど?」



斉藤の友達が出て来てそんな宗方に言い寄る、なんか微妙な空気になってきたぞ。



「だからってそこまで言うことないじゃない!」

「なんで? あんたらが甘やかすから私が言ってあげてるんじゃない。 見なよ斉藤さんの顔を。 すっかりフォローしてくれるあんたらに甘える顔になってるじゃない」

「ち、違うよ!」



その時チャイムが鳴って宗方は「ふん」と言って席の方へ戻って行った。 おいおい、面倒くさい状況だけ残して去って行くなよ。



「気にすることないぞ?」

「…… あ、うん。 ごめん、私うっかりしてて」

「いや別に俺はプリントがどうたらとかなんとも思ってないしそれにここの教員なら遅れたってそんなに咎めはしないだろ? 現にチャイムは鳴ったのにまだ先生は来ていないくらいルーズだ」

「うん……」

「だからそんなの気にするだけ損だしあれはあいつにとってただの挨拶みたいなもんで宗方だって……」



俺は一体何をベラベラと言ってんだろな? 別に斉藤がどう思うかなんて知ったこっちゃないってのに宗方がどう斉藤に言おうが今まで通り素知らぬ顔でいればいいのに。



「えっとあの……」

「ん?」

「はい、静かにー」



俺が自分でも何を言っているのか意味不明なので斉藤も困惑したのか何か言いたそうなところで先生が来てしまった。



なんか知らないが自分の行動がわからないせいでソワソワする。 どうでもいいから早く帰りたくなってきたと思っていると斉藤がサッとノートの切れ端を俺の机の上に置いた。



??? 折ってある紙を開いてみると……



ありがとう



そう書かれていた、斉藤の背中をチラッと見てまた紙に目を落とす。



バカバカしい、そう思ってグシャッと紙を握り潰したが何故か俺はまた紙を開いて折り畳みノートに挟んだ。



なんなんだ俺は? 捨てるのか捨てないのかどっちだ? 



宗方は…… と机に肘をついて手で顔を隠して目だけ宗方に向けるとユラッとした宗方の目が俺か斉藤に向けられていた。 一瞬目を伏せてまた見ると宗方はもう教壇の方へ顔を向けていた。



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