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プロローグ

ご回覧頂きありがとうございます。 応援してくれるととても嬉しいです(^^)


動けない…… ロープで椅子に繋がれ自由が効かない。



「ねぇ…… 何がいけなかったんだろうね?」

「何もかもだろ、全部お前のせいでッ」

「私? 私のせいなの? こんなに尽くしてきたのに」

「勝手にやったことだろ!?」

「怖い怒鳴らないでッ!!」

「あぐッ!」



熱いと思った瞬間俺の太腿には針が刺さっていた。 いってぇ…… ちくしょう!!



「私だってこんなことしたくないんだよ? でもこうでもしないとわかってもらえないようだから。 それにほら、思い出すでしょこれを見てると」



何が思い出すだよ、それに嘘つけ、息が荒くなって興奮してるくせに…… とにかくこの状況をなんとかしないと。



「な、なぁ、そもそもなんでこんなことするんだ? 俺って特にモテるわけでもないし他の子なんかと話したいなんてことも思わない」

「え、何を言ってるの? 私の王子様がモテないはずないじゃん、仮に話したいって思わなくても向こうから寄ってきてんじゃん! 騙されて私の気持ちを裏切るくせに」



ダメ元なんだけどやっぱダメだこいつ…… 思考がぶっ飛んでる。



「私気付いたの。 私の王子様がかっこいいってことは私だけが知ってればいい、だからモテそうなこの顔は邪魔だよね?」

「は? な、何を……」



針が俺の鼻先を掠めた、嫌な予感がして顔を瞬時に引っ込めたのが幸いしたのか、だが後ろに椅子ごと倒れてしまう。 こいつ今俺の顔を針で……



「なんで避けたの? ああそうか、消毒してないからか」



太腿を刺しておいて何を今更……



ライターを取り出して針を熱し始めた、血が付いているからかジジジッと蒸発するような音をあげ針先が真っ赤になる。



「あ、熱ッ」



バカめ、熱しているのだから当然針から指先に熱が伝わりたまらず針を落とした。 その指先を舐めて落ちた針をジ〜ッと見つめていた。



今のうちになんとかこの拘束から逃れなくては。 俺は手首と足首のロープを力任せに解こうと動かす、気付いたのだが縛る力が弱かったのかなんとかなるかもしれない。 その時……



「やっぱりこれじゃあまどろっこしいよね?」

「え?」



カチッとライターを付けてこちらを向いた。 ま、まさか……



「直接炙れば良かったんだね」

「ふざけんなッ! 第一そんなことしたらもうお前は」

「何が? それでも私は残り続ける」

「??」

「もし私と会えなくなっても、もし私が死んだとしても火傷の痕を見れば私を思い出す、心の中にいつも私を宿せる。 だから一生消えることがないように私を残さなきゃね」

「お…… おかしいだろそれ!」



本気でヤバい、そんなこと言ってるけどこいつの目を見ると殺されないとも限らない、一層手足の力を入れる。 もう血が滲んでるかもしれない、けどそんなのもう関係ない。



俺の目の前にライターの火が迫り狂気に満ちた目で俺の髪の毛の先に火が触れ焦げ臭い臭いが鼻についた時左腕が抜けた。



「うああああッ!!」

「ッ!!?」



倒れていた俺は渾身の力を込めて頬に裏拳を食らわせた。 火事場の馬鹿力的なものが発揮されたのだろうか? 壁まで吹っ飛んでいき頭を強打したようで「う、うぅ……」と悶えていた。



今のうちだ、右手もロープから外れて足首のロープを解きに掛かる。 女の力だからかやはりそんなにキツく絞められていない。



そして足首からもロープが解け、あいつは!? と思い見上げると壁に手を付いてよろめきながら立ち上がろうとしていた。 奴をこのままにしておいていいのだろうか? ゆらりとしている背中を見て俺はそう思った。



俺がただここから出ていけばまた今回のようなことが起こるかもしれない、いや絶対起こす。 だったらふらつく肩に手を掛け……



「ん? ッ!!」



そのまま押し倒した。 更に頭を打ち、奴の目は焦点が合っていなかった。 そんな彼女に馬乗りになり容赦なく俺は拳を振り下ろした。



「もうッ…… 俺にッ、構うな!!」

「ふぐッ、あッ……」



4発、5発と顔面に拳を叩き込んだ。 最後の1発の拳を顔から離すと血がヌチャッと糸を引いた。 



「ふひゅう…… ふひゅぅッ」



鼻血が出て呼吸し辛いのか彼女は息を荒くして同じく殴ったことで興奮して息を荒くしていた俺を見ていた。



「す…… て…… き」

「はあはあッ…… は?」

「男らしくて…… 素敵」



………… もう俺の手には負えない、こいつの近くに居たくない。 俺はここから出て行こうとした。



「え? は?」



俺は下腹部に刺激を覚え下を見ると果物ナイフのような物が刺されていた。 そのナイフの柄に手が添えられたと思いきや引き抜かれる。



「そ…… んなッ」



俺は彼女の上に覆い被さるように倒れた。



「男らしいって褒められたら甘えちゃって。 でもいいんだよ、私だからこの程度で済むんだよ?」



俺の出血箇所にこいつは手を当て血の付いた手を俺に見せペロリと舐めたところで彼女の上で気が遠くなってくる。 ダメだ、こんなところで…… いや、俺死ぬのかな? 腹刺されたもんな。



「可哀想に…… 世那せな君」

青葉あおは

「やっとそう呼んでくれた」



そこで俺の意識は途切れる寸前走馬灯のようなものが見えた。 ああ、これはなんな…… んだ……







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