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アンサイズクロッキー  作者: 早藤 尚
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ドリームエクスプレス

停まらない夜行列車

生温い風だけ残して僕を置いていく

紺の帳を泳ぐ白色灯が

僕に 「さよなら」と手を振って


最初の切符は一両電車

夜露を凌ぐだけの屋根だって

彼の門出には立派なアーチ


「きっと夢を叶えて帰ってくるよ」


次の切符は各駅停車

ちょっと走ってまた停まって走り

堅実に彼の旅路を進めてく


「毎日が新しいものだらけなんだ」


次の切符は快速列車

流れる景色に釘付けふたり旅

繋いだ手こそが彼らの切符


「ずっと一緒にいようね」


切符も四枚目 特急列車

ふたり用の座席に彼おひとり様

大きくなったその手も今は空席


「俺は何をしたかったんだっけ……」


五枚目切符は新幹線

広大な駅ビルで彼は立ち尽くす

探しているのは路線図 ひとつだけの標


「どうして読めないんだ!」


六度目に彼が握ったのは白紙の路線図

旅立ちの日からの大切な連れ

彼の夢へと続く地図 だけど


今はただ 白いだけの紙っきれ


停まらない急行列車

非情な風だけ残して彼を置いていく

青の天を走る白色灯が

彼に 「さよなら」と手を振って



地図も切符も本当はただの紙っきれ

そこに夢を見ていたのは彼の方

夢を託していたのは彼の方


夢を見たのも彼なら

夢を見失ったのも彼


最初からそれは ただの紙っきれ



停まらない夜行列車ドリームエクスプレス

ホームで見送る僕は紙屑握りしめ


「こんなところで降ろさないでくれ」


紺の帳を泳ぐ白色灯を

必死で追いかけ 息切らし

涙流して 鳴咽を漏らす


「違うんだ、違うんだよ……

 降りたんだ

 僕は自分から、列車を降りたんだ」


停まらない夜行列車

生温い風だけ残して僕を置いていく

紺の帳を泳ぐ白色灯が

僕に 「さよなら」と手を振って


二度と切符に戻らない紙屑を

僕は強く握りしめて


「さよなら、僕の……」


停まらない夜行列車

ドリームエクスプレス

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