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その12


「見て見て、このぬいぐるみ可愛いよ!」

「ほーん」

「見て、これ部屋に置いたら可愛いよねぇ」

「ほーん」

「ほら、これなんか世那君に似合いそう、私ってなかなかセンスあるよね」

「ほーん」



さっきからひたすらどうでもいい物を宗方と見て回っている。 女ってなんでも可愛いで済ませるのか、疲れるなぁ。 だが新鮮さもあった、今までこんな風に友達? は微妙だが知り合いと呼べる奴とショッピング的なことを今俺はしている。



「ねぇ、このUFOキャッチャーやってみようよ?」

「バカ、こういうのやってたら一瞬で金がなくなるだろ? 飯代にとっておく方がまだマシだ」

「ご飯代なんて私が出すんだからいいでしょー? 一回だけでいいから」

「はあ、わかったよ。 一回だけな」



なんかのキャラクターのクッションを宗方は取りたいみたいだがこんなの一回やっただけで取れそうにないな、俺は金をドブに捨てるつもりでトライした。



「嘘ッ! 凄い凄い取れちゃうよッ!」

「どうせ手前で落ちて終わりだろ」



ところが落ちずにクレーンがガッチリ固定してそのまま取り出し口にクッションがポトンと降りた。



「マジか」

「やったぁ! 世那君凄い!」

「まぁビギナーズラックだろ」



予想外に取れてしまった。 しかしこの宗方のはしゃぎ様、普通の女の子みたいだ。 なんだ、こいつもこういう風に喜ぶんだな。



「っておい、何すんだよ?」

「取れた記念に写メ撮ろう!」

「はあ?」



グイッと腕を掴まれて宗方は俺を自分の体に寄せた。 胸が当たってんだけどこいつ気付いてるか? 



「世那君表情死んでるよー? まぁいっか!」

「なんかお前が…… まぁいいか」

「え? なんで途中でやめるのよ? 言って言って!」

「いやなんかこういうのってお前好きじゃなさそうって思ったんだけど思いの外楽しんでるように見えたから」

「はー、ふんふん。 あー確かに嫌いかも」

「なんだそれ? 意味わかんねぇ」

「まぁこんな下らないことでもたまにはやってみると楽しいんだなってわかったよ、ふふッ」

「ますます謎だな」

「いいからそろそろご飯食べに行こう?」



そうして宗方の奢りでご飯を食べてスーパーから出ようとした時だった、目の前に小さい女の子の子供が1人泣きそうな顔をしていた。



「なんだろあれ?」

「見るから迷子っぽいな」



俺が行こうとすると宗方は俺の腕を掴んだ。



「いいから行こう?」

「は?」

「どうせ誰か連れてくよ」

「いや、だったら迷子センターに俺らが連れてってもいいだろ? 見掛けちまったんだから」

「いいよそんなの」



何言ってんだこいつは? 俺はいい奴ではないけど親が居なくなって不安な気持ちはわかるつもりだ…… いや違うな、自分だと思ってるのかこの女の子を? 普段大抵のことを無視するが自分に置き換えると無視できない? 勝手だけど宗方、お前だって少しはこの女の子の気持ちはわかるはずだろ?



「よくねぇわ」

「いいの! 一回底見せてやればいいのよ小さいうちに」



は? 



「おい、お前本気でそう思ってんのか?」

「い、いたッ!」



思わず宗方の肩を力強く掴んでしまった。 だが……



「俺みたいな奴でもな、見過ごしていいこととダメなことくらいはわかるつもりだ。 あの子を連れて来たくないなら宗方だけとっとと帰れよ」

「ひッ! お、怒らないでよ…… 世那君怖いよ」



宗方はブルブルと震え出す、俺はハッとして宗方の肩から手を離してその子の元へ向かった。



「なあ、大丈夫か?」

「お兄ちゃん誰? 知らない人に話し掛けちゃダメってパパとママが…… でもパパとママが居なくなって」

「うん、お兄ちゃんの名前は世那だ、君の名前は?」

「…… あずさ」

「そっか、あずさっていうんだ? ほら、これで知らない人じゃないよ。 お父さんとお母さんが迎えに来てくれるところ知ってるからお兄ちゃんと一緒にそこに行かないか?」

「え? うん!! 行く!」



ふぅ、なんかちょっと犯罪者が使いそうな手口に聞こえるけど仕方ないよな。 そう思って手を繋いで迷子センターに行こうとするとバツが悪そうな顔をした宗方が近付いてきた。



「ごめん世那君…… 世那君の言う通りだよね。 私も付き合うよ」

「…… そうか。 こっちこそキツいこと言って悪かったよ、ごめんな」

「う、ううん! じゃあ行こう、お姉ちゃんも一緒に行くからね、ええと……」

「あずさだ」

「あずさちゃん!」

「ありがとうお姉ちゃん!」



その後迷子センターに連れて行くと程なくしてその子の両親が迎えに来た。 一頻りお礼を言われると無事に帰って行った。



心がスッとしたのはやっぱ自分を重ねてたからか? だとしたら俺はもし両親とか居たらあの子の親を探そうとしただろうか? そんなことを思うこと自体俺はただ自分自身を癒しているだけなのかもしれない。




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